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小説【酒より君】-アドボを添えて-


夏の暑さが舞い戻ってきたからか、執筆作業に身が入らない。

「こんなときは肉を食おう」

確か友人から教わった料理に、さっぱりとした肉料理があったはずだ。

「アドボとかいったかな」

台所に行き材料を確認する。
にんにく、ローリエ、豚バラブロック、卵、酢に醤油、砂糖。

「しまった。手羽先が無い」

まぁ、無くても美味しいから今日は入れなくても構わないか。
私は材料を並べ、まずはゆで卵を作る湯を沸かす。
その間に、にんにくの皮をむいて包丁の腹で潰す。
豚バラブロックは大きめに切り、鍋にしきつめる。
その上に先程のにんにくとローリエを入れ、水、砂糖、醤油、酒、塩少々を加え火にかける。

卵を茹でることも忘れずに。

肉を入れた鍋が煮立ち始めたら酢を加え、あくを取りながら水分を飛ばしては水と少量の酢を加える。

三回くらい同じことをしたら、ゆで卵を加え弱火で煮込む。

「あとはキュウリとトマトをツナマヨであえるか」

副菜を何品か用意していると、玄関から鍵を開ける音が聞こえた。

「ただいまー」

私は鍋の火を止め、玄関に向かった。
そこにはこの間より元気な愛しい妻が、何やら重そうな荷物を大事に抱えていた。

「おかえり。それはなんだい?」

抱き締めるのは私だけにしてほしいという言葉を飲み込み、妻が持っている荷物を指さした。

「これはなかなか手に入らない日本酒なの! 帰りに酒屋さんに寄ったらたまたま置いてあったのよ! 買うしかないと思って!」

よっぽど飲みたかった日本酒だったのだろう。
愛しい妻は仕事から帰ってきたばかりだというのに、心を躍らせながらはしゃいでいる。

「先にお風呂に入って、ゆっくり味わうわ!」
「しっかり体の疲れをとるんだよ? 飲みたいからって疎かにしちゃダメだからね」
「はーい」

私は妻から日本酒を受け取り、台所に戻る。
あとは盛り付けと机に運ぶだけのおかずを見て、私は自然と口角が上がった。

「こっちの料理も喜んでくれると良いなあ」

先程の、可愛くはしゃぐ妻を思い出しながら、私は酒の肴をもう一品作るために冷蔵庫を開けた。



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