記憶を紡ぐ糸 最終話「記憶を紡ぐ糸」
私は大学に行く準備をしていた。私は半年ぶりに大学に講義を受けに行くことになる。もっとも、最後に講義を受けた記憶は思い出せないでいるので、初めて講義を受けるという感覚だ。
結局、あれから完全に記憶を思い出すことが出来ていない。いつかは思い出すかもしれないし、もう二度と思い出さないかもしれない。だからと言って、もう苦悩はしないと決めた。
軽めに化粧をし、私は家を出る。私は、外を掃除していた金子さんに挨拶をした。
「おはようございます」
「おはよう、若葉ちゃん。大学、気を付けて行ってきてね」
私は意気揚々とアパートを出る。道路を左に折れると、そこで花帆が私を待っていた。
「若葉、一緒に行こう」
私は笑顔で「うん、行こう」と頷いた。
切れた記憶の糸は、簡単には紡げないかもしれない。でも、新しい記憶なら紡ぐことが出来る。それならば、私は前を向いて歩く。これから、明るい未来という記憶を紡いでいくために。
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