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ゲーム「Ever17」感想

 設定も何も知らず、面白いという噂をどこかで聞いて購入していた本作。ようやくクリアしたので感想を書いていきます。最初にざっくり結論を書いておくと、「謎はいくつか残ってるけど、伏線回収が素晴らしいゲームだったな!楽しかった!」という感想です。
本作は真相ルートのネタバレを食らうと魅力が半減するため、プレイ予定の方はネタバレを見ずにプレイすることを推奨します。

ジャンル:恋愛アドベンチャーゲーム
プレイ時間:約35時間
媒体:PC


■ あらすじ

 あらすじに入る前に一応補足しておくと、本作の制作会社は倒産しているので別会社が運営しているサイトでしか公式情報を得られません。そのため、著作権表示は制作会社のKIDを利用していますが、引用元となるサイトは別会社のサイトを利用しています。

そしてあらすじとして一番近かったのが SUCCESSのSuper Life 2000 シリーズのサイトでしたので、こちらから引用します。

西暦2017年5月1日12時21分。水深51mの海中に浮かぶ海洋テーマパークLeMU(レミュウ)で事故が発生する。生存者はわずか7人。だが彼らはLeMU(レミュウ)内に閉じ込められてしまった。空気と食料、水が徐々に減っていくなか、さらに深海に生息する未知のウイルスへの感染と隔壁圧壊の危機が迫る。

 この閉ざされた空間のなか、生き残った7人は脱出への道を探り続ける。彼らは共に助けあいながら次々と危機を乗り越え、次第に強い絆で結ばれていく。だがそれを嘲笑うように死へのタイムリミットが迫っていた。

 やがて極限状態が迫る中、この海洋事故の情報は少しずつ焦点を結び、真相が明らかになっていく。

 生存への渇望と死への恐怖が渦巻く海中の地獄で、あなたは脱出することができるのか?最期のときは次第に近づきつつあった・・・。

「ストーリー」

生き残るために施設から脱出するお話となってます。


■ 主人公は複数

 大学生の倉成 武(くらなり たけし)と、記憶喪失の少年、どちらかを選んで視点を変えてストーリーを進めていきます。そのため、主人公は複数となってます。


■ 謎、伏線回収がすごい

 本作は謎や追加される情報がとてつもなく多いです。本作は恋愛アドベンチャーなのでヒロインたちと仲良くなって話が進んでいくのですが、その中でも謎が解明するどころかどんどん謎が深まっていく始末。なにがなにやらわかりません。しかしその謎を、伏線、8割方一気に回収していくシーンがとても気持ち良い。この部分に本作の魅力が詰まっていると言っても過言ではありません。


■ ゲームシステム

 昨今のオシャレUIではなく、"ガチ"の昔のPCゲームという感じです。PC版が発売されたのは2015年のはずなのに……なぜ……?
お金をかけたくなかったのか、2015年に発売されたのも関わらずバックログ機能が存在していません。セーブデータ、鑑賞モードなどは普通にあります。
ただしゲーム画面から別のウィンドウに切り替えると音は止まり、再度ゲーム画面に戻るとBGMは最初から鳴り、音声は切り替えていた分だけ飛びます。
2015年に発売したとは思えないと体たらくなのでシステム面は期待しない方が良いです。





~~~~~ネタバレするよ~~~~~





■ 攻略対象と各エンディングについて

 本作は武視点では攻略対象が2人、少年視点では攻略対象が2人、最後に1人の合計5人となってます。エンディングはグッドエンドとバッドエンドのみのようですが、少年視点ではエピローグあり、武視点ではエピローグなしです。
基本のルートは一緒で、道中にキャラとのイベントがあり、そこからエンディングが異なっていくという形でした。
各ルートは攻略順に書いてます。

武視点

 武の視点から、一緒に閉じ込められたつぐみ・空・少年・優・少年・ココと数日間過ごす話。

  • つぐみ・空編バッドエンド
    つぐみにも空にもアプローチをかけたら迎えてしまったエンド。最後は優と仲良くウィルスに感染して死亡します。
    そして終わった後に「生体反応:1」という日本語と、「まだ終わってない。無限のループにいる」的な英文が表示されます。以降、特定のエンディングを迎えるまですべて表示されるものなのですが、最初はそうとは知らずに生体反応:1にも律儀に反応してしまった思い出。最初はつぐみが生きているのかなと思っていました。これが示しているのはとある出来事だけだったんだよな……。

武視点空編

 閉じ込められた海洋テーマパークLeMU(レミュウ)の管理を司っているAIの空。彼女に簡単な人間の行動・感情講座をしてから、空の中で何かが変化し、AIが人間に恋をしてしまう話。
このルートは哲学的な話が多く、クローンについてや自己認識について、次元の知覚の話など、とても興味深いものが多かったので結構好きなルートです。
でも本作の武視点の正規ルートがつぐみのせいか、つぐみのイベントも強制出現のため、つぐみに心を残してる描写が道中多いのがちょっと……。プレイヤーが武を無理やり捻じ曲げているとも取れるけれど。

  • 空編グッドエンド
    救助が来て脱出しようとしていたけどLeMU(レミュウ)の中の出来事は同期されない=マスターデータの空は今接している空ではない、ということに気付き、どうにかしようとしたけど二人で水没したエンディング。
    本ルートで言及されたピグマリオンのように、幻の女性を求め、妄想の中でだとしても、たしかに武が空に触れている表現は美しかったです。
    空というより、武の最後の心理表現がとても美しい話だったな。
    そしてここでも「生体反応:1」と出てくるので、プレイ当時は武の生存確定だと喜んでしまってたのですが、今から考えるとそんなことはないのが確定してしまってる訳です。つまりここでの武は死んだ。悲しいね。

武視点つぐみ編

 他者に攻撃的で誰も信じようとしないつぐみ。空編でもつぐみを気にかけていましたが、イベントをこなすとより顕著になりました。
最初は全く好きなキャラではなかったですし、いつのまにか態度を軟化させてるのでついていけなかったのですが、武が嬉しそうなのでいいか……と思ったルートです。
つぐみの実態はとあるウィルスのせいで不老不死になってしまい、その体質に目をつけた組織が実験をしてひどい目に遭っていた、ということなのですが、その設定を持ってくるからには本当に長い間嬲られてきたのだろうと思ったら7年だったので拍子抜けしました。結構短い。

  • つぐみグッドエンド
    潜水艦ポッドに二人で乗り込んだけど浮力が少し足らず、つぐみのために海中に出てつぐみを救う話。武にとってはつぐみは本当に大切なんだなと伝わりますが、個人的にはそれより他ルートと同じく「生体反応:1」が出たことによって色々な推測が否定されてしまったので頭が混乱しっぱなしでした。

少年視点

 記憶喪失の少年の視点から、一緒に閉じ込められた武・つぐみ・空・優・沙羅と数日間過ごす話。
本来いたはずのココがいなくなっていて、本来いないはずの沙羅が追加されています。もう混乱しっぱなし。

少年視点優編

 少年視点でプレイすると優が全然可愛くなくて泣きました。
優が武視点と同じく父親の痕跡を探してこの施設に潜り込んだところまでは同じなのですが、パスワード解析をしている最中に少年が手伝いを申し出てそれを邪険にするシーンが嫌すぎる。
優がパスワードに関連する事柄を一瞬見た。ただし覚えてない。印刷はした、と言った時、少年が「大事なことなら一瞬でも見たのなら何か覚えてないか」と話します。少年は優の助けになろうと頑張って情報を拾おうとしてるわけです。すると優はこう言います。「覚えてない。でも私は自分のことは覚えてる。大事なことを覚えてないのはどっち?」
せ、性格がクソすぎる……。
記憶喪失の少年に対して記憶喪失をあげつらうこのヤバさ。大嫌いキャラに格下げされてしまいました。しかもこのあとパスワードが分かるのですが、直前のセリフに対して謝罪なし。最悪。
でも少年は優に夢中なので、プレイヤーとしては気持ちが全くわからなかった。こいつ少年の否定しかしていないが……どこがいいんだ……。

  • 優編バッドエンド
    救助が来たにも関わらず事故があって優と二人で閉じ込められて死亡するエンド。最後まで助からない、優を助けられない現実を否定していたけど、少年が見た真っ白な視界はなんだったんだろう。

  • 優編グッドエンド
    初めて明確に生存を示されてほっとしつつ、少年がめちゃくちゃロマンティックに優を口説いてたので驚きました。武視点の少年と性格が違いすぎる。
    少年の記憶が戻る気配はないけど、前向きになれそうで良かったねと思えたエンド。

少年視点沙羅ルート

 ココの代わりのように存在する少女。優の後輩で、学校の行事の一環で来訪した少女。実は少年の妹だということが判明します。そしてライプリヒという組織に監視され、実験をされていました。

  • 沙羅バッドエンド
    少年が沙羅に関するいくつかの記憶を取り戻し、迎えに来ると約束した妹と守れずに一緒に死ぬエンド。後悔しながら死ぬエンドは良いものだ。

  • 沙羅グッドエンド
    少年と沙羅は二人でなんとか海上にたどり着き、組織から逃げることを決意する話。っかぁ~~!!ニコニコハッピーエンド!最高!兄として役目を全うしてくれ!!
    恋愛ではなく家族愛で少年が頼もしくなるのがすごく良かった。良かったけどいつもの「まだ終わってませーん!」の文章がすべての余韻をぶち壊す。

ココ編

 武視点を進んでいったところ、少年視点を交差し、謎が深まり、更に交差し、深まり、どんどん謎が追加されていくルート。ネットによると少年視点からでもルートに入れるとのこと。
このルートは新たなヒントが出てくるたびにわからなくなっていて、感想ログを見返すと正しい推測もあったりしたのですが、すべてに「わからない」と入れているくらいの混乱がありました。
少年視点に切り替わり、少年が鏡を見た時、今までの常識が覆されます。我々が知っている少年の顔ではないし、少年自身も「違う」と主張している。さらに深まる謎。解ききれない謎。意図がわからない謎。わかったと思っても結局わからない。わからないことだらけです。
しかし、ここの伏線回収が本当に見事だった。
「すべてはブリックヴィンケルが知っている」。作中でココがそう言います。そう、ブリックヴィンケルとは我々プレイヤーのことでした。
作中で「n次元を知覚するにはn+1次元へと脱却しなければならない」という主張があります。3次元+時間。それがつまり4次元である。ここで言っているのは、4次元存在は時間を移動できる、ということです。誰かの視点を通して時間を移動し、観察しているもの。それは誰か?我々プレイヤーでした。

  • ココ編グッドエンド
    ストーリー内でブリックヴィンケルとしての力、時間の移動を実施し、語りかけることで未来を変えようとする。つぐみ編グッドエンドの海に身を投げた武を救ったことによりIBF内に存在していたココを発見します。ここでようやく、各ルートに存在した「生存反応:1」はココのことだとわかるわけです。
    さらに二人を救うべく過去改変を行い、間違った未来へと進んでしまい、即時にもとに修正。そこから「現在」を変えないよう、タイムパラドックスが起きないように怒涛の過去改変。
    怒涛の流れでしたが晴れて大団円。素晴らしいハッピーエンドでした。伏線の8割ほどは回収され、見事に描写されたと言っていいでしょう。エピローグもみんな幸せそうでよかったなぁ。


最後までわからなかったこと

  • 「生体反応:1」
    LeMU(レミュウ)のスキャンシステムがはじき出すこの数値。終わってみるとこれは「ココが館内に取り残されている」ということを指し示すのだと思うのですが、LeMU(レミュウ)の地下施設であるIBFにココは取り残されています。けどIBFには生体反応スキャンをすることはできないはずなんですよ。だって別施設だし権限ないし。となると、これは……なに?イメージ映像??

  • 「無限のループの中にいる」という英文
    正確にはループではありませんでした。これもミスリードの1つだと思いますが、じゃあこのメッセージを発してたのは誰か?ということにもなる。うーんわからん!

  • 生体反応スキャンシステムの誤作動
    初期シナリオでは結局「6」に落ち着きますが、本来なら「5」が正しい。しかし数値は5~7を示した。これがなんなのかがわからない。

  • 偏在するココはなんだったのか
    ココは別世界の人とおしゃべりできる……別の時間の人たちと会話することができる能力を持ってました。幻想つきで。これが超能力ということですが、4次元存在を視認できる力って何!?ってなってしまった。わからん。

  • 武はなぜ記憶を失わないのか
    少年が記憶を失ったのはブリックヴィンケル(プレイヤー)に視点を奪われたせい。少年視点では納得できる。しかし、武視点の少年の視点は奪ってないのに記憶喪失。でも武視点の武はなんともない。なんで……?

ちょっと納得いかないこと

 プレイヤーに語りかける系はいくつかプレイしたことがありますし、かなり好きなジャンルですが、どれもこれもプレイヤーを男性に限定してきました。そしてここでもそう!嫌だー!
「彼」って、誰を見てるんだお前たち……。





■ まとめ(ネタバレなし)

 正確な時間は不明ですが、プレイ時間は恐らく35時間ほど。
システムが微妙でしたが、それを補うストーリー。ミスリードも多く、かなり複雑で悩まされますがそこも楽しかったです。そしてなんと言っても伏線回収の畳み掛けの熱量がすごい。本当に見事でした!最終的に大団円になってくれてほっとしました。
ただ、最後までわからなかった謎はいくつかあります。そこは残念だけど、それでも楽しめました。面白かった!

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