裏勝りな「よせぎれ屏風」
以前にすみの会という作品展出展のために、母、祖母、親戚の思い出の着物の裂を寄せ集めて屏風を作りました。祖母の金茶地格子黄八丈、紫根地葵文型染め昼夜帯、母の墨地格子秩父銘仙など6種の裂を和紙で裏打ちして格子状の桟に貼った「よせぎれ屏風」。
「すみの会」に出展しました。|はぜの木
屏風の裏は裏打ちした和紙と白木の桟のままで化粧仕上げをしておらず完成品ではない見栄えなのですが、いつかしっくりくるアイデアが生まれたら仕上げましょう〜、と思っていました。
そのアイデアが突然降ってきました・・・。
友人が10年くらい前に海外向けにセット販売していた箔押しの紙のサンプルを送ってくれました。問屋さんから仕入れた箱をそのまま保存しておいたもので、糸状に加工して京都西陣の帯に織り込まれる紙のサンプルのようです。箔押しとは、紙に加飾して高級感や特別感を演出する印刷方法とのこと。様々な紙のサンプルを見ていたら、「よせぎれ屏風」の裏に貼ることを思い立ちました。なるべく無駄にしないようにレイアウトを考え作業開始。サンプルの紙の端や別紙には問屋さんが書いたものらしい様々な手書きの説明があり、どうやら今ではあまり使われない贅沢な材料や技術を施してあることが伝わってきました。
特に興味深かった説明書きはこれ!
「硫黄を焼くと、淡い金色→純金色→濃い金色→赤→青→紫→白という具合に色が変化します。和紙+うるし+銀箔です。銀部分はマスキングして色が変化しないようにします。」
私にはよくわからないのですが、何やら手の込んだ印刷技術が施された紙であることはわかります。
また小さなサンプルを貼り付けた用紙にある説明書きも面白かったです。
「銀をうるしで和紙に貼ってから硫黄で焼いたもの ※この和紙+うるし+銀箔+焼きというのが昔からの技術です。今のは銀箔が蒸着に変わり、焼きを着色に変えたりして安価にしたものです。」
加飾のための箔押しの印刷技術は時代とともに変化したということでしょうか?
そんな説明書きを読みながら、手書き文字部分もいい味出してるから貼っておこう!硫黄の焼きの技術の紙はなるべく大きく貼りたい!などなどと思い始め、当初のレイアウト案を途中でどんどん変更することになり仕上げました。
表は渋い枯れた感じの着物の裂を選んだ「よせぎれ屏風」。裏は金・銀・赤・青・紫・・・様々なきらめく箔押しの紙を寄せ集めたものになりました。
脱いだ時にしか見えない羽織の裏地に凝る裏勝りがあるように、表からは決して見えない裏貼りを見てビックリ!な屏風に仕上がった室内装飾織物語りです。