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岩手県北上市立鬼の館🔥鬼にまつわるミステリアスな世界を覗く。
2024年9月某日、私は岩手県北上市立「鬼の館」にいた。
岩手に来た本来の目的は「遠野物語」の舞台となった遠野と宮沢賢治のイーハトーブを巡る旅だったので、ここは予定に入っていなかったのだが、道すがら見かけて寄ってみたのだ。実は、一旦は車で通りすぎたのだけど気になって引き返したのだ。
建物に入ると広いロビーの奥に大きな鬼の面が置かれていて、両脇には面がずらりと並んでいる。両脇の面は地元の子供たちが作成したものらしい。鬼の面とはいえ、カラフルだ。よく見ると、ちいかわ、おぱんちゅうさぎ、ピカチュウの鬼面も混ざっていた。鬼にも時代を感じる。
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さっそく中へ…。
最初のブースで5分ほどの鬼の映像、ショートムービーを観て展示フロアへ。
展示室内の一角、陰陽師みたいにかっこよく祝詞唱えたらさまになりそうな大理石のブース「鬼居る角」鬼門の方角を指し示してくれている。
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そこから東の方角、奥に見えているのは鬼曼荼羅の「餓鬼」その他、「大人」「鬼神」「妖怪」と全部で4つの世界があった。
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世界の面を取り揃え
日本、海外、色んな地域の面があった。
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鳴き声が聞こえてきそう。というか、私の頭の中では鳴いている。甲高く「キエエエエーーーーーーーーーッ」と鳴いている。ともすれば不快で耳を塞ぎたくなるような鳴き声だ。あくまでも私の頭の中のイメージである。
現世だと鷲に近いらしいので、鷲の鳴き声(オオワシ、イヌワシ、ハクトウワシ)をyoutubeで聴いてみたが、どれも私のイメージとは違った。
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生首ネックレスを付けている、中央のムンダマーラーは別名シヴァ神で、生首は転生を繰り返した奥さんのパールバティという説をネットで見かけた。でも、この生首は鼻髭を生やしたオジさんにしか見えない。タイの面はフルフェイスで、被ったら一気に鬼神との一体感を得られそうだ。
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アジア系のお面が多い中、目も鼻も大きく彫の深い西洋人の特徴がで目を引いた。西洋にも鬼がいたのかと検索してみたら、最近のクランプスは「ザ・デビル」といった風貌で、目の前のクランプスとは少し雰囲気が違う。このクランプスは、角も生えていないし、牙もない。顔の造形を大袈裟にデフォルメしてはいるが、昔話にでてきそうな普通の西洋のおじいさんに見えなくもない。昔は災いも身近で、想像上のデビルみたいに遠い存在ではなかったことの現れなのだろうか?それにしても、鬼が山麓の村々をまわり、鞭で村人を追いかけまわすお祭りなんて、西洋版なまはげだ。
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外国のお面と比べて、日本の鬼面は比較的地味だと感じた。「一面一色」赤鬼、青鬼、黒鬼、般若、色合いの派手さは抑えめ。
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中央に天井に届くほど大きいレリーフが何点か飾られていた。後からパンフレットで確認したら、作成者は成田亨さんという方で、ウルトラマンの特撮美術監督として活躍されていた方らしい。迫力満点なのも納得。
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ナマハゲもスネカも来訪神だとは知らなかった。東北で生まれた鬼だと思い込んでいた。来訪神としてみると、お面の鼻がピノキオみたいに伸びているのは、鼻高い民の国から来た証拠なのだろうか。沖縄のオホホ(南蛮人)みたいなものなのだろうか。
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死者の魂部分が、可愛い。鬼太郎の目玉のオヤジにしか見えない。
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黒石寺の蘇民祭の面があった。蘇民祭と言えば、最近とても話題になっていたお祭りだ。それは、1000年も続いた蘇民祭が今年(2024年)を最後に、その歴史に幕を下ろすと発表があったからだ。元々人気のお祭りで、近年の開催時には町の人口900の3倍を超える約3000人が町の外から訪れるほどだったのだが、もう、開催されない伝説のお祭り。その幻の面。
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出口の横に鬼太郎ファミリーがいた。鬼太郎の頭上に立つ目玉のオヤジ。
息子を心配してあの世に行けず彷徨う死者の魂、目玉のオヤジは、妖怪鬼だ。
他にも、音声コンテンツや仕掛けがあったりと楽しめた。次の予定がなければもっとじっくり見て回りたかった。旅の直感には従ってみるものだ。