BL短歌連作「Accomplice」

収録していた同人歌集が在庫もうないし、組版データ紛失したので公開。




僕たちに罪が無いとは言わないが人並み外れて悪でもない

親友は距離感がおかしい君で僕は恋愛対象が君

ご関係は？恋人です。適当に答えるなって後で困るぞ

目を逸らす。あまりに君がまっすぐで僕にはうまく躱せないから

好きだとか軽々しく言うな僕は君にどういう意味か訊けない

オンライン授業は軽く聞き流す隣の君は真剣に寝る

アマゾンの荷物を勝手に受け取って僕の苗字をたやすく書く君

仕送りのメッセージには「早く彼女を連れて来い」余計な一文字

レトルトのカレーに魚肉ソトッピング母が見たら何て言うだろう

二人分のカレー皿を洗う君きっといい夫になれるはず

誰かの素敵な夫になるはずの君をとらえる僕という檻

泊まっていけとはなかなか言い出せず成り行き任せ徹夜マリカー

真夜中にピザ食べるとか若いうちの特権だよな今思えば

いつか僕たちは若気の至りって笑うだろうかこの関係も

静けさが世界を二人きりにする耐えられなくてサブスクを聞く

チルアウト冷めていく体温が僕を賢くするならどうすれば……

朝方になるたび君はベッドから転げ落ちて大の字で寝てる

うずくまる僕の寝相を「ひとりきり、抱え込むな」と君は言ったね

ダルい身を起こすことなく考えるたとえば君と暮らす方法

シェアハウスするのもいいか君と僕だけで住むんだ2LDK

いつの間に君は自分の歯ブラシを洗面台に置いていたのか

将来の夢は一軒家に君とデカい犬と一緒に住むこと

想像の犬はふさふさの尻尾を振って抱きつく未来の君に

曖昧さ回避で選択肢を出すとっとと選べ次に進めよ

チャーハンは得意なんだと君が言うそういう男は割とモテる

それなりに独占欲もあるけどもかっこ悪いし見せないように

好きなもの大体知っているつもりだけど嫌いな人は知らない

会うまでの君の履歴は知らないし知る気もなくて今を愛する

君がまた猫を拾ってしまいそう容易く手を伸ばす悪癖だ

あの時も君は手を差し伸べたよな僕はその手を握り返した

就職はしたくないしする意味ないから君と起業してもいいな

探偵事務所なんかどうだろう？僕と君でバディを組んで仕事

パートナーシップのニュース他人事で「良かったね」とか薄い感想

主義主張は特にないです穏やかに君と生きたいただそれだけで

多数派と少数派が対立する変わりゆく今が僕たちを踏む

どちらにも属せないから僕たちは二人きりでひっそり生きたい

言語化を拒む気持ちを払い除け海行こう誰もいない海へ

自転車を立ちこぎするな小学生じゃあるまいし格好悪いぞ

ラムネ瓶二本寄り添って転がる僕らもそんな風でありたい

Tシャツで汗を拭くなよほらタオルやるから次の洗濯は君

足元に広がる海はミッドブルー心中する気はまるで無いけど

今死んでも悪くないか二人きりこのままずっと共に居たいよ

目を閉じて浮かべてみる行けもしない新婚旅行は海辺がいい

里帰りするとき君を連れていく会わせてみれば自ずと判る

エア帰省と言いつつLINE送って親に君を紹介した夜

違うんだ、僕たちは付き合っている。友達だけど、友達じゃない。

苦い顔した父が言う「彼の親御さんは何と言っているのか」

まだ君の親には言っていないまま僕の親より厳しいだろう

「僕たちは寄り添って生きていきます」僕は君の伴侶になりたい

恋人は親友の君いつの日か互いの夫に僕たちはなる