乱反射 4.
ランチを食べ終わった後、樹梨は三限があるからと言って講義室へ向かった。私は次の時間は空いていたので、食堂から出た後で別れた。
「美月にあんな明るいタイプの友達出来たの初めてなんじゃない?」
姉は私の隣で言った。樹梨には勿論姉の姿など見えていなかったはずなので、二人で昼食を取っているつもりだっただろう。それに、他の学生にも姉の存在は見えていない。私だけ、あの場でも姉の存在を感じていた。
「そうだね。今まで友達だった子達はみんな大人しかったし」
「あんたも頑張ったもんね。大学デビュー」
「うん」
大学デビュー。それは、古い自分からの決別。高校生までの私は、黒縁の眼鏡をかけ、髪を二つ結びにした地味な女の子だった。周りの女の子達はお洒落でスカート丈を短くしていたけれど、私は全く興味が無くて、むしろそれは膝よりも下の丈で少し長いくらいだった。私は大人し目の地味な女の子二人と仲良くしていたけど、それ以外の子達とはどことなく壁を作っていた。
大学に合格した時、私はこのままではいけないと思った。自分を変えたい。もっと、多くの人と繋がりたい。地味な私から卒業し、新しい真野美月になるために、私はこれまで手にしなかったファッション誌を読み漁った。髪を茶色に染め、少し巻いた。服装もいわゆる赤文字系のファッションに変えてみた。明るい色の服を取り入れたり、白いワンピースを着てみたり色々とやってみた。眼鏡をコンタクトに変えた。
すると、色々な人に話しかけられたし、樹梨のような明るいタイプの友達が出来た。私のことを知っている高校の同級生からも、垢抜けたねと好評価だった。率直に嬉しかった。やってみて正解だと思った。
そして何よりも、姉に褒められたのが一番嬉しかった。「可愛いじゃない」。この一言が、何物にも代えがたいものだった。
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