第34話「真夜中の飛行船」
黙々とサンドイッチを頬張る神木恵梨香。その間に、俺が頼んだオムライスも運ばれてきたの。そして、まったく話が進まないまま食事が始まるのだった。
大好物のオムライスが半分になったとき、突然、神木恵梨香が口を開くのだった。なんでこいつのタイミングで話し出すのか理解しがたい。あまりのスローペースに、イライラは頂点に達していた。
「あの……諸星さんは知らないと思いますが、あの……家、呪われているんです」
「えっ!?な、なんでそのことを知ってるの?」
「あの……知ってるとは?私が知ってることが不思議ですか?」
「いや、そのなんて言うか。いや、こっちの話だから気にしないで続けて」
まさか、いきなり家が呪われていると言うとは思わなかった。もしかして、俺の家にあの謎めいたFAXを送ったのはこの子なんじゃないかと疑ってしまう。ただの偶然かもしれないが、ここは慎重に話を聞いた方が良いだろう。
「あの……実はですね。鋭角さんから教えてもらったんです。あの家は呪われているって」
「ごめん。エイカクさんって誰?」
「あ、すいません。赤潮さんに担当が変わる前の担当で今は辞めていませんが、その鋭角さんって人から辞める直前に聞いたんです」と神木恵梨香が慌てて説明を始めた。
「恵梨香ちゃん、あの家の秘密を教えようかって。ああ、鋭角さんは私のことを恵梨香ちゃんって呼んでたの」と神木恵梨香がどうでもいいことを言うので、俺はイラッとしたが我慢して話を続けるように手を前に出した。
「あの……もしかしてイライラしてませんか?」
「あのさ、わかってんなら早く話を進めてくれるか!」と俺はイラッとしながら言い返した。
「す、すみません。私、昔から話すのが下手なんで。こんなんだから、接客も禁止されているんです」
「あぁ、もうわかったよ。俺が聞くからそれについて答えてくれるだけで良いよ。これじゃあ、いつまで経っても話が進まない」
ここまで人をイラつかせる奴と出会ったのは初めてだった。もしもこの場所に狛犬ちゃんが居たら、きっと彼女に張り倒されていただろう。
俺は一旦、気持ちを落ち着かさせてから、神木恵梨香へ質問を始めた。まずは前の担当者が話したことから。
「その人が言う、家の秘密ってはなんだったの?簡単で良いから簡潔に教えてくれる。君の感想とかはあとで聞くから」
「は、はい。わかりました。秘密ってのは呪われていることなんですが、私も初めは良くわからなかったけど、そんな風に言われたら気になって、何が呪われているんですかと聞いたんです」
「それで、その人はなんて答えたんだよ?」
「屋根裏にある物が隠されていると、教えてくれました」
ついに過去からの情報を手に入れた。屋根裏に隠されたある物とは?
俺はイラッとしながら、神木恵梨香が教えてくれた情報に思わず笑みをこぼすのだった。
第35話につづく
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