見出し画像

『日本誕生』と「なまはげ」的な儀礼。

ぼくが初めて映画館で観た映画はね、たぶん
『ドラえもん のび太の日本誕生』だと思う。
調べてみると平成元年3月公開とのことなので、
昭和57年3月生まれで現在41歳のぼくは、
当時、小学1年生の春休みだったはずだ。

小学1年生のぼくは、ひとりでは行けないので
父とふたりで当時住んでいた街の映画館へとまいりまして、
人生初の映画館にて映画を観たんだけれども。
『のび太の日本誕生』について、映画を
観ておられる方々はわかると思うですが、
めちゃくちゃ、こわい!
悪役の「ギガゾンビ」もこわいし、はたまた、
遮光器土偶型の「ツチダマ」がこわくって、
とくにね、この「ツチダマ」には再生能力があって
割れて壊れたとしても元の形へと戻ってしまう。
その「元の形へと戻る」という描写がさ、
とってもこわかったな。

ぼくはこの今の年齢に成っても、
かなりこわがりではあるのですが、このとき
もう、あまりにもこわすぎて、当時のぼくは
隣りの席で一緒に観ている父に
「こわい‥‥」と伝えて、すると、父が
スクリーンの部屋の外に連れてってくれて、
その外のところで一旦休んでから、
また、席へと戻った記憶がある。

前回noteでは、秋田県男鹿半島周辺における
伝統行事の「なまはげ」について、
【「泣く子はいねがー!」と大声で叫びながら、
 家の中に「なまはげ」が入ってくると、
 子供たちは泣き喚く。
 でも、そこにいる大人たちは
 ちょっと笑顔にもなりながら、
 その光景を見守っている。】
というのを申したのですが、たとえば
子供向けの映画もね、ときに
『のび太の日本誕生』のごとく、
とってもこわいものもあると思うけど、
それは、つまり、いわゆる
「なまはげ」的な内容なのだと言えるやもしらない。

映画を観ることによって、
子供はこわがり、そして、でも
その親は大丈夫だと思っている、というのは
「なまはげ」を実際には体験しなくとも、
「なまはげ的な儀礼」を鑑賞によって経験している、
とも考えられるかなあ。そう考えてみれば、
『のび太の日本誕生』で登場する「ギガゾンビ」もまた
「なまはげ」にちょっと似ているようにも感じる。

今、あらためて思うとすると、
ぼくの父は昭和22年9月生まれで、そして
令和2年11月に亡くなったですが、この
『ドラえもん のび太の日本誕生』を一緒に観たときには、
計算してみれば父は当時42歳ごろなので、
ぼくも今月42歳に成るわけで、つまり、今、
当時の父と同じごろの年齢なのだなあ、と、
そう考えるとなんだかちょっと感慨ぶかい。

世界中で存在するあらゆる恐怖とは、
「なまはげ」のような恐怖であれば良いのに。
って、祈りたいよ。

令和6年3月6日