春とあおもり
春が来た。
春が来たようだ。
私はそこにいない。
春は私にとって、そのあおもりにとって、
とても大事な季節だ。
とてもとても大事な季節なのである。
短い夏を終わり、艶やかな秋を通り過ぎ、まっ白なおもい冬が来る。
あの頃は、冬になると仕事の心配をしていた。
あの頃は、冬になると家の具合を心配していた。
出稼ぎに出る友もいた。
暖房費や燃料費なんかを気にしていた。
春は来るのだろうか。
本当に春は来るのだろうか。
青黒い空の下、家根の上で星を眺めながら諦めていた。
有り余る雪と、先の見えない未來。
失敗の過去と渇愛の日々。
雪はゆっくりと静かにのしかかり、
静かに重く心のまぶたをふさぐ。
春は来るのだろうか。
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