諸悪の根源がすでにいないとすれば【創作大賞感想2024】
ようやく自分の応募作品を全文アップできたので、創作大賞応募作品を読むことができます。
あ、葉咲透織と申します。
普段は出版社公募にチャレンジしています。
BLとライト文芸系をメインに投稿していますが、読むのはオールマイティ。
中でもミステリが好きです。
「ミステリー」じゃなくて「ミステリ」って書くようになったの、それこそ何かのミステリ読んでその影響だと思うんですけど、思い出せません。
心当たりがあったらよろしくお願いします。
さてさて、「完結したら読もう」「自作に目途がついたら読もう」と思っていた創作大賞応募作、ついさっき(ついさっき!?)読了いたしましたので、つらつらと感想をしたためます。
こちらの作品です。
もう皆さんご存じ、昨年のnote創作大賞で光文社&TV東京のW受賞をされた星月渉さんの作品です。
↑受賞作は来週発売です。要チェック!
↑ドラマめちゃくちゃ出演者豪華じゃない……?
↑これは去年の創作大賞で書いた私のレビュー。
で、今年の新作「断罪パラドックス」。
悲痛な母親の叫びから始まり、この一条久という少年は、きっとものすごく辛い目に遭ったんだろうな……と、読み進めての二章、久の恋人であったという二村瞳の視点で進む過去の話。
あれ?
これは……やっぱり死んだ奴がやべぇ奴ってそういう話?
↑そういう話(アンリミで読めるよ)
言い忘れていたけれど、ネタバレするよ!
ある秘密を抱えた久によって、弱みを握られて駒とされた少年少女たち。
桜山高校の生徒の親御さんってこんなんばっかりなんですかね?
一見して息子思いの一条母だって、本性はああでしたし。
自分で創作していても思うのですが、物語でモブではなく主役、主要人物になるためには「かわいそう」という要素が必須なんだろうか、と。
出てくる生徒出てくる生徒、親がひどすぎて悲しい。
駒にされた子たちの親、最終的に全員警察沙汰になってるわけでしょう、この短期間に。
この地域の警察、「桜山高校どうなってるんだ……」ってなりませんか。
この話を読んでいて一番考えたのは、「悪とは何か」ということです。
例えば、一条母の糾弾では、わかりやすく「悪役」を担わされていた三国。
もちろん彼が中学時代までにしてきた犯罪は許されるべきものではないのですが、母が薬物中毒で、生活保護費をすべて薬に使ってしまう。
万引きや車上荒らしをしなければ、妹と生きていくことも難しい。
それでいて彼は、二村に対して優しく接することもできる。
いやマジでこいつが保護司のおじさんに助けを求められる奴でよかったよ……。
一条久自身もそうです。
露悪的に振る舞っている彼が抱えていた秘密、母との関係について。
彼がしたことも許されることではないのですが、けれど最後には同情的になってしまう。
いったい私たちは、この物語の誰を断罪すべきなのか。
あらすじでも投げかけられた疑問の答えが見つからない。
もちろん、諸悪の根源といえる人間がこの物語にもいます。
「ヴンダーカンマー」でもそうだったように、ひとりの男の犯罪行為がこの悲劇の引き金を引いているのは、間違いない。
けれど、その男はもはやこの世にいない。
そして駒にされた生徒たちの個別の家庭問題については、この男は関係ない。
(あたり、「ヴンダーカンマー」よりも後味が悪いです。久が彼らを駒にしなかったとして、彼らの今後が上手くいくとはとても思えない。そしてその理由を諸悪の根源に求めることはできない)
読み終わったときに「もやもや」が残る小説です。
タイトルに含まれる「断罪」が心の中にしこりとなっていつまでもとどまっている、そんな読後感です。
一応久以外の高校生たちは、命は助かります。
五十嵐先生がいるのなら大丈夫か? うーん。
この先生なんだか、人間味がないというか、怖さを感じるんだよな。
黒幕でぇすっていつわかるかひやひやした。
いや、黒幕といえば黒幕……うううううん。
この話を読んだ皆さん、あなたは誰が断罪されるべき存在だと思いますか?
【宣伝】
note創作大賞2024、二作品参加しています。
よければ読んでみて、「スキ」してもらえたら嬉しいです。
↑男子高校生が友人に連れられていった店をきっかけに、人間の恐ろしさを実感する短編連作ホラー。
↑三角関係に端を発するイヤミス愛憎サスペンス。
よろしくお願いします。
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