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ゲーム「SWAN SONG」感想

※この感想は18禁ゲームの感想です。ご注意ください。

 なんだかすごい作品らしいという噂を聞いていた「SWAN SONG」。プレイしてみてかなり良かったのですが、震災をテーマにしていてかつR18のエロゲなのでかなり人を選ぶかと思います。震災テーマが苦手な人は自衛してね!

ジャンル:アドベンチャーゲーム
プレイ時間:約15時間
媒体:PC

■ あらすじ

 公式から引用します。

その夜。 それまで通り過ぎるだけの他人だったぼくたちは大きな運命の煮えたぎる一つの釜の中に投げ込まれてしまった。

まもなく一年を終えようとする12月24日。降誕祭の前日。その山奥の都市には昼頃から雪が舞い落ちて、ホワイト・クリスマスを祝う喜びに満ちた空気が街中を覆っていた。
レストランや駅を飾るイルミネーションは、陽が落ち、人々が眠りについた後も、しずかに瞬いていた。

その幸福な眠りを乗せた大地が、突如として揺れ、そして平和な世界は一変する。

アスファルトは裂け、建物は崩れ落ち、暗闇のあちこちから恐ろしい悲鳴があがった。
ごく平穏な住宅街の光景は、瞬時にして地獄の景色となる。
その街で一人暮らしをする大学生尼子司は、混乱の中で奇跡的に一命を拾った。
廃墟のなかを彷徨ううちに自閉症の少女八坂あろえと出会う。
そして彼女と共に避難先を求めて歩きはじめた。
風が強くなり、すっかり吹雪となってしまった街。
瓦礫を踏みしめながら、司たちは辛うじて体を風雪から守ってくれる建物を見つけた。
それは古ぼけた教会で、司はひとまずその場所で休憩を取ることに決めた。
司と同じ様に地震で家を失った若者達が、やはり同じ様にして、集まってくる。

そうして、雪の降る教会で、彼らは出会った。

STORY


■ 震災テーマ

 あらすじでわかる通り、地震が発生した結果、倒壊や停電になってしまい、雪国なので常に冷えて雪が積もるためどんどん悪い方向に。助かるためになんとか避難所までたどり着くも極限状態による問題が数多く発生してしまう、という話になってます。
そしてエロゲなのでそういった意味でモブも暴走しがちです。人の心理描写もかなりリアルに書いてるので「人間って本当に醜いな、怖いな」という気持ちにもなれる。
足りない物資、連絡が取れない焦燥感、いつ死ぬかわからない不安、警戒せざるを得ない緊張感。これはねえ、苦手な人は本当に苦手だと思う。でもこういう「嫌だな~!」って気持ちにさせることができるっていうのはすごいと思います。この作家すごいぞ。


■ 群像劇

 主人公は存在しますが、色々な視点で語られるため群像劇と言っても良い気はします。主要キャラの視点はほぼ網羅してる気がする。


■ フルボイス

 主人公の声も入ったフルボイスです!やったね!この主人公の声がまた良いんですよ……何の興味もなさそうなそっけない感じがよ……。


■ ゲームシステム

 基本的には普通のエロゲ仕様ゲームシステムなのですが、一部特殊な部分が目立ちます。

演出

 演出がかなり特殊です。通常のノベルゲームのような画面下部にテキストが表示されるだけじゃなく、縦横無尽に表示されます。最初は慣れずに戸惑っていましたが、慣れてしまえば面白く見れました。

フォントが見辛い

 使われてるフォントが見辛い。特にシステムで使われている英字フォントが本当に見辛い!慣れてしまえばいいのかもしれないですが、何度見ても認識するのに時間がかかりました。参考までにconfig画面を載せておきます。

見辛いねえ!!(怒)

他不満点のシステム

 他の不満点として

  • フォントの進むスピードが私にとって馴染みづらいテンポだったこと
    (どのスピードにしても馴染まなかったので一気に表示して対応した)

  • スキップのデフォルトが強制スキップ

がありました。文章の一塊が長すぎて読み辛い時がありましたが、これはシステムと言うよりフォントの印象や、「ノベルゲームにしては長すぎて見辛い」といった印象もあった気がする。小説として読んだら全然気にならなかったと思います。






~~~~ネタバレするよ~~~~






■ キャラクター

 メインどころのキャラクターのみ紹介していきます。

尼子 司(あまこ つかさ)

 主人公のツカサくん。ピアノが得意なイケメンです。感情をほぼ出さず、主観の語り口調も何らかの余計な感情を一切悟らせず、プレイヤーである私がこいつは本当に人間なのか?と疑いながら見ていた人物。
実際は「人は醜くても素晴らしい」と断言したり、人を笑顔にしたい人だった。心情を見ても後半でしかわからないその分かりづらい性格、すごいよ!

佐々木 柚香(ささき ゆか)

 あだ名ゆかっち。教会で出会うヒロインでツカサくんにべた惚れ。幼少期に天才のツカサ君を見て挫折した人。常時ネガティブで「この世は地獄」思考。

八坂 あろえ(やさか あろえ)

 自閉症スペクトラム障害を患っているあろえちゃん。崩壊した家に下敷きになってた女性から「あろえを頼む」と任され、主人公が面倒を見ることになった少女。何を考えているのか一切わからない。

鍬形 拓馬(くわがた たくま)

 教会で出会った臆病な性格の青年。柚香に好意を抱いている。小心者の心理描写が凄すぎて、こいつが良いって言うより作者の描写がすごいと感心するキャラ。こちらも常時ネガティブで「この世は地獄」思考。


■ 各ルート

 本作はほぼバッドエンド仕様で、バッドエンドの名称もないため私が勝手に名付けているものが多々あります。また群像劇のため、死亡してるのはその時のフォーカスが当たっている人物です。
また、攻略順に書いています。

避難所にたどり着くまで

 震災が発生してからさびれた協会に到達して仲間と言えるメンバーと出会い、そこからなんとか避難所にたどり着くまで。

バッドエンド:不用心

 クワガタさん視点。教会メンバーたちが武器も無く不用心に他人(警官)に近づき、死亡したエンド。こんな非日常なことが起こって助けもない、警察として機能してないなら、こういう事があるかもしれないって思わせられたのが本当にこわい。警察官もその役職の前に人間だからな……。

避難所到着後

 避難所に到着したら安全かと思ったら不穏分子が人を殺すし逃げるし最悪な展開。大体死にます。

バッドエンド:ちゃんとしていれば

 クワガタさん視点。仲間がほぼ死に、なんとかしようと相手を追いかけ、自分が相手を殺していればこんなことにはならなかったって思ってしまうの、可哀相だな……。結局クワガタさんは何も成せずに死んでいくのも物悲しい。

バッドエンド:様子見

 逃げ出した人たちを追いかけて一旦様子を見るために待機した後に突入したら死亡したエンド。ゆかっちも死んでツカサくんも死んで、どうしようもない。
ここでようやくツカサくんがゆかっちのこと気にしてるってことが判明したので驚きました。ええ!?そんな、大事にしてたんですか!?てっきりそんなことないと思ってた!愛じゃない気がするけど、ちゃんと大事に思ってたんだ!ゆかっち良かったね!

宗教団体と接触後

 宗教団体が存在し、食料等蓄えているので視察しに行く展開に。ここでも大体死にます。

バッドエンド:竜華樹様受け入れ

 あろえちゃんと竜華樹様があまりにもそっくりな顔なので双子か姉妹なのかなーって思いながら進めてたルート。最後の「尼子様は幸福になります」ってセリフに対して、自分が幸せにしてやるってことか!?男前だな!とか思ってたけど、まあ、このあと死ぬよね……。

バッドエンド:クワガタ暴走

 クワガタ視点。ゆかっちへのレイプは好意を抱いていたのでまだ分かるんだけど、宗教団体への奇襲をかけてなんの因果でツカサくんがうっかり殺されてしまうんですか!?そしてあろえちゃんのレイプはとばっちりすぎない!?このゲームやってると「なんで?」と呟いてしまう。

バッドエンド:身勝手ルール

 宗教団体から避難所に帰ってきたら「おめーらあの時避難所にいなかったから敵ってルール作ったから!」と言われてあっさり死ぬエンド。死が軽い!いやそりゃこういう場面ではそうならざるを得ないんだけど、元仲間だって言うのに、ふわふわのシャボン玉か!?ってくらい軽い!

バッドエンド:雪に埋もれる

 恐らく眠っているうちに雪に埋もれて死亡したエンド。このゲームやってて思うのが、災害はいついかなる時も待っちゃくれないからちゃんと防災備品買い足しておこ……ってことです。あっさり死ぬんだもんな。

バッドエンド:街を出る

 学校へ行こうとする仲間を見送ったけど戻ってこず、諦めてツカサは街を出るエンド。今気づいたけどバッドエンドで唯一平和(平和?)なエンドかも。知覚できる範囲での平和。
しかしこの後大惨事が起きたんだろうな……。あーもう、理不尽!! 

ノーマルエンド

 教会でツカサくんが死ぬエンド。あろえちゃんはキリスト像を直して瓦礫に押しつぶされて死んでるし、ツカサくんは綺麗に死ぬし、ゆかっちはいつまでもぐだぐだ生き残りそうな気がする。二人は最後にお喋りするけど噛み合ってないし(中身が「人間って、人生って良いよね」VS「この世は地獄」なので)、ディスコミュニケーションすぎる!
でもツカサくん、こんなに人を笑顔にしたいと思ってたんだな……。この√はタイトルが反映されてる気がしました。「SWAN SONG」というタイトルは白鳥が最後に美しい声で鳴く伝承からのようですが、この「語り」というか、ゆかっちへの投げかけがツカサくんにとっての「美しい声」だったのかな。あろえにとっての「美しい声」は直したキリスト像だったのかな。ツカサくんにとってはそう受け取ってる気がする。

トゥルーエンド

 山向こうの人と、宗教団体の人と協力しながら避難所生活するエンド。色々な人が生きてる生存ルート。
少しは希望が持てる気もするけど、一生ここで暮らすしかなさそうな気がするし、死ぬのは時間の問題な気がするんだよな……。どうしようもないけど、いつか生きてればなんとかなるかもっていう印象を受けました。救いなんてなくて、ただ生きるしか無い。でもそれは、普段の生活と変わらないよねっていう。



■ クリアしたあと

キャラについて

 この作者が描くキャラって、第三者目線で見れば「ああこういう人いるよね」ってなる性格で、でも内面見たらなんていうかどこか変で、変なんだけどその変なことが組み込まれていても納得出来る性格で、それなのに第三者から見たら普通の人なんですよ。いや~~~すごい。この作者の世界がすごい。

 キャラ設定については、みんなどこかおかしいけどみんな取り繕っていて、取り繕わなければこんなに醜悪なんですと言っているような印象を受けました。主にクワガタとゆかっち。二人の絶望&諦観がなあ……。 逆にツカサくんは希望を持ってるっていうか、意地で生きてるって感じが凄すぎる。

世界観やメッセージ性について

 最初から最後までどのシナリオもすべて理不尽に満ち溢れてました。天災っていう理不尽、事故っていう理不尽、才能っていう理不尽、他にもたくさん。こういう状況は世の中にあると思うけど、あまりにも希望が小さすぎる。
なんというか、世の中どうしようもないけど生きるしかないだろっていうメッセージに受け取ってしまいました。何気ないことを希望にでもして意地でも生きるしかないって感じ。それを綺麗に言うと「醜くて、愚かでも、人間は素晴らしい」になるんですかね。それを思っているツカサくんもすごいし、それと真逆のゆかっちやクワガタもすごかった。
作者はどういう思いで書いたんだろう。マジでどういう思考だとこんな世界観かつこんなキャラ設定思いつくんだよ。すごいよ。





■ まとめ(ネタバレなし)

 プレイ時間は約15時間。震災をテーマにしているのでかなり重いです。クリア後は爽快感や達成感なんて微塵も感じられないけど、不思議な感覚を得られました。何年にも渡って考え続けさせるような、もしくはふとした瞬間に思い出してしまう作品って感じかな。
システム面で見辛いところもあったけど、私の心に爪痕を残した作品になってます。これを見て防災ちゃんとしなきゃって思いの一助にもなっちゃったよ。ありがとうよ! でも震災テーマが苦手な人は絶対やめた方がいいと思うのでそこは注意!

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