ゲーム「沙耶の唄」感想
※この感想は18禁ゲームの感想です。ご注意ください。
いつかはやりたいな~と思ってた「沙耶の唄」。
気が向いたのでプレイしてみました。以前から純愛っていうキーワードと一緒に話題に上がってたので、気になっていたのです。
ルートは沙耶のみ、エンディングは3種類、総プレイ時間は10時間くらいだったので、もし気になってる方がいるなら感想読まずにゲーム買ってプレイした方がいいです。気軽に出来るよ!
今回は思いっきりネタバレしてきます!!!ご注意!!
ジャンル:サスペンスホラーADV
プレイ時間:10時間
媒体:PC
■ フルボイス
当たり障りのないところから語りましょう。
なんと本作はフルボイスです!ちゃんと主人公の声もついている!主人公の声は緑川さん!
あとわかったのは、親友が松本さんで、この感想では一語も語ってないけど主人公の担当医が斎賀さん!他にも有名っぽい人いたけどわかんなかった!すごい!豪華!
そして残念ながら当たり障りのないところはもう終了です。もうシナリオ語るしかない。
事前情報として、化物だらけの世界で沙耶だけがまともに見える、でも実は沙耶のほうが化物っていう情報だけ知ってました。あと純愛で、グロいってことも。
~~~~~ネタバレするよ~~~~~
■ シナリオ
最初からグロ全開でした。変な肉塊が喋ってる……!いやでも最初びっくりしただけで慣れたらそんなグロでもないかも…?
主人公の郁紀(ふみのり)には、交通事故に遭って目覚めて以来、人も、動物も、建物も、生き物も、無機物も、全部肉塊に見えるようです。郁紀は五感がすべて視覚に引きづられている状態の中で、音も、味も、匂いもすべてが最悪な世界で過ごしていました。そんな中で出会ったのが「沙耶」であり、肉塊だらけの醜い世界で唯一まともに見える沙耶に依存していく、という話でした。
ざっくり語ると、沙耶はとある人物が作った(異世界から喚んだオカルト混じりの人外(肉塊&触手))で、この世界の知識を沙耶に与え続けていたがある日行方不明になり、沙耶はその人物を探してる最中に郁紀に出会いました。
郁紀はこの歪な世界で唯一美しいものを見て依存し、沙耶はこの異なる世界で唯一自分を拒絶しない人と出会って依存します。依存し合ってます。
誰だよ純愛って言ったやつ。
郁紀は沙耶に捨てられないよう報いるため、沙耶の人探しに協力します。
沙耶も沙耶で郁紀に捨てられないように沙耶が考える「郁紀が喜ぶこと」をプレゼントしていきます。
そんな中、隣に住んでるおっさんの脳を沙耶が好奇心でちょちょいと弄り、郁紀と同じ世界を見せてあげたらおっさんは発狂して妻子(と気づいていない)を殺害し、その世界で唯一美しい沙耶を発見した後強姦し、郁紀は帰宅時に強姦シーンを発見したのでおっさんを殺害します。
■ 各エンディング
以下エンディング。攻略した順番に書いてます。
精神病院(仮)エンド
正式名称がさっぱりわからないので勝手に仮称しときます。
おっさんを殺害した後、沙耶が「同じ世界を見ていても自分を大切に愛してくれるのは郁紀だけ」と気づきます。そんな沙耶に、郁紀が「きっかけがあったのはたしかだけど、そこから今の関係を育ててこれたんだよ」って言ってくれたので結構感動しました。ごめん純愛だったわ。
そんな郁紀に報いるため、沙耶は問いかけます。視覚障害を元に戻したいか、このままでいるか。
このエンドは郁紀が「元に戻りたい」と願ったエンドで、沙耶は望みどおりに郁紀の異常を治します。
まともな世界に戻ったけれど、おっさんを殺害したことによって妻子を殺した罪も被って一家殺害事件の容疑をかけられ、精神病院に入れられるエンディングです。
沙耶は郁紀が精神病院に入れられた後一度だけ会いにきてくれるのですが、対面しないし携帯に文字を打って伝えるだけ。元に戻った郁紀にとって自分は醜い肉塊だと思われたくなかったという設定は可愛かったと思います。
郁紀も「あの世界で唯一美しかったのが沙耶」ではなく「元の世界で醜い存在があの世界だと美しく見えた」ということに気付きつつも沙耶に愛を伝えます。沙耶は泣きながら別れを告げて、郁紀は沙耶が再度来ることを願いながら白い世界(精神病院の個室)で延々と待ち続けてるという話でした。
いやこのシーン、結構良かった…これだけ見ると本当に純愛だった……これだけ見るとな!!!
開花(仮)エンド
とある感想で「開花」って言ってたのがすごくオシャレだったのでそれに倣いました。
郁紀が「元に戻らない」選択肢を選んだ先にあるエンド。郁紀の親友がおかしくなった郁紀にケリをつけようとするルートでもあります。
精神病院エンドで、化物と人間の恋ってあるんだなぁ……と感動していたのですが、このルートみたら吹っ飛びました。だめだわ。郁紀、沙耶の本来の姿見たら絶対拒絶するわ。
元の世界を捨ててからの郁紀の殺意がすごい。化物に対する殺意はどんどんひどくなるし、食べ物も人間の食べ物が合わなくて唯一食べられるようになったのが人肉。前は自分がおかしいと分かっていながらもまだ「過去、まともだった頃は楽しく喋っていた仲間」という想いがほんの少しだけ残っていた気がします。けど元の世界を捨ててからはそんなもの微塵もない。
このルートだと作中で「オレにとってアイツは化物に見えるから殺すことに全然躊躇いを覚えない。むしろ清々する」「ふーん……そんなに違うの?」「ああ、全然違う」というやり取りがあります。目の前にいる肉塊に対して嫌悪感を催すのはわかる。わかるけど、郁紀にとって元の世界に戻ったら沙耶は同じような化物になっているから、この発言や化物に対する殺意は全部沙耶に言ってるのと同義なんですよね……。
こういう思考に陥るなら、精神病院エンドで沙耶が姿を見せなくて本当に良かったなと思いました。嫌悪感隠せないよね絶対。というか目の前の肉塊が過去愛し合っていた沙耶だって認めないよね。誰だよ純愛って言ったやつ。
そしてこのエンドは沙耶が繁殖して世界が肉塊まみれになるエンドです。郁紀の世界はまともなものが醜く、醜いものは美しく見えるようなので郁紀にとってはとても美しい世界に見えることでしょう。しかしこの開花、「沙耶と同じ生き物として上書きされる」というものなので、郁紀も同じ肉塊になるんじゃないのかな?上書きされると意識なんてなくなるっぽいし。
結局、沙耶自身は郁紀にとって美しい世界を残したかったはずなのに、沙耶の愛した郁紀は上書きされて肉塊となってしまうと思うんだけど、それでいいのかなぁ……と頭をひねったエンディングでした。
あ、ちなみにこのエンディングでは沙耶はいなくなります。そうなると郁紀にとっては沙耶の子供とも言える肉塊とひとつになれるのは嬉しかったのか……?うーーん……??
耕司エンド
郁紀の親友、耕司くんのエンドです。主人公が耕司くん、という感じになります。開花エンドでは耕司くんは開花するのを止められなかったですが、もうひとりの協力者を得て沙耶を殺すエンドです。沙耶を殺したら郁紀は生きる意味を失ってさくっと自殺します。たしかに、沙耶がいなかったらとっくの昔に死んでたって言ってたもんね。
そうして無事にケリをつけた結果、心に大きな傷を負ってしまった耕司くんは事件が終結したにも関わらず、来る日も来る日も悪夢や幻覚・幻聴に襲われる、というエンドでした。
う、うーーーん……!!なんてすっきりしないんだ……!
■ エンディング曲
ラストに流れるエンディング曲がめちゃくちゃ良くて泣きました。あ、精神病院エンドの流れで泣きました。だってまだ純愛だと思ってたから……。 こういう流れでこう来るか~!ってしみじみします。歌っているのはいとうかなこさんなのですが、元々知ってた曲だけに、感慨深くなりました。良い……。
■ まとめ
プレイ時間は約10時間。短い時間でしたがとても楽しむことが出来ました。大本の元ネタは恐らく火の鳥で、手術後に目を覚ましたら周囲の人間が人間に見えず、ロボットのことを美しい人間だと見えてしまう話。この話もとても好きでした。作中でも言及されています。
エンディング3つを迎えても全くすっきりしないし、もやもや残るものはありつつも、今までにないものを得ることができました。
シナリオ普通に楽しい、文章も嫌いじゃない、彼らがした選択もキャラクター性を考えると全部納得出来る、けどもやもやするという新境地です。新たな何かに気づけた気がします。気軽にプレイできるし、オススメ!