第84話「世の中はコインが決めている」
果たして、露子は部屋に来てくれるのか?これは一つの賭けだった。来なければ僕に対して隠し事があるということ。部屋に来てくれたら、縁日かざりと一緒に来るかもしれない。
それはそれで核心に迫れる。
迷った挙句、露子は部屋へ来ることを選んだ。一時間後に到着するということで、僕は待っていると言って電話を切った。
正論くんへ報告しようと思ったが、一人で解決したかったのでやめた。それに露子と縁日かざりが繋がってるのならば、僕の部屋へ来てもらった方が安全かもしれない。
きっと、縁日かざりは狛さんの居場所を知りたいに決まってる。
一時間後……
チャイムが鳴ったので、玄関へ行き覗き穴をのぞいた。露子がドアの前で立っていた。どうやら一人のようだ。ドアを開けると、よそよそしく露子が作り笑いをした。
彼女を先に部屋へ通してから、廊下の左右を見た。だが、誰の姿も見えなかった。だけど油断はできない。どこかに縁日かざりが隠れているかもしれない。
ドアを閉めて内鍵を掛けると、露子が不安そうな表情を浮かべて……
「かざりは来てないよ」
「やっぱり君は、縁日さんと繋がっていたのか?」
「ううん、違う。無理矢理関係を継続させられていたの」
「無理矢理?意味がわからない。詳しく話してくれるか」
リビングへ移動してソファへ座らせると、露子の言う、無理矢理という意味がわからないと尋ねた。これで確実に、二人が繋がっているということは確定した。
僕の知らないところで、どんな繋がりがあったのか?
「私、知ってたの。かざりが鳥居くんのことを好きなの。でも、私も鳥居くんに恋してた。だから、かざりにとって私は恋泥棒みたいなものなの」
「でも、僕は君を選んだ。結果的にそうだったけど、縁日さんのことを好きにはならなかったと思う。それで、縁日さんは君のことを恨んだ。そういうことなの?」と僕は訊いた。
「恨んだとも言えるけど、かざりは最悪なやり方で私を追い詰めてきたわ。だから、鳥居くんに迷惑をかけたくなかったの。それで別れを選んだ。ホントは今も気持ちは変わっていない」と露子は哀しそうな表情を浮かべて、僕の目を見つめた。
今も気持ちは変わってない。そんな露子の気持ちを聞いても複雑だった。なんて言葉をかければいいのか。
でも、露子は間違いなく、縁日かざりに脅されていた。そう思って良いのだろう。
当時、露子の身に起きた出来事は何だったのか!?こうして数年前の過去が、語られることになった。
第85話につづく
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