小伴天いちじく会席 生産者の会へ
子どもの頃、夏になると何パックもイチジクが届き、毎日のように食べていました。同居していた祖母が名産地の安城市出身で、その地の親戚がイチジク農家をしていたため、規格外品や熟れ過ぎたものを大量にいただいていたというわけです。
熟れ過ぎたイチジクは、流通には乗らないけれど、あの芳醇なおいしさを知ってしまったら、もうふつうの市販品はもの足りません。
味も香りも甘さもこっくり濃厚で、いわばすでにジャムやピューレ状態…。
祖母が亡くなり、親戚もイチジク農家を辞めてから、たまにあの味が恋しくなって自分で買ったり、外食でいただいたりしたけれど「ぜんぜん違う」と思うことが多々…。
とくに関東に住んでた頃は、いいイチジクに出会えることはめったになくて。そして知りました。あの味の乗り切った状態のイチジクが、いかに貴重なものだったのかということを。
それから始まったわたしのイチジク探求。(ちょっと言いすぎてますが・笑)
さて、前置きが長くなりましたが、Uターンしてきて知ったのは、夏になると碧南市で「いちじく会席」が味わえる、という話。
まわりの美味しい物好きが何人も食べに行っているのを聞きつけ、初めて私もいただいたのが6年前の2018年、「小伴天はなれ一灯」さんのコースでした。
そして昨日おじゃましたのは「小伴天」(本店)さん。その食材に選ばれている地元の生産者も参加する特別な会でした。
主宰は小伴天の料理長・長田健太さん。この会は今年で8回目。人気ですぐ埋まってしまうため争奪戦で、わたしは今回やっと初参加できました。
今回は参加者60名を超える過去最高人数ですが、それでもキャンセル待ちの方が多かったそうです。
小伴天のある碧南はみりん激戦区。そのなかで個性光る逸品を醸す杉浦味淋の杉浦嘉信さんもご挨拶。
続く乾杯は、食前酒として供された「大人のコーラ」で!
このコーラは碧南市の酒屋「金原酒店」さんによるもの(アルコール入りとノンアルが選べました)。
店主の金原弘晃さんは、蔵元の情報を伝えたりオリジナルのお酒を作ったりイベントを行ったりと、とても活動的な方。
この日は会場の一角に金原さんによる角打ちも出現し、お酒もノンアルドリンクも興味をそそられるものがズラリ。近いうちにお店へ伺いたい!
少々話がそれましたが、会は「ほうろく菜種油」(西尾市)の杉﨑学さんの司会で進んでいきました。
お料理は、5種の前菜からスタート。
左から
・稚鮎の南蛮漬(揚げ油:ほうろく菜種油)
・天日干ししらす みぞれ和へ(しらす:碧南のカネ光水産)
・握り寿司
・揚げワンタン
・カマンベールチーズ黒糀甘酒
握りに使われたいちじくは、かなり好みの状態でトロットロ。
この日のいちじくは、神谷昌明さん(写真上)の特Aランクと、JAいちじく部会さんのものが使われました。
そして例年なら黒糀の作り手「みやもと糀店」の宮本さん(西尾市)が参加しているはずなのですが、今年はお会いできず残念。
次は天然石鯛のお刺身が登場。肉厚のお刺身がいちじくに巻いてあり、上にはきれいな赤紫蘇ジュレ。
この石鯛を釣り上げたのは、碧南の船釣り名人・田渕秀隆さん。
石鯛のカマもお披露目され、みなさんその大きさに釘付け。
さて、先ほどのジュレには三河みりん(碧南の角谷文治郎商店)がたっぷり使われていて、周りに散らされた白いチーズ状のものも三河みりんの「こぼれ梅」(みりん粕)という一皿。
こぼれ梅を手にした角谷文治郎商店・角谷文子さんのお話を聞きながら味わいました。
(ちなみに赤紫蘇も碧南市の初夏の特産品。収穫量は全国2位なのだとか)
お次は三河鶏とイチジクの塩糀焼きです。
下にはみやもと糀店の黒麹ドレッシング。
(とうもろこしも近年、碧南で生産が盛ん)
そしてイチジクの肉巻きフライ。
揚げ油はもちろん杉﨑さんのほうろく菜種油!
わたしはここの菜種油は日本一なんじゃないかと思っています。
メイン級が2品続いた後は、さっぱり酢の物。
はじめて食べた「長芋羹」に、キュウリとじゅんさいの緑酢が涼やか〜
カネ光水産・榊原隆典さん(碧南市)のしらすとあみえびが、旨みを添えてくれました。
榊原さん(写真上)が生み出すものは、地元産の原料と天日干しにこだわっていて、新鮮で臭みがなく、凝縮されたおいしさが魅力。みんなから「じゃこちゃん」と呼ばれる榊原さんの人柄の良さと共に愛されている逸品です。
ここまで来たら次は御飯かと思いきや、パン!
いえ、でも御飯といえば御飯かもしれません。米粉パンだから。
作り手は、今や行列のできる店になった米粉パン専門店「SolSol」の代表・片山幸寛さん(碧南市)。
ふんわりしっとりな米粉パンの上に、柔らかく煮た「三河おいんく豚」(西尾市)と、八丁味噌パウダー。そこに豊橋の國松本店さんによる「濱納豆」が添えられていて…赤ワインが飲みたくなって仕方ありませんでした。
最後のシメは、堂々の小伴天名物・鰻まぶしご飯!
小伴天といえば、なんといっても鰻。
(ここ数年、鰻が食べられる機会に恵まれた際はこの店に向かうことが多くなりました)
小伴天のうなぎ部門料理長・長田英三さん、いつも大満足の鰻料理をありがとうございます!
調理を担うコバちゃん(右から2番目)やイケちゃん(一番左)たちにも、みなさんから拍手とエールが。
(ベテランOBのイケちゃんは、この日ヘルプで調理場に復活)
さらにこの会、食後の甘味もプレミアムでした。
碧南発祥の白たまりを使ったプリンに、杉浦味淋さんによるみりん「愛櫻」の三年熟成タイプが蜜としてかけてあり、トッピングにはみりんグラノーラ。
さらにさらに、お茶から漂ってくるのはイチジクの葉の甘くふくよかな香り。
お腹も心も満たされつくしたのは言うまでもなく…。
ですが幸せの余韻に浸る間もなく、この会、まだ終わりじゃありませんでした。
各生産者の自慢の品々をかけたじゃんけん大会〜
景品には、桜の花びらを扱うメーカー・山眞産業株式会社花びら舎さんからのご提供品も。
本気の歓喜と嘆きが入り混じる大人たちの熱戦が繰り広げられ、夜はふけていくのでした。
おちゃめ力の高さもプロ並な主催者と生産者のみなさん、すばらしい饗宴をありがとうございました!
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ここからはイチジクとイチジク会席の情報コーナーです。
・愛知県はイチジクの生産が全国2位(都道府県別)。
・特に三河地方は栽培が盛ん。
・なかでも碧南市や安城市は昭和5年頃から栽培が始まったと言われ、歴史のある地域です。
・イチジク会席は、初夏から秋までの季節限定です。
・この時期になると様々なお店が独自のメニュー構成で展開。
・小伴天では30年ほど前からイチジク会席を提供していて、毎夏の人気コース料理になっているのだとか。
そして、今年もすでに小伴天では東京・大阪・名古屋からチジク会席の団体予約が9月まで入っているのだそう。
気になる方は早めの予約をおすすめします。