映画「人間蒸発」~或る一般人の失踪
ある日突然失踪した平凡なサラリーマン大島を、を俳優露口茂と今村昌平組が捜索するというドキュメンタリー(?)映画。
露口たちは各地を飛びまわり、大島家族や知人に聞き込みを行うが、当然一筋縄ではいかない。
捜索が進むに連れ、どこにでもいそうなこの男には、どうもただならぬ過去がありそうだというのがおぼろげながら見えてくる。
ところが、それがどういう真実に結びついていくのか、尻尾を掴めそうで掴めない。中盤から、大島の関係者たちの話の辻褄が合わなくなったり、いかにも嘘臭い話が混じりはじめたりする。誰が本当のことを言ってるのか、さっぱり分からない。いかにもな小市民でさえ胡散臭く見えてくる。しまいには、一応の主役であるはずの露口すら信用できなくなる。
観ている側の不安とイライラがピークに達しそうな時、この映画はドキュメンタリーとして衝撃的なクライマックスを迎える。
「え? 何がどうなった?」と呆然とするこちらを尻目に映画の中の登場人物たちは今までとは異なる方面でそれぞれが困惑し怒り出し、何が何か分からぬまま映画は終了。
これはいったいなんだったのか、とても嫌な後味の残る作品。
強烈に人を選ぶ映画であることは間違いなく、人によっては観た後キレるかもというぐらい人の神経を逆撫でする怪作。
真面目に観ようと意気込めば意気込むほど、とにかく困惑させられるが、最後にどうもこの映画はそれを意図してやってるんだなとわかる。
そういったものを楽しみたい人にとってはおすすめの映画。