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なるべくはやく行くにはどうすればよい?

現代の文明における一番のキーワードは、
「はやい」なのだと思ったんだった。
たとえば、移動する場合には
自動車でも、新幹線でも、飛行機でも、
なるべくはやく到着できたいわけだし、
メール等の連絡ならば、
なるべくはやく返信するのが
マナーになっているところもあるのだし、
ネットショッピングをすれば、
なるべくはやく商品が届くのを心待ちにもするし、
パソコンの起動だっても、起動ボタンを押してから
なるべくはやく立ち上がってほしいし、
データのダウンロードは、待たされることなく
なるべくはやく終わってほしいし、
そのほか、あらゆるどんなことでも
なるべくはやくなってほしい! というのが、
現代の社会のようにも感じられる。

なるべくはやく、とは、つまり、
今よりももっとはやく、であり、いわば
今日よりももっとはやくなった明日には、
さらにもっとはやく、を目指しながら
明後日にはもっともっともっとはやくなることを、
目指してゆくんだろうか?????

漫画『ドラえもん』のね、
どの回だったのかは失念してしまったですが、
とある「大長編」の作品のストーリーの中で、
ある登場人物が、宇宙船の機能としての
「ワープ航法」について説明するシーンにて、
その彼は、紙の上に二つの点を描いて
この点からこの点へと移動するとき、
なるべくはやく行くにはどうすればよい?
と、のび太くんに訊ねて、のび太くんは
点から点へとまっすぐ線を引きながら、
二つの点を一直線に結ぶのがいちばんはやい、
と答えるけど、彼は、いや
それよりももっとはやく行けるよ、と答えながら
紙を折り曲げて点と点をくっつけて、
これが、つまり、ワープだよ。と話していた。

「はやさ」のことであらためて言うとすれば、
なんだかんだ、やっぱり
その方法がいちばんはやい、って思うけれど。
これってば、「はやい」と言うよりかは
「一瞬」であって、究極、時間的に言えば
「ゼロ」なのだとも思うの。

時間的に「ゼロ」ということは、
もうこれ以上はやくはならない、
という意味でもあり、たとえば、同じく
『ドラえもん』で登場するひみつ道具の
「どこでもドア」もね、そのような
ワープ航法が応用されているやもしらないけれども。
結局のところ、現代文明が目指したいのは
時間的に「ゼロ」という状態なのかもしれない、
なんて思ったりもする。

移動も、連絡も、お買い物も、ビジネスも、
コンピュータの起動も、データのダウンロードも、
建設も、開発も、教育も、成長も、戦争も、革命も、
そのほかのどんなことでも、
なるべく、って言うよりも
最大限にはやく行うことができたら、
と、社会全体が思っている。
そんな時代なのやもしらないか、
って、ちょっと思ったんだった。

そんなような、日が進み
月が歩くような時代のことを想いながら、
ぼくは、お茶を淹れた
急須を持ち、ゆっくり、
急がず、慌てず、焦らず、騒がず、浮き足立たず、
そのお茶をカップにそそいだ。

令和7年1月22日