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鐘とノートルダムと私

Twitterのプロモーションで流れてきたんですけどね。

何これ。

何これ。




私はノートルダム大聖堂に思い入れがあります。

  1. ディズニーのアニメ映画『ノートルダムの鐘』の劇伴にハマる

  2. ディズニーのアニメ映画『ノートルダムの鐘』を鑑賞してガチハマりする

  3. 小説『ノートル=ダム・ド・パリ』の邦訳を読んで人生が狂う

  4. 『ノートル=ダム・ド・パリ』に関するいろんな映画を観て味わう

  5. 劇団四季『ノートルダムの鐘』ももちろん観る

  6. ノートルダム大聖堂はもはや推し。いつかノートルダム大聖堂に行きたい、行かなくちゃ、絶対行って~~やる~~!

  7. ある朝起きたらノートルダム大聖堂が燃えてる


『朝起きたら推しが物理的に炎上していた女』の爆誕です。比喩じゃなくマジでバーニングしていました。世界中のニュースでその光景が放送されました。職場でも心配されました、「食堂のTVでさっきやっててんけどフランスで大火事なってるのアンタの好きなやつちゃうかったっけ?」と。「そうなんですよ~~!! マジ燃えてるんですけど~~!!」って返答したのを覚えていますが何が「そうなんですよ~~!!」やねんとセルフはらわた煮えくりかえりング。何がおもろいねん! おもんないわボケ!!

あのね、推しが物理的に燃えてる時、なんて顔したらいいか分からないんですよ。燃えてる最中は笑うしかないです。そして鎮火の後で泣く。覚えておいてください。

そんなノートルダム大聖堂の!! 燃えてる様子を!! 映画に!!

推しが炎上してるところを映画にされてる!!!! もう心が無理なんですけど……!!!!


ーーーーーーーーーーーキリトリーーーーーーーーーーー
これから『ノートルダムの鐘』および『ノートル=ダム・ド・パリ』のネタバレを盛大にしていきますがどっちも公開されてそこそこ経っているので別にいいよね!
ーーーーーーーーーーーキリトリーーーーーーーーーーー


ディズニーの作品の中で、いやこれまで私が見てきたアニメ作品の中で一番好きかもしれない。それが『ノートルダムの鐘』。「重厚」とか「大人向け」とかよく言われます。良い作品だと思う。作画が良い、音楽が良い、歌が良い、演出が良い。物語の内容も巧くきれいにまとめてる。地味なのに攻めてる映画です。まだ観てない人はぜひ観てくださいマジヤバいから。どれくらいヤバいかというとオタキングが何本も動画にしてるくらい。

としお……

このオタキングの言い分にはちょっと待てと言いたいところも多数あるんですが(まず岩波の上下巻は面白いから読め。)私もこれから言いたい放題言うから人のこと言えない。『ノートルダムの鐘』とその原作、好きすぎて言葉に出来ないくらいなんですけど今から書き散らしていくぜ~~! 

『鐘』の話を聞け 5分だけでもいい

もう冒頭のタイトルアバンが素晴らしいと私は常に言っています。すごいの本当に! 完璧なのよ! まずシンデレラ城のロゴの時点で鐘が鳴ってるのよ、そしてOPかつメインテーマが重々しく始まったと同時に空からワーッとカメラが飛んでて雲を突き抜けてるノートルダム大聖堂の鐘楼を捉えて雲の下に降りていったら道化の男が子供に人形劇をしているわけですよ。プロローグはこの道化師の語り(Tale)になっているんですね。道化師の歌はノートルダム大聖堂を巡る昔々の物語──大聖堂に住む謎の鐘つき男とその育ての親の物語。この歌がめちゃくちゃ上手いのと作画がめちゃくちゃ美しい。色彩構成がすごくて、色が明るい画面と過去回想時の明度彩度抑えた時の画面の対比ね! 追われてる女が捕まえられて赤子を取り上げられ倒れた時に頭を打ちつけて死んだ直後の引きの画面がめっちゃ好きなんですよ私。暗い色の中にあの帽子のリボンが赤黒くはためいてるところ! 語りと音楽は盛り上がり、あの時の赤子は成長しノートルダム大聖堂の鐘楼の鐘つき男となり今! 彼が! 登場します! 鐘が一斉に鳴り夜が明け中世パリの街に朝日が差し物語の幕が遂に開ける!! ベーーーールズオーーーーブノーーーートーーーーダーーーーーーーーー!!!! はいメインタイトル!!!! 主役の彼が上部から飛び込むように現れ彼を映すカメラが急降下してズシンと着地と同時にメインテーマが力強く終わる!! やったーーーー! なんて鮮やかな手腕! 圧巻の6分24秒!!

ハァ……ハァ……! 好き……!!

『鐘』……演出が秀逸なんですよ……。オープニングのタイトルアバン以外にも、この鐘つき男カジモドがですね、広場のお祭りで度を越した観客により暴力を受け晒し者にされるもヒロインのエスメラルダが止め逆に彼女が追われる身になってしまい逃亡してカジモドが独りで大聖堂に逃げ込むくだりも素晴らしいんですよ……。いじめを受ける主人公、その主人公を助けたら逆に追い詰められるヒロイン。リアリティが酷い(誉め言葉)。大勢の人間の嘲笑の的にされたカジモドの心の傷、そしてエスメラルダがいなくなった後のあのいたたまれない空気がものすごく痛くて。ノートルダム大聖堂へひとり歩いていくカジモド……降り出す雨……どんどん引いていくカメラ……。可哀想だけど素晴らしいシーンです。

そうここで忘れずに言っておきたいんですが『鐘』のアニメーションは横にも動くが上下にもよく動く。天と地、高と低をすごく意識している作品です。カジモドの肉体はボリュームがあるのに並外れた身体能力を持っているからデカいのに機敏なんですけど、着地の時のズシンと着地した直後に膝と足で衝撃を受け止める間とか。尖塔を登って朗々と歌うカジモドが超高いところにいともたやすく昇って風バッサバッサ受けてるところのカメラワークとか。クライマックスの大乱闘スマッシュブラザーズも(『鐘』は最終的に大乱闘スマッシュブラザーズになります。え、あれスマブラですよね)。アニメーションに重力を感じて楽しい。

当然ながらノートルダム大聖堂というすっさまじく作画コスト高い複雑な建築物を描いている点もですね……。どこを切り取っても複雑なので、本当にただの1カットだけでどれだけの労力がかかっているのだろうと。途方もない作業量だっただろうと。ああーーーー。すげーーーー。絵が上手い人しかいないーーーー。

音楽ですがンも~~~~~~素晴らしいんですよ『鐘』の劇伴は。

この動画は『鐘』を元にしたミュージカル版の劇伴メイキング動画ですが多分この作品知らんくても圧倒的エモさにやられると思う。全曲ロマンチック、ドラマチック。アランメンケン最強。聴けば分かる。最初に言ったけど私おの音楽から『鐘』に入ったの。私学生の頃吹奏楽やってて、ある日演奏することになったのがこの『鐘』の劇伴メドレーだったのね。ナニコレってなったんよ。めっっっっちゃ感動して。で、大元の映画を観たわけ。音楽めっっっっちゃ良い。

全曲素晴らしいんだけど取り上げたいのはエスメラルダが唄う『God Help The Outcast』。上に貼った動画でも出てくる歌(※すみません後から見返したら動画で出てきたのは『SOMEDAY』でした)。サビの作りなんだけど、音階が下降するかたちなのよ。上から下に降りるメロディなの。珍しくない? サビではなくクワイア(大聖堂で礼拝している人達)の部分のメロディは音が上昇するの。ここで何を歌っているのかというと、神への祈りです。クワイアは神へ「私にどうか富を、名声を、栄光を、祝福を」と、虚空に手を伸ばしながら。対してエスメラルダは「私何もいらない、私は大丈夫、それより私より恵まれない人を助けてあげてください」と伏し目がちに。これをこの対照的なメロディがなんと雄弁に表現しているのでしょう! あーちょっと待ってサビから話しちゃった! Aメロもすごい良いの! エスメラルダは自由を愛する流浪の民、しかも追われている。ノートルダム大聖堂は彼女の身柄を保護しますがそれは逆に外に出れなくなったということ。途方に暮れる彼女は大聖堂内をぶらぶら歩き、そして、大きな聖母子像の前でささやくように歌い始めます。「私の声があなたに聞こえるかどうか分からないしそこにいるのかも分からない。私ははみ出し者であなたに話しかけるべきではないけど、あなたもかつては『そう』でしたよね?」と。このフレーズが美しいのなんの。歌を歌いながらエスメラルダは大聖堂を歩き回るんだけど、映像の中にたくさんのキリスト教のモチーフが含まれてて詳しい人に解説してもらいたいです。ネット探したら解説サイトあるかもしれないな。後で探そ。

あとねあとね、人間の描き方が色っぽいんですよ……。この物語、身もふたもなく言うと1人の女を好きになってしまう3人の男の話なんだけど、恋愛感情の機微を描くだけあってキャラクターが皆セクシー。
3人の男のうち1人はカジモド、歪な身体の中に気弱な心を持つアンバランスさ。2人めは色男のフィーバス。分かりやすくルックスがシュッとしたイケメン。ジョークも言えるし剣も強い騎士様。フィーバスがね、いやマジで本当に性格が良い男なのポイント高いよね……シュッとしたイケメンで性格も良い。最終的にエスメラルダと結ばれるのはフィーバスだけど同時にカジモドと対等のライバルそして友人になるのよ。カジモドを侮らず見下すこともなく誰よりもフラットに接してるのがフィーバス。フラットだからカジモドも臆することなく手荒い扱いするし悪態つくのよね。エスメラルダ差し置いてブロマンスっぽいコンビになるのでキュンとくる。
最後が、名悪役フロロー様。カジモドを育てた老獪で厳格な判事フロロー様。己の正義のために暴走しがちなフロロー様。そしてエスメラルダに恋をしてしまい夜な夜な悶えてるフロロー様。感情がこじれまくって愛情が殺意に変換されてしまったフロロー様。彼のSAY YORKが明らかになるのはちょうど映画半分のところで出てくる彼の歌『Hellfire』でなんだけど、この曲がまさかのメインテーマと同じメロディなの。ヴィランのお前があのメインテーマのあの旋律を歌うのか! 実質主役の待遇やん! ディズニー正気か!

『Hellfire』の映像も最ッ高に良いし歌がですね、

ええねん……

吹替でなく字幕を薦めたいですねここは……。なぜならオリジナルの歌がバッチクソセクシーだから。フロロー様にとって女への恋は罪なのよ。ギルティ。自分は悪くない、魔女が強すぎた、神よどうか慈悲を、って必死で歌いながらエスメラルダへの想いが止められない。「地獄の業火をエスメラルダに、あるいは彼女を私のものに、私だけのものに」って歌いながら、暖炉の炎の中に見えてくる幻覚のエスメラルダを思いっきり掻き抱こうとするフロロー様のあの切ない姿。って、ディズニー正気か! 何を見せんねん! 子どもに説明が出来ない!! こういうところが大人向けの所以なのよ! でもフロロー様もっとやれ、もっと苦悶しろ、放送コードギリギリを攻めろ!フロロー様ァァァァ!!!!!! フロロー様が悶えれば悶えるほどアタシ喜んじゃう~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!

ちょっと興奮しすぎました。何話してるのかもうわからん。

舞台版の話をしよう。ディズニーの映画の『鐘』から派生したのがミュージカル版、日本では劇団四季が上演してる『鐘』。私は『四季鐘』とか『鐘ミュ』とか呼んでますそうです2.5次元のノリです。もうずーーーーっと言いたいもんフロロー様エッッッッッッッッッッッロ!! って。既にアニメでバチクソに性癖殴られてるのにアレはアカンわ。もう皆フロロー様のこと好きになっちゃうけどフロロー様はエスメラルダ以外の人間に興味なさそうなので皆ハートブロークンしちゃう。失恋ノートルダム。にしても『四季鐘』の人気すごい。ありがとう。フロロー様がエロい以外思い出せないんだけど。フロロー様ァ~~~~~~~~~~~~~!!!!!!

『ダム』の話を聞け 2分だけでもいい

『ノートルダムの鐘』の原作が『ノートル=ダム・ド・パリ』ですけどめっちゃ面白くてさ、ほんとに! ノートルダム大聖堂を中心にした中世パリの群像劇。原作の方が濃密・複雑・カオス。キャラクターの性格も物語の筋も結末も全然違う。逆にこの原作から『鐘』を作ったのか! とすごく感動したんですよ私。『鐘』では朗々と歌うカジモドが原作では耳が聞こえない(幼い頃から鐘つきをさせられていたから……)とか、たくましい女性エスメラルダはフワッフワした不思議ちゃんの16歳、とか。フロロー様も原作だと子供の頃に両親が病で亡くなって年の離れた赤子の弟を養育せざるを得ない状況の中で勉学に励みキャリアを積みノートルダム大聖堂の司教補佐にまで登り詰めた苦労性の36歳、悩みの種は大切に育てたはずの弟がパリピのアホになってしまい頻繁に金をせびってくることですからね。もう如何にディズニーが原作の要素の改変と取捨選択をしたかというのが伝わってきますね。

キャラクターの違いはさもありなん、原作のストーリーはほぼ全員死ぬか殺されるかという理不尽な結末なので、こんなの原作通りに映画に出来ない。最後、熱狂の中でどんどん死んでいく! 殺されていく! びっくりする~! コメディの皮かぶってたのに終盤になったら鬱展開になる90年代アニメかよ~~~!!!!

そんな原作が好きなんですけどね……。

フロロー様がエスメラルダの寝床を襲って抵抗された時に「私を卑しんでくれ!」っていうじゃん、ほんと意味わかんなくて大好きなんだけど。「卑しんでくれ」ってなんだよ……。近代フランス小説読んでてあんなに腹筋崩壊したシーンないわ本当に……。逆に全く笑えなくてホラー小説ばりにグロテスクで恐ろしいのがラストシーン。エスメラルダが殺され、フロローが殺され、カジモドがしくしく泣く。まあフロローはカジモドが殺したんですが。カジモドは泣かない子なのよそれまでも涙をこらえてきた子なのよでもここで愛した2人を喪ってしまいしくしく泣いてしまうのよ。エピローグ、数年後に、お墓の中でエスメラルダと思わしき骨をカジモドと思わしき骨が抱きしめてる。この描写だけでも読者は胸いっぱいになるのにこの節の名を『カジモドの結婚』としたのもうヒャーーーーーーーってなる。

ヒャーーーーーーーーーーー!!

そして何よりも原作はユゴーの大聖堂への愛がすごい。この小説を読んでノートルダム大聖堂への興味を抱かない人はいないでしょ!? ってくらい。読後、「この建築物まだあるんだ、この世界に!」という、感動。


行ってみたい……

壁にANAΓKHと彫られているのかいないのか……

バラ窓から差し込む光は私も包んでくれるのかくれないのか……

キャラクター達がえっちらおっちら昇降してた螺旋階段を使って最上部まで上がれる鐘楼……そこから見えるパリの街……

まじもんの聖地巡礼じゃん……一生のうちに行きたい……素敵……絶対行って体験する……。海外だからすぐには行けないけど、お金貯めて、勉強して、自分の足で床に立ち、自分の手で石の壁を触り、自分の鼻で空気を吸って、自分の目で光と影を見て、自分の耳で大聖堂内の音を聞きたい。五感で味わいたい。






って思ってたら……

燃えたじゃん…………


冒頭のドキュメント映画の話に戻ります

目下の私の悩みは「これを観るか観ないか」です。だって燃えてるところが痛々しくて見てられないと思うんですよね! 泣くと思うもんマジで。でも、これは「私の推しを守ってくれた人々」の映画でもある。<我らが貴婦人>たるノートルダム大聖堂は誰にとっても大切な存在、<彼女>を救うために勇敢に戦った人たちの映画なの。そう思ったら私も勇気を出して観たい気もするのよ。

幸いにもノートルダム大聖堂、上部の木造のところが燃え広がったのみで石部分は崩壊せず残っていて、修復作業中とのことです。原作でユゴーはこの建築物への憧憬そしてそれを破壊・改造してきたことへの怒りを滔々と語っています。彫像なくなってるとか、あそこのステンドグラスが外されてるとか、そっけない木の扉つけられてるとか。大聖堂古参厄介オタクか(ですがさすが文豪、この「ボロボロやんけ! つぎはぎだらけやんけ!」というのを「老女王の皺と傷痕」と表現してらっしゃる)。
でもユゴーの弁を信じるとしたら、それだけこの大聖堂は破壊されてきたということ。それなら、この大火事も、長い目で見たらノートルダム大聖堂にとってのひとつの傷痕となるのかもしれない。そしてこのドキュメント映画がこれからの未来に向かって刻まれる歴史の1ピースだというのなら、観たい気もする。

そして、悩んでる間に上映期間終わる気がする。

コロナのことがあるので人の多い場所に行くのはまだ悩ましいところではありますが今の私の意思としては「見届けたい」。でも「勇気が出ない」。

ノートルダム大聖堂を愛したカジモドなら、エスメラルダなら、フロローなら、そしてユゴーならどうするだろうか……と思いを馳せて、今日もまた、映画館に行くことが出来なかった私です。

観に行くか、行けなかったか、またnoteで報告します。


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