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ゲーム「眠れぬ羊と孤独な狼」

※この感想は18禁ゲームの感想です。ご注意ください。

 正式名称は「眠れぬ羊と孤独な狼 -A Tale of Love, and Cutthroat-」
略称「羊狼」)。あらすじを見てストーリー重視な話を期待してましたが、物足りなかったな~っていう感想です。

ジャンル:ロマンノワールADV
プレイ時間:10時間40分
媒体:PC


■ あらすじ

 公式サイトにあらすじがあったので引用します。

新宿、歌舞伎町。
慢性的な不眠に苦しむ"俺"は、ラブホテルの住み込み清掃員として働きながら、無気力な日々を送っていた。
"俺"にとって安眠を得る唯一の方法は、人を殺すこと。
そのために「暴力団の高級幹部・東儀衛子飼いの殺し屋」という裏の顔を持ち、おこぼれのように時折与えられる殺しの仕事で、なんとか眠りにありついてきた。
危うい綱渡りの日々ではあるが、それでも安定した、平穏な毎日。

そんなるある日、"俺"はデリヘル嬢・あざみと出会う。
彼女を抱くことでかつてない安眠を得た"俺"はあざみを手元に置こうと考える。
だが彼女は東儀に追われており、あざみを手に入れることはすなわち、東儀に刃向かうこと――平穏な日常の崩壊を意味していた。

「Maggot baits」の昏式龍也が描く"最悪"のラブストーリー、開幕!!

ストーリー

あらすじを見る限りでは硬派な印象を受けてましたが、別に硬派でもなんでもないやつでした。そこを求めるとちょっと違うものが出てくるかも。


■ 誰が羊で誰が狼か

 個人的にテンションが上がったのが、「眠れぬ羊」が不眠症を患っている主人公で「孤独な狼」がヒロインであるあざみのことを指していたのが好きでした。かっこい~!
ちなみに、本作では羊は生贄や被害者を意味し、狼は殺人鬼を意味します。


■ ゲームシステム

 CLOCK UPの作品は本っっ当にゲームシステムが良い。最高。
他の感想でもたくさん書いているためMaggot baitsの私の感想を繋げておきます。

Maggot baitsの時点でも凄かったのですが、この凄さを備えつつ「ルートごとのプレイ時間を記録してくれる」機能が付きました。これは全体のプレイ時間とは異なります。見てこれ、セーブポイントにプレイ時間って書かれるようになったんですよ。すごすぎない?

©CLOCKUP

今後つけてほしい機能

 個人的な希望なのですが、エロシーンのヒロインボイス音量をどうにかするシステムを作ってくれませんかCLOCK UPさん……。あのね、喘ぎ声がマジでうるさいの。普通の時は大丈夫なの。でもエロシーンの喘ぎ声って基本絶叫だし声が高くなるし聞いてると耳がキンキンしてくるの……。
これは本作だけじゃなくてCLOCK UPで共通の嫌なとこです。でもプレイした作品全部これってことは私以外のユーザーはこの絶叫を求めてるんだろうな~。耳痛くならないのかな。


■ エロシーンが多い

 かなりの頻度でエロシーンが入ります。主人公とヒロインの(一方的な)ラブラブエロシーンが多く、それ以外にも他のモブと女の子たちの強姦・スナッフ系も取り揃えてます。
エロシーンはこれでもかと言うくらい入るのでストーリー目当てで見てる私としてはちょっと辟易としました。このテキスト量に対して1エロを書いてくれという会社の依頼が透けて見えるというか、義務エロシーンに見えてしまったせいもある。
でもエロゲというジャンルとしては良いんじゃないでしょうか。エロゲをエロ目的で買ったことがないからわらかないけど。


■ 群像劇っぽい

 結構な頻度で主観が変わります。主人公はいるけど、色々な人の主観で語りたい感じなのかな? ただ、主観が変わりすぎるせいで主人公に対する思い入れというものはあまり生まれません。


■ グロ・スカトロ表現について

 スカトロについては主人公も失禁・脱糞しますが、しつこく描写されることはなかったのでスカトロ緩和表現を入れておけばイラストは黒塗りで隠してくれます。スカトロだけならそれで問題なし。

 ただグロは緩和していてもがっつりテキストで描写されるので、苦手な人は本当にやめた方がいい。

あ、でも、主人公がグロ・スカトロ表現を仕掛ける側ではありません。別人がやったことだったり、どちらかと言うと主人公はそれをされる側です。主人公の脱糞は恐怖に陥ってしてたから、されたっていうか自らした感じだけど。


■ バグがちょっとある

 現時点で最新であるパッチVer1.02適用済みですが、バグに遭遇しました。文章が「2」しか表示されないバグが一番愉快だったな。他は読み上げてる音声とテキストが一部異なってたりしたくらい。テキストの入れ替えミスかなにかなのかな。





~~~~~ネタバレするよ~~~~~






■ シナリオ

 ほぼあらすじで引用した通りです。あ、デリヘル嬢のあざみが殺人鬼であることは語ってないか。
誰かに殺されることをいつも不安に思って不眠になってしまった殺し屋の主人公にとってはあざみは格上の殺人鬼であり、そのあざみを絶頂させることで「性的に殺せた」と認識し、主人公は安眠することができたので手放せなくなっちゃった、どうしよう~!って話です。そうはならんやろ感。
殺人鬼あざみは頭部に弾丸が埋まっており、その傷のせいで凄まじい身体能力と殺人衝動が生まれています。この世界観で最強設定。

■ 各ルート

 作中では選択肢もありますが、その意味はほぼありません。なにせ最初の一発目の選択肢で羊ルートか狼ルートかが決まる程度なので。ほぼ固定ルートと言っても差し支えないです。
では、クリア順に書いていきます。

眠れぬ羊ルート

 飼い主である東儀と秘密を共有し、その秘密をばら撒いているやつらを始末する依頼を受けるルート。依頼をこなしていったらなぜか東儀の配下に知り合いの少女が攫われたので助けに行った結果、情報を操って漁夫の利を得た東儀の政敵・御船が組の天下を取る。主人公とあざみは南国の島に追いやられ、いつあざみが自身に牙をむくかわからないけどそれまでは一緒に過ごすか……っていうある意味平和エンド。

知り合いの娘は元中国マフィアの娘で、ヤクザの抗争に使わうために強姦された後に撲殺されるし、東儀の秘密の正体であるスナッフビデオの出演者・ダルマ女は東儀に会うために色々してきたのに簡単に殺されてるし、あざみの行きつく先は誰彼構わず殺す殺人鬼だろうし、組の天下を取った御船が一番ハッピーなエンドだったな~と思います。

孤独な狼ルート

 東儀の秘密を共有せず、依頼を断るルート。そしてあざみに主軸を置いたルートでもあります。

あざみは幼い時に事故に遭い、頭部に弾丸を受けることになった。その後力が溢れそうになっていたため抑えていたが、強姦されたことによって強姦相手を殺し、自分が「格上の存在」であることを自覚します。そこからが殺人鬼人生のスタート。そしてこのルートのラスボスはあざみの兄でもある刑事でした。兄の目的はあざみに協力し、「正しい殺人」を行わせること。これ結構面白かったな。
本ルートでは外国の雪国に逃げるか~って考えて終わるエンドなのですが、あざみの中で明確に区分けがある「殺しちゃダメな人」の線がなくなりそう=好きな人でも家族でも殺すということが明確になったルートでもあるため、やはりこちらも行きつく先はバッドエンドな気がします。

眠れぬ羊と孤独な狼ルート

 羊・狼ルートが終わるとタイトル画面に「もう一つの結末を追う」という選択肢が出てきます。こ、これはフラテルニテで見たことがあるやつ!

満を持してプレイしたところ、あざみという殺人鬼に影響された国の掃除屋である恩田が大量殺人を引き起こし、最終的に逃げた先であざみが殺人鬼として覚醒し、主人公と戦うルートでした。
この恩田、作中でもモブとして出てきていたのですが、殺人鬼あざみに影響されて自由に殺したいと思ったせいで暴走し、本ルートの凄惨たる事件が起きたようなのです。本編中に一切その要素がなかったので全く想像つかず、それが面白かったです。

しかし、このルートで選択できるのは、主人公が死ぬか、ヒロインが死ぬか、二人とも死ぬかの3択。個人的には二人とも死ぬのが結構好きだったし、主人公が死ぬのも結構好きでした。ヒロインが死ぬのはまあ普通。
けどその後の話で正規ルートはヒロインが死ぬものだったと判明。
主人公はヒロインを殺すことができ、不眠も解消され、殺し屋業をやらずに済むようになったというエンディングです。う、うーーーん。


■ いろいろ

なぜその選択で話が変わってしまうのか

 飼い主である東儀の依頼を断った結果、あざみメインの話になるんだったら主人公の心情や行動をもっと変えてほしいんですよ。「不眠にはあざみが必要だな」と思ってるだけなら全ルート一緒なので、なんでその選択でこの話に変わってしまうんだ?というのがわからなかった。

 羊狼ルートも「もう一つの結末」というボタンで見ることができますが「この条件だったらこの話になります」っていう話の展開の仕方なので、いっそ選択肢やルート分岐をなくして最初からプレイできる順番を決めてしまった方がいいのではと思ってしまいました。今の状態だとゲーム性があるように見えて無い。中途半端。

「誰か」に依存してる話

 あざみは殺人鬼ではなく女として自身を求める主人公に依存していたし、あざみ兄は妹に依存していたし、悪徳刑事は仇に依存していたし、元中国マフィアの娘は父親に依存していたし、ダルマ女は元恋人に依存していたし、情報屋はダルマ女に依存していた。本作は、生きるために誰かに依存する話なんだなと思いました。でもそれなら、みんなもっと生き汚く足掻いてくれても良かったのになぁ。あっさり死ぬもんな。

結局「あんた」と呼び掛けてたのはなんだったのか

 主人公は「あんた」と誰かに呼びかけるような語り口調をしています。しかしなんでなのか最後まで明かされない。物語の終わりでは特に呼びかけもしないので、不眠が要因のイマジナリーフレンドに語り掛けてたってこと……?くらいしか推測できない。全然わからん。

色々物足りない

 元中国マフィアの娘が父親に対して恋愛的に好意を抱いてそうなのも、ダルマ女の脅威っぷりも、東儀と主人公が同じ思いを抱いていたことも、東儀の強さも全然生かし切れてなかったと思うんですよ。上で書いた「あんた」呼びもそうなんですけど、描写しないならなんでその設定にしたの?必要だったの?って考えがチラついてしまったので惜しいな~って思っちゃいました。

個人的には東儀にそんな凄さを感じなかったのが本当に残念。政敵の御船の方が暗躍っぷりを描写されてたので強そうに感じたな。東儀は大抵やられてるところしか見てないので……。もうちょっと色々見せてほしかったな~って気持ちになりました。





■ まとめ(ネタバレなし)

 プレイ時間は10時間40分。がっつり現代、がっつり歌舞伎町の話、殺し屋業の男とそれにまつわるヤクザや殺人鬼の話だったのでテーマ的には好きだったけど、ボリューム不足だと思ってしまいました。エロが多すぎたな。エロゲなんで当たり前なんだけど。
Maggot baitsの方が好みだったな~。残念。

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