乱反射 3.
二限目の講義を終えて、私たちは学生食堂へ向かう。食堂の入り口前では、友達の山谷樹梨(やまやじゅり)と待ち合わせていた。ショートカットで快活な彼女と私はどうも釣り合わない、私は常々そう思っている。でも、その空気感や距離感が私たちを結び付けているのだとも思う。
「遅いよ、もう十五分も待ったじゃない」
樹梨は口を尖らせて言った。
「ごめん、講義が長引いちゃって」
私は前に手を合わせて謝った。
「まあ、あの先生だったら長引くか。席も取れなくなるし、さっさと行っちゃおうか」
樹梨に促されるように、私は食堂へ入った。樹梨は最近ダイエットをしているらしく、野菜中心の日替わりランチにした。私は特に何を食べるか決めていなかったので、樹梨と同じランチを食べることにした。
「樹梨ってさ、ダイエットしなくても十分細いと思うんだけどなあ」
何とか座席を確保して食べ始めた後、私は率直な感想を呟いた。
「甘いわね。チアは太ってたら動けなくなるでしょ。機敏で正確に動く為には、痩せないと駄目なの。今のあたしは十分デブよ」
樹梨はそう言って、和風ドレッシングがかかったレタスを口に入れる。
「そんなもんなの?」
「そんなもんよ」
「そうなんだ」
樹梨はオレンジジュースを口に含む。私は米と味噌汁を交互に手を付ける。
私は樹梨がストイックだなと思う。チアリーディング部に入っている彼女は、いつも練習に明け暮れている。だから、こんな風に二人でゆっくりと話せる時間は貴重だ。
「ところで、美月は最近どうなの? 法学研究会だっけ?」
「ああ、あそこはあまり活動してなくて。たまに部室に顔を出すくらいかな」
「ふうん、美月って本当に真面目だよね。あたしは法律の勉強なんて、講義だけでいいわ」
私はふふっと笑った。「何よ」と樹梨は顔をむすっとさせた。
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