Lovableなサービスとは?という禅問答
Lovable = 愛される
Lovableなサービスやモノと言われてどんなものを思いつくか。
先日、会社のイベントでメンバーそれぞれがLovableなサービスやモノをプレゼンする、という場があった。(自社サービスを日本で最もLovableなサービスにすることを目標と決めたため、そもそもLovableって?を考えるための試み。。)
↓いつの間にかSlackで作られていた絵文字。(個人的にはラヴァいの方が良いと思う。)
人によって定義は様々で、自分が住む土地をプレゼンするメンバーもいれば、自分の好きなキャラクター、お酒やカラオケというメンバーもいた。
グロースや収益を目標にすれば定量的に測定が可能なので、メンバーの目線も揃いやすい。一方で、Lovableなサービスを目指すといった場合、考え方次第で目指すものがブレてしまう可能性がある。
Lovableなサービスとはどんなものなのか?
どういった状態になれば、それはLovableなサービスと言えるのか?
を考えてみる。
Lovableを測る指標
Lovable度を定量的に測定できれば話は早い。
近いもので思い浮かぶのは、Bain & CompanyのNPS(Net Promoter Score)。
下記にあるように、顧客ロイヤリティを定量的に測定することができる。単純な満足度調査と比較して、収益との関連性もあると言われている。
"A method of measuring customers’ loyalty by sorting them into promoters, passives and detractors."
一方で、サブスクサービスを提供する上で最も重要とも言える指標はChurn Rate(解約率)だが、(特にSaaSの場合)NPSはサブスクのChurnとは必ずしも相関しないと言われている。口コミ発生率や購入金額と相関があるようだ。
(最近Bainが日本で行ったサブスクビジネスにおけるNPS調査によると、想定契約期間や年間紹介人数に差が見られたようなので、toCサービスは相関しやすいのかもしれない。ただ、サブスクの場合、タイミングによって同じユーザーでもNPSの回答が大きく異なる。もちろん推奨者の時点でのChurnは低くなりそうだが、その1ヶ月後も推奨者でいてくれる保証はない。)
NPSのそもそもの質問が、”サービスを人に勧めるか?”であるため、”今後もサービスを使い続けるかどうか?”とは直接関係がない。NPSはその質問形式から、オーガニックでのバイラルグロースのポテンシャルを測るのには適していると言える。
そういった点で、NPSだけでLovable度を測定できているとは言えなそうだ。もちろん定期的に測定することでサービスの健康診断的には活用する事はできると思う。(そもそも10点満点中9点とか10点を付けにくい日本人には向かない指標何じゃないかという議論もあるけれど、継続的に測定し続ける意味は大きいと考えている。)
自分にとってLovableなサービス
Lovableの定量化は簡単そうではないため、自分自身にとってLovableなサービスはどんなサービスかを考えてみることにした。
いろいろ考えた結果、この10年くらいで自分にとって最もLovableなサービスは下記のグラフに示したサービスだった。
(グラフ内金額は「年間利用額」、回数は「年間利用回数」)
最初にこのサービスを利用したのは社会人になりたての2006年。そこから毎年欠かさず10年以上利用している。2013年には年間利用回数100回超。2018年には392回と、1日1回以上利用して、年間利用額は100万円を超えている。
多少の波はあるものの、
・12年という長期に渡って利用をし続けている
・利用頻度、額が増加している
という時点で、自分にとってとてもLovableなサービスと言える。
思い返しても利用していて嫌な気分になった憶えはあまりないし、多少嫌なことがあったとしても使い続ける。一方で、サービスの良さに毎回驚かされているわけではない。もはや当たり前のように利用していて、生活の一部になっている。(ちなみにこのサービスのNPSに回答した憶えはない。)
webサービスオタクなので、年に数回”このサービスめちゃくちゃ良い!”というものに出会うのだけど、翌年もそのサービスを使っていることは意外と少ない。
パパのようなサービス
先日、とあるイベントで登壇者の方が、家庭でいうパパのようなサービスとかブランディングってあるよね、という話をしていた。
どう言うことかというと、、
普段は存在していて当たり前なので、感謝やありがたみはあまり意識しないけれど、病気になったりすると急に不安になり、ありがたさがわかるということ。
(希望も込めて)パパが家族から愛されているとすると、存在していて当たり前で、なくなると困ってしまうようなサービスがLovableなサービスなんじゃないかと。
上記のグラフに示したサービスも、まさに”存在していて当たり前で、なくなってしまうと困るサービス”と言える。他にも類似サービスがあるが、代替はきかないし、他のサービスしかたなく使うとストレスを感じてしまう。
Like(好き)レベルのサービスだと、一時的に盛り上がることはあっても、熱が冷めて離れてしまうユーザーも多く存在してしまうのではないか。
年に数回見つける”このサービスめちゃくちゃ良い!”というサービスはLikeレベルなんだと思う。
そのサービスがなくなるとどのくらい残念か?
Lovableなサービスがどんなものかわかってきたが、先行指標的に知ることは可能なのか?
NPSよりもSean Ellisが提唱しているMust-Have Surveyの方がしっくり来る。Product/Market fitを検証するときに活用できる指標で、”このサービスをもう使えなくなるとどのくらいがっかりする?”という質問に対して、”非常に残念”という回答が40%以上だった場合に合格というテスト。
How would you feel if you could no longer use our product?
- Very disappointed 40%
- Somewhat disappointed
- Not disappointed (it really isn’t that useful)
確かに、ダイレクトに”このサービスをもう使えなくなるとどのくらいがっかりする?”と聞くことである程度のLovable度の先行指標は得られそうだ。ただ、そもそもLovable度が低い人は回答しない、回答を得る状況等によって評価がブレる、(質問内容が突飛になるため)シード期は良いがレイターになると適さない、などの問題もあり、Must-Have Surveyが高いサービス=Lovableサービスと言えるか、というと不安も残る。
結局どう測ればよいのか??
NPSもMust-Have SurveyもLovable度の一つの指標にはなりそうだが、どちらも完璧とは言えなそうだ。
さんざん考えた挙げ句、このグラフ(再掲)のように、”継続期間”や”利用頻度”の増加率、というような事業の結果としての指標を追うのが遠回りのようで一番早いのではないかと考えるようになった。
そもそも愛されるためにいろいろ計算をしたり、その度合を測定しようとしたり、近道を探すっていうのがイケていないのかもしれない。顧客に向き合い、地道にサービス改善を繰り返していくしかない。
そういえばあの会社も徹底的な顧客第一志向で知られており、「地球上で最も顧客中心な会社」を目指していて、結果としてLovableなサービスを実現しているんだった。
Jeff Bezosの言葉を見直して今日も顧客に向き合おう。
"The most important single thing is to focus obsessively on the customer. Our goal is to be earth’s most customer-centric company.”
"We see our customers as invited guests to a party, and we are the hosts. It's our job every day to make every important aspect of the customer experience a little bit better."
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