リハビリ_施設の紹介-5

『病歴聴取を極める』 Report!

こんにちは、HBDのかわむーです!

本日は、11月2日(土)に行われた『病歴聴取を極める 〜全ての言葉に意味がある〜 』の様子を簡単にレポートさせていただきたいと思います。

今年の2月にも開催し、大盛況に終わった小松先生の『病歴聴取』セミナー! 本来は10月に開催予定でしたが、台風の影響により11月に日程変更となりました。しかし、会場には多くの若手医師・医療関係者が集まり、今回も非常に盛り上がりました。

会場の熱き様子を頑張ってお伝えしていきたいと思いますので、最後までどうぞよろしくお願いします!


画像1


1. 本日の講師 〜小松孝行先生〜

本日は、順天堂大学医学部付属練馬病院 救急・集中治療科から小松孝行 先生をお呼びしました。

先生は、2008年に順天堂大学医学部を卒業。順天堂大学医学部付属練馬病院にて初期研修・後期研修を修了し、2014年に順天堂大学にて医学博士を授与。現在は同病院  救急・集中治療科で助教、医局長、外来医長を兼務されています。
また、大学バスケットボール連盟を中心に  “スポーツドクター”  としても活動されており、非常に多方面で御活躍をされています!

今回の『病歴聴取を極める』をテーマにした講演会は、なんと10年以上もされているそうです! 本日は、 “人を診る専門家”  である小松先生から、救急科専門医として、集中治療専門医として、総合診療医・総合内科専門医として、さらにはスポーツドクターとして、多方面からお話いただきたいと思います!


画像2

小松先生、よろしくお願いします!



2. はじめに

皆さんは、この言葉を聞いたことはあるでしょうか。

“ The practice of medicine is an art, based on science.” 
 by William Osler 

“医学の実践はアートである。そしてそれは、科学に基づくものである ”

こんなことを100年以上前に現代医学の父・オスラー先生が言われているのです。
皆さんは、この本質を考えたことありますか?



画像3



3. 病歴聴取の " based on Science "

まずはじめに、「人を科学する」ためには   “正常” の理解をしなければなりません。

人の恒常性を保つための機構(生理学・生化学など)や、人体の構造(発生学・解剖学・組織学・遺伝学など)というのは普遍的であり、これらの "正常" は知る必要があります。

正常を知った上で、その正常のシステムが破綻すること=「病態生理」をきちんと理解することが、患者を科学していくために重要となります。


画像4


病歴聴取におけるscience(病歴聴取を科学する) とは、
患者を取り巻くすべてを詳細に観察し、情報を正確に抽出、そして仮説をたてて分析評価することです。この時、あらゆる情報が診断のヒントになることを覚えておきましょう。絶対関係ない、と思う話でも、そこにヒントが隠れていることがあります。

情報が集まれば診断は難しくありません。情報を集める際は、"ファーストコンタクト" からしっかりと観察していきましょう。例えば、問診票や入室してくる様子、態度、容姿、現場の状況など。さらには、救急隊接触から病院到着までの1分1秒も大切にするよう心がけると良いでしょう。



4. 病歴聴取の "Art "   〜会話と脱線〜

病歴聴取のArtとして大事なポイント。それはズバリ、"会話"  をすることです。

皆さんは患者さんと会話をしていますか?話は流れから生まれるのもです。「ところで〜〜」と、話をブツっと切ってしまうことはないでしょうか?
また、リスト的に聞いてしまっていたり、めんどくさいことを聞かないようにしている事はないでしょうか?  病歴聴取がテンプレートであってはならないのは、埋める作業をしていると気づかないことがあるからです。

会話をすることで、"信頼関係の構築" "情報の抽出" をすることができます。

患者から引き出せないのは自分に責任がある。病歴聴取もスキルであると言えます。


画像5

そして、会話はあえて "脱線するべし"   です。

患者さんが脱線すると、ついつい「違うなぁ」と思ってしまいがちですが、そんな時こそこちらから逆に質問し脱線していく。すると、その人の24時間をイメージしやすくなり、病気のシメージもつきやすくなる事があります。

"大事な情報が、どうでもいい情報(ノイズ)から生まれる"  という言葉があります。しかし先生に言わせると、ノイズというものはなく、それは絶対に必要なもの。早く終わらせたい傾聴や共感は無駄。会話はどんどん脱線していこう、とのことです。ちなみにこちらから乗っかって脱線させていくと、逆に話を戻しやすくもなるそうです。このテクニックは、ぜひ日々の臨床で実践してみたいものですね。


画像7


5. 病歴聴取の "Art "   〜ジクソーパズル〜

次に、 "ジクソーパズル"  から病歴聴取をイメージしてみましょう。

皆さんはジクソーパズルを作る時、どこから埋めていくでしょうか?
多くの人は、周りから埋めていくのではないでしょうか。ジクソーパズルを周りから埋めることは、病歴聴取においては患者の "バックグラウンド" を埋める作業になります。真ん中のメインな図柄たちは、病歴で言えば、"主訴" と関連する近しい話になります。

もちろん最初から主訴と関係ない話ばかりするという意味ではなく、常にそこを意識して、会話の流れに逆らうことなく脱線していくということです。

患者さんに関する情報の一番外側が把握できていれば、漏れは少なくなります。

本人はジクソーパズルの真ん中を話してくるため、こちらは隅っこを聞いてあげたほうが良い、という事ですね。

パズル


4. 診断推理を失敗する4つの理由

1. 翻訳ミス
 曖昧さを無くすようにしましょう。例えば、「胸苦しい」という訴えに対して、胸痛、胸部不快感、胸部絞扼感、心窩部痛、胸焼け、などなど色々な症候を患者は「胸苦しい」と表現する可能性があります。患者さんの訴えを医学用語に正しく翻訳しましょう。
2. 本当のonsetの認識ミス
 人が病気になるタイミングをきちんと聞いていく事が重要です。 例えば、患者さんが言う「少し前」とはいつのことでしょうか? 最後に受けた健康診断は?何日の何時から調子が悪くなった?など、曖昧なところは掘り下げて聞いていきます。日本には四季があるため、行事等を絡めて聞いていくのも良いかもしれません(桜が咲いていた頃は、、鯉のぼりの季節は、、など)。

 また、患者さんのいう「風邪」「夏バテ」「熱中症」なども怪しむこと。患者さんが自ら推測して話されること(や病名)に、騙されないように注意が必要です。 その他、痛みに関しても、OPQRSTのみに捉われず、増悪や寛解を繰り返しながら一体どちらに向かっているのか、経過を追いながらしっかりと評価しましょう。
3. 諦めたらそこで試合終了です
 すぐに検査に逃げないこと。まずは「メカニズム」を考えましょう。
「点」から「線」へと、病歴を時間軸に合わせて聴取していきます。どんな経過なのか?(持続 or 間欠? 増悪 or 寛解?  など) または、発症時の前後の状況や程度や性状、随伴症状、痛みの場合や放散痛など。記憶を順行することで、不足した情報を得やすく、患者としてはsympathyを抱くことができます。 
 情報を細かく聞くだけ。病歴にも全て理由があります。
4. 建設的介入を忘れる
 建設的介入を忘れないようにしましょう。仮説を立てたら、それを立証するために次のステップへ進みます。病歴から身体所見、検査初見へと進みます。(それぞれのパート内でも、整合性は判断します)


画像8



7. 実践!小松先生とロールプレイ

ここからはロールプレイの時間です!

実際にどのような症例が良いか会場からリクエストを募集します!

画像9


リクエストが多かったのは、なんと「20代女性」!(笑)

画像10


あらかじめ会場に用意された変装用のカツラを身につけ、役作りをする小松先生。即興で患者を演じていきます!


画像11

受講者は順々に、小松先生演じる患者「孝子さん」に問診を行っていきます。

画像12

些細な情報にも耳を傾け、一つ一つの言動の背景を探っていきます。

画像13

一通り問診が終わったところで、ここからはフィードバックです。


まずは病態生理の確認から。

病態は、自分がしっかりと理解していないと、患者に説明することができません。病態の説明で必要なのは、医療用語をわかりやすく翻訳してあげること。"こちらのレベルに引き上げられるように、正確に説明する" ことを意識し、そのためにまずは自分自身がしっかりと "病態生理" を理解しましょう。


そして次は、問診のポイント確認です。

時に「患者は嘘をつく」ということを頭に入れておきましょう。それは、"本人が重要と理解していないから言わない" ことや "本当に言いたくない" といったことが含まれます。情報の分析の中で生じる矛盾から、隠された情報の存在に気付き、なぜ言ってくれないのか?を考えていきましょう。




画像14

次のロールプレイでは、受講者を3人ずつのグループに分け、医師、 家族、オブザーバー役にそれぞれ割り振り行なっていきました。


画像15

なんともリアルなシチュエーションに、みなさんとても真剣です。

画像16

ここでは、無責任な投げやりICにならぬよう、「常に家族も救うこと」を意識してICをすることの大切さを学びました。

家族を救うためには、時に我々がその責任の一端を担うことが必要です。その時必要なのは、信頼関係を築くことと相手のニーズを理解し解決することです。


また、もう一つ重要なこととして、「行動科学的アプローチ」があります。人の言動には必ず理由があります。それこそが真のニーズであり、信頼関係の構築には必須となります。なぜそんな言動をしたのか、しっかりと背景を探っていきましょう。


画像18


小松先生の病歴聴取の極意に、

後の先(ごのせん):相手を先に動かして、こちらが先手を取る。

というものがあります。

患者と医療者では初めからGAPがあります。先に向こうの疑問を聞いてから、次にこちらが答えていくと良いでしょう。

そして、GAPに気づいたら適宜埋めていきましょう。GAPは、患者自身の中のGAP、患者と家族とのGAP、患者&家族と医療者とのGAPなど様々です。 そのエラーを修正し、新しく得る情報がより正しい情報となるようにしましょう。

患者側もチームの一員です。わからない事は説明し、理解してもらう。
そして "完全な医療チーム" を作っていましょう。

画像17

「寄り添う医療」ではなく、「抱き寄せる医療」を。 





8. 最後に

どうでしたでしょうか、『病歴聴取を極める!〜全ての言葉に意味がある〜 !』

ぜひもっと詳しく知りたい!知識を深めたい!と感じた方へ、朗報です!小松先生、実は病歴聴取に関するDVDを出されています!今回伝えきれなかった事がそこにおさめられているかもしれません。

最後にリンクを貼らせていただきますので、気になる方はそちらも要チェックです!



さて、ということで、今回も大盛況で終わったHBD!

次回は、2019年11月16日(土)に亀田総合病院 リハビリテーション室から鵜澤 吉宏先生をお迎えし、

『重症患者の早期離床セミナー』 を開催します!



画像20


画像20


最後まで読んでいただきありがとうございました!


かわむーでした。


今後ともHBDをよろしくお願いいたします。


**********************************

◆小松孝行先生 DVD 
Dr.小松のとことん病歴ゼミ / ケアネットDVD DVD-ROM – 2018


◆おまけの宣伝
HBDのセミナーの翌日、小松先生が私かわむーがメインパーソナリティをつとめるFMラジオ『医どばた食堂』の番組に遊びに来てくださいました!

画像21

この番組は、
・2019年12月13日(金) 16:00~16:30
・2019年12月20日(金) 16:00~16:30

FMはつかいち  76.1MHz  で放送予定です!
ネットラジオ (ライブ)
番組YouTube (タイムフリー)
でも視聴可能ですので、広島西部地区以外にお住いの方もご視聴いただけます。

「コミュニケーション」をテーマにお話しいただき、放送では前編・後編に分けてお届けすることになっておりますので、ぜひ2週続けてお聴きください!
公式Facebookページでもお知らせあります。)




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?