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第42話「真夜中の飛行船」

不意に眼鏡を外した彼女を見て、俺は不覚にも彼女の顔を見て可愛いと思ってしまった。こんなの反則じゃねぇーかよ。

これをギャップ萌えと言うのか?眼鏡を外した神木恵梨香は驚くほど可愛かった。これなら眼鏡よりコンタクトにした方が、男ウケは良さそうだけど。

「どうしました?」と神木恵梨香がボケっとした俺に訊いてくる。

その表情に、あのオタクっぽい雰囲気はなかった。少しだけタレ目で男心をくすぐるような、あどけない表情が見つめられた瞬間に胸を熱くさせた。

でも、やっぱり若い女。俺は不覚にもドキッとさせられたことに戸惑いしかなかった。

「いや、何でもない。それより体験するってどういう意味なの?それが君の浮かんだ、もう一つの考えってやつなのか」

「そうですよ。これは人間に与えられた欲望という名の呪いだと思います。諸星さんを通じて、ミホさんや狛犬さんが無意識にその世界に入り込んだ。呪いと言いますけど、そんなの昔の人間が勝手に名付けただけですよ。私は呪いと思ってません。物事なんて人によって捉え方が違いますからね」

「そうだけど、そんなことを言ったら、何でも片付けられるだろう。呪いじゃないとしても、現に俺の身体は異変が起きてるじゃないか。それでも呪いじゃないと言えるのかよ」と俺から目を離さない神木恵梨香に説いた。

「だから証明したいんです。これが呪いであっても、幸せの形になるなら本望ですよ」

幸せの形……その言葉を聞いたとき、俺自身も幸せの形を夢見てる一人だ。形は違うかもしれないけど、神木恵梨香も幸せの形を夢見てるってことなのか?

自分の考えを頭の中でぐるぐると巡らせていると、目の前で立っていた神木恵梨香がゆっくりと近寄った。

一体、何をしようとしてる。そのあどけない表情の裏は何を考えているんだ。

次の瞬間、神木恵梨香が何の躊躇もせずにタンクトップを脱ぎ出した!真っ白い身体にプリンみたいな乳房が目に入る。決して大きくない乳房に妙な魅力を感じた。

「えっ!し、下着着けてないの?」

この状況に相応しくないことを聞いてしまった。その前に、彼女がタンクトップを脱いで上半身裸なのが問題なのに。

「これブラトップですよ。内側にブラが付いてるんです」と神木恵梨香はそう言って、足音もさせずに寄り添った。

「ちょっと待ってよ!落ち着けって。何をしようとしてるんだ」

自分でそんなことを言って、ホントはわかっていた。彼女の言う体験ってのは、こういう意味だったわけだ。

寄り添う肌のぬくもりが伝わって、俺は無意識に肩を掴んでいた。こんな展開になるなんて予想はしていなかったけど、展開的に悪い方向へ動いているんじゃないか。

そんな風にも感じていた。

「あの……私、ものすごく冷静ですから心配しないで下さい。それに、諸星さんって女の扱いに慣れてるじゃないですか。これは私が体験するだけです。気にしないで抱いて下さい」

はっきり言って、神木恵梨香の目的は謎めいていた。それでも女の扱いに慣れてると言われて、それを否定するのもおかしかった。

何故なら彼女へ、俺は二人の女と寝た話をしているからだ。それを踏まえたら否定したところで説得力はない。

俺はまた、あやまちを犯してしまうのか?

第43話につづく

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