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鳥インフルエンザと空間

全国で高病原性鳥インフルエンザの感染が多発している。
和歌山県のレジャー施設内でも感染の確認がされたそうだ。

確かなことはわからないが、おそらく病原体を持った野鳥が園内に飛来して、蔓延したと思われる。
動物園などは解放空間であるため、野鳥の出入りは防ぎようがない。他の可能性としては人や搬入物にウイルスが付着していて、園内に持ち込まれたかになるだろうか。
農研機構の高病原性鳥インフルエンザQ&Aに「高病原性鳥インフルエンザはどのようにして広がるのですか?」という質問に対して以下の回答をしている。

高病原性鳥インフルエンザウイルスが鶏に感染すると、大量のウイルスが全身で増えて、糞、唾液、痰、鼻水などに排泄され、同居している鶏に広がるとともに、鶏舎の床や水まわりを汚染します。環境を汚染したウイルスが人、物、車などに付着して発生農場から周辺農場へ移動することにより、高病原性鳥インフルエンザの発生が拡大するものと考えられています。

農研機構 よくあるご質問 https://www.naro.go.jp/faq/bird_influenza/052051.html

先に動物園などは解放空間であると記述したが、一方で閉鎖的な空間でもある。野外とは違い柵や檻によって、動物や鳥の移動空間が制限されているからだ。広大な野外とは異なり、園内では空間内の密度が圧倒的に高くなるため、感染した鳥の糞や尿にも高確率で触れてしまうことになる。

つまり、鳥や動物が飼育されている空間は外からの出入りは自由で、病原体を持つ野鳥の飛来を許してしまう一方で、行動範囲が制限されているという閉ざされた側面も持っている。
というのも、人が管理する空間はどうしても自由な出入り口を持つ閉鎖的な場になってしまうからだ。
動物園だけでなく、学校や職場も同じような構造になっているのではないかと思う。というより、人が暮らす空間のほとんどがそうではないか。
だから、コロナ渦における3密の1つが、人の出入りできる密閉の場においてだったはず。

人も動物も閉ざされた空間のなかでウイルスが蔓延しやすい。
では、動物を見世物として柵の中に閉じ込めるのを止めるべきなのだろか。鶏の飼育方法も変えたほうがいいのだろうか。
簡単に答えを出せる問いではない。どちらも、動物倫理の問題で挙げられる課題であるが、この話はこの場では切りがないし、僕が勉強不足でもあるのでまた改めて考えてみたいと思う。

話が逸れてしまった。
つまり、人が管理している限り、鳥インフルエンザ(高病原性も低病原性も)が蔓延する可能性はあるということを理解しなければいけない。
もちろんできる限りの予防は行うべきであるが、どこかの施設内で感染が確認されたとしても、構造上致し方ない面があるのだと考える。
だから、決して飼育員や農家だけの問題にしてはいけないと思う。鳥インフルエンザを蔓延させないためにはどうするべきなのか、どうあるべきなのかを考えながら、非難したり、責めたり、不必要に恐れることなく見守ることが、今できることではないか。無力で外部にいることを自覚しながら。


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