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「虎に翼」第112話 裁判に立ち会っているのは?



「虎に翼」第112話では、原爆裁判における証人尋問の様子が描かれています。昭和36年(1961年)6月の出来事のようです。

法壇上には、合議体の裁判官が映されています。主人公寅子は右陪席を務めます。
法壇の下に座る人物はどうでしょうか。右側の男性は職服を着用していますから、裁判所書記官であることが分かります。
では、左側のスーツ姿の男性はどうでしょう。
この投稿では、この人物が「裁判所速記官」であるかどうかについて考えます。

まずは、ごく簡単に、裁判所速記官の養成について説明します。
養成は昭和25年(1950年)に始まりました。2年間の研修で速記タイプライターによる速記技能を習得し、卒業後は全国各地の裁判所に配置され、速記録作成の業務に就きました。
1期生の初出廷が昭和28年1月ということです。
尋問が行われた昭和36年6月というと、タイミング的には10期生までが卒業しており、立会いの可能性があったと考えられます。
5期生から7期生までは、毎年100名程度という大量養成がされていました。卒業後は、もちろん、東京地裁に一番多くの人員が配置されたでしょう。

となると、昭和36年の東京地裁にはそれなりの数の裁判所速記官がいて、この尋問にも立ち会った可能性はかなり高いのではないかと考えます。

ただ、この人物、ペンを持って筆記をしているのです。机の上に速記用のタイプライターが置かれていれば、裁判所速記官であると言い切れるのですが。
調書を作るために、速記官以外の裁判所職員が立ち会っていた可能性があるのかもしれません。

下の画像は旧式の速記タイプライターです。昭和36年当時も、裁判所ではこの形のタイプライターが使われていました。
現在は、コンピューター内蔵の電子速記タイプライターが整備されています。

速記タイプライター

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