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黒い絵を描く子供 / 娘の話

以前住んでいた家の話です。


1、その住居

この物件は西側に入口があり、玄関を入ってすぐ左手に6畳の洋室。通路の左右におトイレと洗面脱衣室、お風呂、廊下の突き当りに6畳のLDK、その部屋の隣に6畳の洋室のある部屋でした。

リビングはベランダに面していましたが、隣り合う民家によって丁度日陰になる位置になり、春夏の天気の良い日は東から陽がある程度入りますが、秋の暮れから冬になると日中でもどんより薄暗い場所でした。

梅雨の時期は風通しもあまりよくないのか、ベランダの底の部分に苔が生えていたり、もともと広くないベランダでしたからお布団を1枚干すのがやっとの広さでした。

この賃貸物件の一階に私たち家族は約7年ほど住んでいました。

結婚してからこちらの住居に移り住み、一番上の子供が小学校一年生になった夏あたりまで住んでいました。

この話は、この一番上の子供のお話です。

2、経緯

来年から新一年生ということで、4月からの登校班の顔合わせや、通学路の確認に行っていた時のことです。一緒に連れて行っていた当時6歳の子供が、公民館の端っこで他の子供たちと一緒に絵を描いて遊んでいました。

4歳の次女は私にべったりで、横にちょこんと座って積み木を延々と横に並べる遊びをしていました。2歳になったばかりの息子は、私の膝の上であーたらうーたらいいながら、涎を垂らして布の絵本を握ったり開いたりしていました。

だいたいの打ち合わせも終わり、後片付けをして帰るか、と子供の方に歩いていくと、長女は真っ黒になっている一枚の紙を私に手渡しました。

A4のコピー用紙にクレヨンで描かれた絵には、黒と赤以外の色彩がほとんどなく、青色の点が少しあるくらいの、ぐしゃぐしゃっとなった何かの絵でした。周りの子供たちはお花とか、おうちとか、お姫様とか。思い思いに色とりどりのものを書いていたのに、何故か長女の絵だけは黒の面積が多かったのに、ふと「あれ?」と思いました。

子供たちを連れ立って家に帰り、キッチンへ行くと、テレビで好きな番組を見始めた長女の後ろ姿が目に入ります。次女は長女の隣で一緒にテレビを見ていて、一番下の息子は布の積み木のおもちゃを頬り投げて遊んでいました。

その時ふと、長女の書いた黒い絵を思い出し、部屋の壁にマスキングテープで貼っていた長女の作品に目をやりました。

黒い何かの塊が、人の形のようになっている奇妙な絵の隣に、長女が好きだったキティちゃんのようなもののイラストや、当時はまっていた風の谷のナウシカのナウシカのような姿。それに混ざって、何故か黒い塊が必ず入り込んでいました。

心理的に不安だと、確か黒い絵を描く子供がいる、という話はどこかで耳にしたことがあり、いつも笑顔でキャハキャハ笑っている長女も、不安を抱えているのかもしれないと心配になりました。保育園もなかなか馴染めず、なんとか頑張って2年を通い、そうする中で何か口に出せない不安を子供も抱えているのだろうと思うと、自分のふがいなさにショックを受けたりもしました。

成長していくと黒い絵もカラフルな絵に様変わりするという話を、テレビか何かで見たことがあったので、この時はあまり心配しすぎないようにしようと思いました。

3、精神的なもの?

それから数か月後。

コロナウイルスの世界的な感染が拡大し、卒園式はごく簡素なものに。入学式もかなり規模が縮小され、入学したのに4月はほとんど学校に通えず、下の二人が通っていた保育園もできれば自宅保育を推奨、というようになりました。

三人の子供が家でわちゃわちゃ賑わっている中で、一枚、また一枚と日増しに黒い絵が増えているのが気にかかっていました。

娘が描く絵の黒い面積が増えているなぁ、くらいにしか思わなかったのですが、ようやく学校が始まり5月の連休も楽しめない連休を越えて、数日後。

娘が通う放課後デイサービスの先生から「ちょっと気になることが」とお電話をいただきました。小学校一年生の娘は5月の学校再開から療育支援のデイサービスに通っていたのですが、その先生が「〇ちゃんの描く絵のことでちょっと気になることが」と呼び出しを受けました。

実際は呼び出し、というほどではなく、書類を受け渡すために伺った先で詳しい話を聞く、ということだったのですが。

その場で「ちょっと気がかりなんです」と見せられた絵に、私は絶句しました。

赤と黒だけの人がいっぱい画用紙に書かれていて、あれも、これも、だいたい15枚ほど見せてもらったのですが、大体同じ色で埋め尽くされています。

イマージナリーなんとか、という話はどこかでちらっと聞いたことがあるのですが、それにしても黒い塊のような存在は、奇妙を越えて気味の悪さを感じました。(しかもクレヨンで書いてあるのが余計に黒さを増し、思わず眉間に皺が寄るレベルです)

「同じ年頃のお子さんは、色々な色を使ってお花だったり、おうちだったり、車だったり、好きなものを諸々書いたりするのですが、〇ちゃんはピンクとか青とか使ってもいいんだよ、と言っても黒と赤ばかりなんです」

と聞かされました。この絵の話は、別のお話になるのですがやや気がかりなことを体験したこともあり、私はややピリっとした気持ちで話を聞いていました。

「何か精神的に抑圧されたことがあるのかもしれないのですが、慣れない生活で表面的には出せないけれど、こうした絵として描かれるお子さんもいるにはいるので。一度、提携先の小児精神科医の先生にこの絵を見せてもいいでしょうか?」

と言われました。
慣れない小学校の生活に、コロナが始まり、家の外に出にくい環境で、かなりストレスを抱えているのだろうな、と思いはしたものの、その場では言わなかったのですが実母が少し前に言っていたことがやや引っ掛かりました。

「○ちゃんにも、見えとるんかねぇ」

何が、見えているんだろう。
とは思いましたが、それが何なのか聞きだせず、また母の妄想だと思っていた私は、なんとなく聞き流していました。

この時はこれで話は終わったのですが、やはり母親としてはとても心配でした。

4、引っ越し

この頃、住んでいた賃貸物件でうちは関りないのですが、同じ敷地の別の棟で色々なトラブルが起き始めたこともあり、物件の更新が今年の夏ごろになるということも相まって引っ越しを検討し始めました。

この住居は学校からはかなり遠い場所の住居でもあり、周囲の環境を含めて、このままここで住み続けるのはなかなか子供たちにとっても良い影響が少ないのではないか、と考え引っ越しを決断しました。

新しい住居に引っ越した夏休みの初め頃のことです。娘が帰宅すると向日葵の絵がたくさん描かれた、色鮮やかな明るい絵を持って帰ってくれました。放課後デイで描いた絵でした。

引っ越して以来、娘が真っ黒な絵を描くことはなくなりました。
一瞬、当時の絵を記念や想い出に取っておこうかと思ったのですが、かなり気味の悪い絵だったこともあり、残らずすべて処分してしまいました。

引っ越す前はほぼ毎日のように書いていた絵の中に出ていた真っ黒な塊は、引っ越した後、現在に至るまで書くことはありませんし、下の子供たちも描くことはありませんでした。

5、姪っ子

引っ越しをする4ヶ月ほど前。
妹と姪っ子たちが家に遊びに来たことがあります。子供たちと同い年の姪っ子たちは、従妹と遊べるのを毎回楽しみにしてくれていて、実家ではよく家の中で鬼ごっこやままごとをしたり、一緒にお風呂に入ったり眠ったりする中でした。

この妹のところの姪っ子二人がまた少し、小さい頃変わったものや変なものをよく見る子たちだったのですが、そのうちの上の子が、お昼ご飯にとオムライスを作っていた私の服を引っ張ってこういったことがあります。

「おばちゃんおばちゃん。あのなぁ」
「なに?どうしたの?ご飯もうちょっとでできるよ」
「うん。あのなぁ。あっちの部屋に、おばさんおる」
「おばさん?△のこと??」
△は妹のことで、リビングの横の部屋で私の娘たちとテレビを見ていました。

「ううん。あっちの部屋になぁ、怖いおばさんがおる」
ぞわっと肌が粟立ったのは、子供が奇妙なことを言う恐怖からというより、やや思い当たる節があったからです。

「おばさんは何しとるん?」
と私が聞くと、姪っ子は玄関横の部屋の方向を指差して、こう言いました。
「すごい怒った顔でこっちをにらんどる。こっちにこようとしとる」

悪ふざけなのか、私をちょっと脅かそうと思ったのか。

ちらっと考えなかったと言ったらうそになるのですが、見下ろした姪っ子の表情は強張っていて、真剣そのものでした。一点を凝視して、スカートのすそを両手でぎゅっと握り込んでいます。

私はなんだかすごく嫌だなと思い、姪っ子に、
「こっちにこんとってって言ってくれる?」
と言いました。すると、姪っ子はその部屋がある方向。廊下に向かって、
「こっちに来るな!!あっちに行け!!」
と叫ぶように言いました。

「え??なになに、どしたの??」
のんきな妹の△が後ろからやってきたのを無視して私は姪っ子に尋ねました。
「どう?まだおる?」
「もうおらん。どっかにいったみたい」
首を左右に振って、わーんと泣き出してしまいました。

大丈夫大丈夫、とのんびり言いながら姪っ子を抱きしめる△に、私は今起きたことを説明すると、妹は何とも言えない顔をして眉毛を八の字に下げて「よくあるんよね」とため息をつきました。

6、全てはオカルトではない。けれど…

この前年の5月。私はこの玄関横の部屋で原因不明の腹痛に襲われて、倒れ救急搬送をされ、一時生死の縁を彷徨いました。ご近所でお世話になっている方が子供たちを見てくれ、付き添ってくれたおかげで難を逃れましたが、あともう少し病院に到着するのが遅くなっていたら、深刻な後遺症が残っていたかもしれないと言われました。

その次の年の同じく5月。引っ越しをすることになる年の5月のことですが、夫婦でとあるYouTube動画を見ていた時のこと、閉めていたはずの扉が急にぎいっと開いて閉じたこと。その夜、夫婦ともにアデノウイルスに感染しやや大変なことになったこと。

とはまあ、上記はまったく関係ない話なのですが、何でも「幽霊のせいだ!」「何か障りがある!祟られている!」というのは、かなりの思い過ごしです。

真っ暗な部屋で白いカーテンがそよいでいたら「幽霊だ!」というのと同じレベルで、動画でよくある白い球が「オーブだ!」というのと一緒です。大抵の正体はカーテンだし、大体ホコリです。

ただ不思議なのは、iPhoneを当時も使っていたのですが、その部屋で作業していると、テレビも音楽も付けていないのに。
『なんといったのかわかりません』
『なんでしょうか?もう一度言ってください』

と私のiPhoneのsiriが勝手に作動していたり、テレビを切ったはずなのに、なぜか電源がついていたり。つけっぱなしだと思っていたテレビが消えていたり。ただの思い過ごしで気のせいだろうと思って過ごしていました。

ちょっと変だな、アレ?と思うようなことを、心霊現象だとひとくくりにして結びつけるのはおかしな話だと思います。病気で倒れたのも疲労が蓄積し、免疫力がただ低下していただけでしょうし、iPhoneも不具合があったのだろうと思います。

けれど、娘の黒い絵。
ふざけている、嘘をついているとは到底思えない姪っ子の言葉。
引っ越してから全く描かなくなった、黒い絵。

もしかしたら、世の中には肉眼では見えないし、説明を明確にしずらい出来事があるのかも、しれません。

皆さんにはそんな、説明のつけがたい奇妙な偶然の一致や、信じられないと思われるかもしれないけれど、実際に体験した奇妙な話はありませんか?

今日はそんな「黒い絵」の話でした。

皆さんの不思議な話、奇妙な話、実際に体験した怖い話。
XのDMにて是非お聞かせください。

☆【募集中】☆

幽霊が見えるという人はどんな風に「幽霊が見えているの?」という素朴な疑問から、共通点を見つけたい!という好奇心で、色々なお話を聞いて分類したり類似点を見つける研究をしています。
どんなお話でも構いません。オチのない話ほどウェルカムです!
もしよろしければ是非、XのDMへお話をお寄せください!よろしくお願い致します!

平素は一般のハンドメイド作家を生業としています。
パワーストーンのパワーを信じていない人です。

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石野@マクラメアクセサリー作家
天然石を極細の糸で編むマクラメクリエイター。天然石をマクラメの技法を駆使して宝石いっぱいのペンダントにしています。