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仮想カタログの危うさ


仮想カタログとは

人間中心設計、UXデザインやデザイン思考のプロセスの中でよく登場するツールのひとつ「仮想カタログ」。仮想カタログとは、企画・開発しようとしている製品やサービスを、実際に開発する前に、出来上がったらとしたら?を想定して、先に作るカタログのことを言います。

仮想カタログの使い方

仮想カタログの作り方は、ここでは割愛するとして、使われ方としては、以下のシーンが多いのではないでしょうか。
1. 社内の認識合わせ
開発メンバーや営業担当者、マネジメント層など社内ステークホルダーに完成予想図を見せることで、どんなものを開発しようとしているのかについて全員で共通認識を持つことができる。営業担当者が見れば売れそうかどうか見当をつけることができるし、マネジメント層もGo/No Goを判断しやすくなる。開発途中に、鶴の一声により仕様変更になった!といった問題を防ぐことができる。
2. ユーザーの受容性調査
ユーザーに具体的な製品のイメージを持ってもらうことで、その製品がユーザーに受け入れらるかどうかを確認することができる。

仮想カタログの問題点

1の使い方は分かる。実際に自身の開発プロジェクトで使用したことがあるので、効果を実感している。仮想カタログを手元に置いて開発を進めることで、当初のコンセプトとズレることを防ぐこともできる。

問題は2である。例えば、製品開発(特に新規事業テーマ)を成功させるためのプロセスとして、以下のフィットジャーニーが有名かと思います。
CPF(Customer Problem Fit) 顧客の課題って?
PSF(Problem Solution Fit) 顧客の課題を解決する解決策って?
SPF(Solution Product Fit) 解決策を実現するプロダクトって?
PMF(Product Market Fit) プロダクトは市場に受け入れられる?

2の使い方として、この流れのSPF、PMFあたりで、仮想カタログをユーザー(候補)に見せて、こんな製品があればどうですか?とヒアリングを行っているのではないでしょうか? 私も使ったことがあります。

もし、LEXUSのカタログを見せられて、どうですか?と聞かれたら、「かっこいいっすね」「高級感あります」「V6ツインターボエンジン、わぉ」とか、悪い点といっても「フロントグリルが、ちょっと好みじゃないんですよね」とか答えるのではないでしょうか。綺麗なカタログをぱっと見て、全体としてイイね!と思ったところに反応してしまいますし、また、詳細なデザインが描かれていると、製品の提供価値がFitするかどうかではなく、ディテールについてコメントをしてしまいます。

すばらしいアイディアを思いつきそれを伝えたい!という気持ちが先にたって、価値の提案箇所はリッチだけど、マイナス面の伝え方がプアな仮想カタログを作ってしまう恐れがあります。このような仮想カタログを使った調査結果が良かったからと言って、このプロダクトで顧客の課題を解決できます! 市場に受け入れられます! と判断してよいものでしょうか?

まとめ

仮想カタログは、1の使い方はお勧めしますが、2はお勧めしないです。私は2のシーンでは「シナリオ」を用いた調査を行うようにしています。もちろん、仮想カタログの使い方を間違えているとも言えますが、人間って綺麗なものを見せようとしますからね。。。


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