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動画クリエイターのなり方「映像専門学校の講師を2年した僕から伝えたいこと」

このnoteは、映像業界に興味があるまたは、仕事をしたいと思っている方に向けて書いています。特に高校生や専門学校生、大学生に向けた記事です。
そしてなにより、将来の夢に「映画監督」と書いた中学時代の僕が、当時こういう記事あったら喜ぶだろうなと思って書きました。

この記事の流れとして
①自己紹介
②講師をして感じたことのまとめ
③もし自分が「高校生なら」「専門学校生、大学生なら」という2つの視点に分けて、いまなにをすべきなのかを書きます
④結論、どうやったら動画クリエイターになれるか?

①自己紹介

僕、ササハラハヤトは、映画監督・クリエイティブディレクターをしています。

レストランに例えると、その日のメニューを考え、どこから食材を買い、どんな味付けをして、どんな盛り付けをするかをトータルで考える「料理長」が映像業界で言う「ディレクター」にあたります。

そして、レストランの客層を調べて、料理の価格設定を行い、原価率などを計算して、レストランそのものを運営していく「マネージャー」が「プロデューサー」にあたります。

僕はその「料理長=ディレクター」を基本的に行いますが、作品によっては「マネージャー=プロデューサー」も担当します。

余談ですが、ディレクターとプロデューサーを兼任している人は会社だとかなり珍しいです。しかし、僕はフリーランス(会社に所属しない個人事業主)なので、プロデューサー業務もまとめて引き受けることが多いです。

18歳の時に上京して2年間専門学校に行き、そこからこの仕事をしています。歴は10年ほどです。

ただ、名前ばかりのディレクターはたくさんいて、このままだとかなり怪しい男になるので、正式なプロフィールを添付しておきます。(新規案件の場合、必ず送られる文書です)

テレビドラマ制作、CM制作、映画祭運営を経て、2017年に独立。映画監督・クリエイティブディレクターとして活躍。
フリーランスとして、コンテンツスタジオ「ONE MEDIA」で、メディア動画や広告動画などのチーフディレクターを行う。その後「CM / PR動画」「テレビ局制作のSNS動画」「YouTubeチャンネル」などでプランニングやクリエイティブディレクターとして活動。
2018年、自身の故郷である熊本県芦北町を舞台とした映画『ふたりの空』を監督。町全体を巻き込む「新時代の映画作り」というプロジェクトを発足。映画を通した地域活性や、交流を実現。

いまは、映画やCM、MV、YouTube、など様々な動画を作成しています。

2年ほど前から新しいことをやりたいと思い、講師を始めました。

②講師をして分かったこと

(1)すごすぎるインプット量

今の10代の方って、そもそも観ている動画の量が僕よりも遥かに多いと思います。知らず知らずのうちに、とてつもない量の作品を観ているので、インプットの点においては自信を持って良いと思います。

とはいえ、仕事をする上での共通言語になりえる作品や、作品を作る上でヒントとなるものは個人的に伝えていかないといけないと思ってるので、インプットする時間は作っています。(映画が圧倒的に多いです)

映画は無理してみるものでは無いと思います。しかし映像業界を志す場合「半強制的に観る時間」はとても重要で、仕事を始め出すと本当に観る時間が無くなるので、学生のうちに浴びるように観た方が良いと思います。

しかしここで悩むのが「何を観ればいいの?」という問題です。たしかに、ここまで作品が溢れている時代になにかを選ぶのはとても難しいですが、次の2つの基準で選ぶと良いと思います。

①強制的なインプット(40%)

これに関しては「無理して観る」ということです。自分からは決して観ないような作品だけど、先輩方がオススメする作品や話題になっている作品を観る時間です。

しかし、自ら強制的に観たくも無い作品を観る時間を作るのはなかなかカロリーが必要です。だから僕は授業に取り入れます。すると、いやでも観なくてはいけないので。(ちなみに、授業では15分ほどしか観せません。2時間も使うとカリキュラムが崩壊するため、冒頭15分を観せて、あとは各自観るように薦めます。)

②自分が観たいインプット(60%)

これは普段から何気なく観てるYouTubeや TikTokなど、好きなものを好きなだけ観るインプットです。

「好きなもの」というのがポイントで、無理してないので楽しいわけです。これは将来的にあなたのクリエイティブの基盤になるので、どんどん好きなものを観ていいと思います。

ちなみに、僕は15分ほどのアニメや、コナン(ファンです)や、昔のテレビドラマ、お笑い番組が好きでよく観ます。

あと、インプットというのは動画だけではなく、雑誌や漫画、ファッション、建物、絵画、音楽、舞台などさまざまなものを指します。

個人的に大切にしている時間は、2週間に1回は百貨店に行きます。百貨店はファッションのトレンドが分かるのと、そもそも空間が好きなので行きます。また、書店もあるし、レストランもあるし、とにかく素敵なものが詰まっている場所なのでオススメです。

(2)動画クリエイターという曖昧な職業

少し前までは職業が明確でした。
プロデューサーになりたい、ディレクターになりたい、カメラをやりたい、編集をやりたいなど。

しかし今は「動画クリエイター」というザックリした言葉が現れたことにより、そもそもなにをしたいのかが、明言されない人が多いと感じました。

この記事をここまで読んでくださった方の中で「動画クリエイターとは?」を説明できる方ってどれくらいいるでしょうか?

個人的な定義として動画クリエイターとは、自身で動画を最初から最後まで創り上げる人を指すと思っています。

当たり前じゃんと言われそうですが、そうでもなくて、一昔前まで分業が当たり前の業界でしたから、最初から最後まで1人でやるってのはとてもレアなんです。

しかし、YouTuberを観ていると、自分自身で企画して、撮影して、出演して、編集して、配信して……全部自分でやってるんです。これが「動画クリエイター」だと思っています。

そして、一通り最初から最後までできる人が当たり前になっていくと思います。だから学校では「動画クリエイター」を育成するつもりで指導するのです。

この時、忘れてはいけないのが「最初から最後まで」となると、想像している楽しそうなイメージとは遥かに遠い地味な作業もやらなくてはいけないという現実を知り、ギャップを感じてしまう方が多いことです。

僕は自分の仕事をとにかく地味だと感じており、毎日毎日企画書を書き、台本を書き、リサーチをして、スタッフ組織を考え、時々撮影して、ほぼ毎日何かしらの編集をして、やっと納品したと思ったら、再び新しい作品を企画する。

こんなことを日々やっていると、いつの間にか10年経っていました。

ですが、ある瞬間、たまらなく楽しいことがあって、自分が生きていることを実感するタイミングがあるんです。これは自分の生きてきた時間があったからこそ、生まれた作品だ!と感じるものが少なからずあります。

少し話は脱線しましたが、結論、楽しい仕事なので、この世界に行こうとする学生を止めることはしません。しかし、地味で大変な仕事なので、無理する必要はないと思ってます。(というか仕事というのは地味で大変です)

(3)素晴らしい動画とは何か?

さて、講師の仕事をしていると、学生が作った作品に対してコメントをしなくてはいけません。一生懸命作った作品に「もっとこうした方がいい」「これはこういう演出に変えたらどうだ?」などと言うのです。

よく考えると、すごく変なことで、そもそも正解があって無いような、あやふやな世界ですから、それを偉そうに、あーだこーだと言うのはおかしいと思ってます。

特に僕が指導している「企画・演出」に関しては、ぶっちゃけ、人それぞれ考え方が違うので、フィードバックするのは鬼難しいのです。

では、なぜ、僕はコメントできているのか?を話します。

それは、この業界で約10年仕事をしてみて「この世界を豊かに生きていく方法」を自分なりに模索し、考え、取得したからです。

ですから、自分が生き抜いた時間を信じて、学生に伝えるのです。

つまり、自分を信じられなくなった時が、僕が講師を辞めるときです。(これは誤解がありそうなので補足すると、基本的に作品を作るときは自分を信じない方がいいです。ここでいう信じるは、自分のやってきたことや時間のことです。)

さまざまな仕事をしてますが、この仕事(講師)が最もプレッシャーで、最も過酷です。

なぜなら「指導」できる根拠が教科書ではなく「自分の生きてきた時間」だからです。

だから、自分を曝け出すしかありません。同時に自分が一番勉強しなくてはいけない。自分が一番現役クリエイターとして、仕事に情熱を持っていなくてはいけないという自分への戒めになり、素晴らしい仕事をさせていただいていると感じます。

そんな、僕の生きてきた時間と経験を、ここまで読んでくださった方が信じてくださるなら、以下のことを読んでください。

素晴らしい動画とは
「素晴らしい企画」に
「適切な演出」を行ったもの

です。

つまり言い換えると
①企画力を鍛える
②演出の引き出しを無制限に増やし続ける

と、素晴らしい動画を作れます。
学校では、それを学ぶということです。

③もし僕が、学生なら○○する

高校生なら

①勉強をがんばる
やはり、勉強をします。クリエイティブの基盤となるのは世界をどれだけ知っているか?または世界にどれだけ興味を持っているか?です。興味を持つためにも勉強が必須です。

②恋愛をする
これは優先順位②くらいで、そもそも興味がない人もいるので、無理にするものでは無いですが、人を好きになると、結果的に心が動くので、その感覚を掴むのは大事だと思います。僕たちはおこがましいですが、動画の力で人の心を動かそうと必死なので。

③好きなものをなんとなく知る
なんとなくでいいと思います。「好きなものを見つけよう!」なんて、僕は大嫌いな言葉で、見つけるものじゃなくて、結果的に好きになってるものが「好きなもの」なので、なんとなく、あー、自分って○○やってるの好きだなと思えるものを知るのは大事です。

④カッコいいと思う大人に出逢う
これは超大事だと思います。カッコいいの基準はなんでもいいです。「服がカッコいい」「考え方がカッコいい」「喋り方がカッコいい」など。ちなみに僕はカッコいい大人であるために努力してます。

(映像系の)大学生・専門学校生なら

①制作実習、座学に全力で挑む
取捨選択せずに、とりあえずありとあらゆる講義と実習に全力で挑む。僕が学生の時はそうしてました。そして全く後悔してません。やはり、多額の学費を払ってるので、吸収できるものは全部吸収した方が良いと思います。

②自分が観たことのないジャンルの作品を観る
これは前記している「インプット」の部分の半強制的なやつです。本当は毎日1本映画を観ると決めてどんどん消化していくくらいルーティン化した方がいいと思いますが、さすがに僕はそこまでできませんでした。せめて一か月に数回は映画館に行って映画を観る努力はしたいです。

③課題制作以外のオリジナルを創る
いわゆる自主制作です。これは100%やった方がいいと思います。15秒でも良いです。要は「学校からやれと言われて創る作品」以外の「誰からも邪魔されないあなたの心からやりたい作品」を1回やっておくだけで、自分自信を見つめることもできますし、なにより自分の無力さを知ることができました。僕の場合、圧倒的にエンターテインメント性に欠けていることに気づき、且つ、自分がエンターテインメントを望んでいるんだということを知れました。

④動画クリエイターのなり方

さて、長々と書いてきましたが、最後の章です。では、どうやったら動画クリエイターになれるのか?
まとめると、こうなります。

(1)動画クリエイターとはなにかを知る

(2)企画から納品までできる力を付ける
→独学でも学べるとは思います。が、もしあなたにお金と時間が確保できるなら、学校に行った方が良いと思います。独学では限界があり、プロとして食べていくには、技術を身に付ける必要があります。逆にお金が無い場合は、まず編集ソフトのプレミアをYouTubeを見て学び、基本的な操作ができるようになったら、編集スタッフを募集している人を探して、とにかく1回バイトでもいいので仕事をしてみると、おのずとあとはなんとかなると思います。

重複しますが、お金があるなら学校をオススメします。なぜなら、強制的な場所に身体を置くことがなにより手っ取り早いですし、学校には就職のコネクションもありますから、とにかく技術取得に集中できます。

(3)企画力、演出力を身に付ける
→(2)で基本的な技術を身につけたら、あとはクリエイティビティの強化です。
これに関しては、あなたの生きてきた時間と、普段なにを考えて、なにに疑問を持っているか?ということが重要になります。だからこそ「インプットを強化」することが、大事なのです。

(4)作品を創作する
→できれば、課題作品ではなく、オリジナル作品を創った方がいいです。そしてそれを世界に発信してみてください。

ここまでできれば、動画クリエイターの卵になっているので、あとはさまざまな作品を創り続けることで、動画クリエイターになっていくのだと思います。

最後になりますが、動画クリエイターという職業は手段であって目的ではありません。

つまるところ、動画クリエイターになって、どうしたいのか?が大事です。

なんでもいいんです。「とにかくワクワクしたい」でもいいですし「金持ちになりたい」でも。

目的があるだけで、一歩が踏み出しやすいです。

僕はこの仕事をして、本当によかったと思ってますし、仕事をしているときが一番楽しいです。

ただ、面白いことに、向いていると思ったことは一度も無いです。むしろこんな面倒な仕事、めんどくさがり屋の僕には向いてません。

だけど、僕には目的があるので、やり続けることができました。

その目的については、また次回。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

ササハラハヤト

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