書籍 ”Drucker for Survival” 読書録
13歳のときドラッカーは、牧師さんからこう問われた。
「なにを持って覚えられたいかね」
「・・・」
「答えられると思って聞いたわけではない」
「でも、50になって答えられなかったとしたら、人生を無駄に過ごしたことになるよ」
私は今、46歳。この問いにどう答えようか。
歴史に名を残した経済学者、シュンペーターは若いときこう答えた。
「ヨーロッパで一番の美人を愛人とし、ヨーロッパで一番の馬術家として、そしておそらくは世界で一番の経済学者として覚えられたい」
彼のこの答えは有名で、そのせいで随分とからかわれた。
「私も本や理論で名を残すだけでは満足できない歳になった。人を変えることができなかったら、何も変えたことにはならないから」
老年になったシュンペーターはドラッカー宅でこう話し、その5日後に亡くなったそうだ。
私自身は、若い時こう答えたことがある。
「歴史的に圧倒的No. 1の研究者として世界史に記憶させる。誰も私の足元にすら触れさせない」
私の方はというと、まったくからかわれることはなかった。誰も気にも留めなかったためである。土台、シュンペーターと比肩しようと思う方がどうかしている。
だが当時世界一だった経済学者が語る通り、人を育てられなかったとしたら意味ある人生ではないのかもしれない。
私が教師になるきっかけを作ってくれたのは、小学校4年の時の先生だった。
先生は別に慶応に入れるよう導いてくれたわけでも、世界を変える哲学を密かに教えてくれたわけでもない。
ただ、よく遊んでくれた。昼休みにドッジボールをし、隣町の先生の自宅にも4回遊びに行った。
もし私がひとつだけ生徒に覚えてもらうことができるのだとしたら、だから、「遊んでくれた先生」として覚えておいてほしいと思う。
“Drucker for survival”
この本を読んでいると、なぜか昔を振り返ってしまう。幸せだった記憶を汲み上げるツルベのような、静かな深い語り口が印象的な本。
未来に進もうと躍起にさせる本は多々ある。しかしこの本は、忘れかけていた記憶の中にいる小さな私と再会をさせてくれた。この本を読んでいると日常の喧騒を離れ、正気に戻れる気がする。
「なにを持って覚えられたいのか」
この問いの相談相手は、子供の方がいい。
彼らは、なにを覚えていてくれるだろうか。
小さかった頃の自分は、なにを覚えていたのだろうか。
大人になった自分の中にいる子供。
彼と話すための緑色のチケット。
御伽噺のような現実があり、旧い世界からの声が聞こえる。
そんな本である。
お読みいただきまして誠にありがとうございましたm(_ _)m
めっちゃ嬉しいです❣️
私自身も新刊を4名の素晴らしい方々と一緒に出させていただきます。
内容を5名分、下のリンクよりほんの少しづつ公開させていただきます。
是非お読みくださいませ(^○^)