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Xデザイン学校 2024年度マスターコース振り返り #4&5(ユーザーリサーチ)

Xデザイン学校マスターコース、前回(第4回)と今回(第5回)は「ユーザーリサーチ」がテーマだった。8月上旬には市ヶ谷(じゃなかった新橋)で行動観察ワークショップにも取り組んだのだけど、今回のnoteはあれから1ヶ月間のリフレクションとしてまとめてみることにした。

「最初の顧客」を見つける

ユーザーリサーチって、Startup Weekendでやってた「顧客開発」のアプローチに似ているなぁと思った。

Startup Weekendでは、初日にビジョンを持った人たちに参加者が集まりチームが作られ、2日目には街に出ていろんな人に声をかけ話を聞き、そして3日目にはMVP(Minimal Viable Product)を発表するという、超高速なプロセスを経る。このうち2日目でチームが見つけなければいけないのが「最初の顧客」であり、これは詰まるところチームのビジネス・ビジョンに他人事と思えず共感してくれそうな人たちなのである。ここで大事なのが、チームのビジネス・ビジョンがしっかり言語化できないと、その志を真っ先に支持してくれる「最初の顧客」を見つけることができないということだった。

Startup Weekendのことを思い出すと、一番理想なのは、ユーザーリサーチ前からチームのビジネス・ビジョンがしっかり言語化できている状態になっていることだと思う。2年前のベーシックコースでも浅野先生が指摘していたのは、「インタビュイーを選ぶ時点でビジネスモデルは確定しているはずであり、逆にインタビュイーからビジネスモデルを考えるとユーザーに寄り過ぎたビジネスになりスケールしない」ということだった。

ところが一方でビジネス・ビジョンが最初から明確な状態になってることなんて、そうそうない。Startup Weekendでもアーリーアダプターになりうるユーザー候補に声をかけてみた結果、自分たちのビジネスやビジョンが曖昧だったことに気付かされ、その過程でビジョンのメッセージに精度が上がっていく、なんてシーンに出会う。

ビジョン、ビジネス、ユーザー、この3点のリサーチ(トライアンギュレーション)は、ある意味でデザイン・スクイグルのように行ったり来たりするプロセスを楽しみながら模索しあっていくぐらいでいいのかもしれないなと、山崎先生の講義を通して感じた。ただし、インタビュイーを曖昧に選定しちゃったがばかりにその情報にバイアスがかかりすぎてビジネスモデルのベクトルができていくみたいなのは危険なので、そこだけは気をつけながら。

「日々」探究する姿勢を大事にする

9月11–12日に東京で開かれた「MarkeZine Day」というイベントを聴講しに行ったのだけど、そこで面白かったセッションの一つにクラシエの「くらしの夢中観測所」の話があった。

クラシエはスローガンとして「夢中になれる明日」を掲げており、このスローガンを実現する一歩として、生活者のくらしとじっくり向き合う、人の生活や習慣にもっと詳しくなり、顧客の価値を見つけるチームを立ち上げたそうだ。

この「くらしの夢中観測所」では「夢中」をテーマに、とにかく人に会っているのだという。街に出て人に突然声をかけるフィールドワークを行ったり、喫茶ランドリーなど人が集う面白そうな拠点に自ら出かけて話を聞いたり、「夢中大喜利」といって人に夢中を語ってもらう小イベントを開いたり、話を聞く時間も短くてOK、バスの車内で出会った人に10分話をするのもOKという風に、とにかくいろんな方法で記録を集めながら、毎月1回インサイトを抽出するワークショップを開いているとか。

これってまさにユーザーリサーチそのものだなぁと思った。第4回の講義終了後、ビジョンに基づいたリサーチクエスチョンを立て、各チームのメンバーでインタビューを行い、記録を集めることになったのだけど、自分は「インタビューをする」ことに意識が向きすぎていたことに気づき、反省した。冒頭のとおり「最初の顧客」に出会うことを目指すのだけど、別に話を聞く相手が必ずしも最初の顧客になるわけではない。狙っても外れることだってあるし、事実自分がインタビューした中の一人も全然想定と違っていた。でも違っていて当然なのである。大事なのは「何人にインタビューしなければいけない」ではなくて、「とにかく(リサーチクエスチョンに対して)人に興味を持つこと」だった。

もっと人に興味を持つ、普段の生活でも問いを持ち続けて、気になったときに自由に近くの人に尋ねられる、そういうユーザーリサーチを心がけていくことが、リサーチャーとして大事なのだなぁと気付かされた。自分は一人旅をするとき勝手にテーマを決めてひとりフィールドワーク的なことをやっているのだけど、ああいう姿勢をもっと公私混同させていくぐらいでいいのかもしれない。

矛盾を大切にする、二律両立

講義のおわり、山崎先生から「矛盾を大切にする」という言葉があった。融合化しやすい情報ばかりに安易に目がいってしまうと、どこにでもあるアイデアにしか帰結しないのだと。

矛盾という点では、先述のMarkeZine Dayでも、トリドール社では「二律両立」という考え方を強みの源泉にしているという話を聴いた。トレードオフではなく、トレードオンこそが、独自の市場創造(ブルーオーシャン)と構造的優位の構築につながる。チェーン展開では非効率な店内製麺を頑なに続けているのも、顧客が丸亀製麺に求める本質的価値がそこにあるからだという。

相矛盾するポイントこそイノベーションのヒントがあるのだというが、これこそ「ビジョン・ビジネス・ヒューマン、それぞれの視点からのリフレーミング」なのではないかと思った。次回(第6回)はこの辺がテーマになるのだろうけど、そうした矛盾の出会いを楽しんでいくのも、ビジネスデザインとしてすごく大事なのだなと思った。