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「経済は心配ないが、社会は心配だ」P.F.ドラッカー

New York Times誌、インフレ記事


New York Times誌の印象的な記事をまとめてみたい。

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米国は、ここ40年で最も厳しいインフレに襲われている。

平均収入は上昇し、失業率も50年で最も低くなった。だがタイム誌の調査によると、「経済状態が良い」と考えている米国人はわずか10%にすぎない。

皆、恐ろしく悲観的になっている。あまりに激しいインフレによって、上がった収入も意味をなくし生活が脅かされている。

クリスティーナ・シモンズさんは貧しい家庭で育ったが、懸命に働き7歳の息子に良い暮らしをさせられるまでになった。フロリダのジャクソンビル近くの保険会社で働き、ここ数年で年収は倍以上に伸びた。

ただ彼女も「生活が厳しい」と感じている。

「もう、休暇で旅行へ行くこともできなくなったわ」
「昇進はしたのだけれど、そのせいで解雇されやすくもなったし」

シモンズさんは貯金をするため、ジムを退会し、呑みに行くこともやめた。

「どうなるか分からない。お金を貯めなきゃ」
「11月の議会選挙では、共和党に入れるつもり」

バイデンと民主党の指導者らは、「インフレは深刻な問題だが、経済は強固だ」と語る。

「雇用市場も強い」
「GNPは記録的な回復を見せた」
「貧しい人々の賃金も、近年にないほど上昇している」

だが、そうした話が有権者の心を捉えることはない。

民主党支持者ですら、「経済状態が良い」と答える者は20%にすぎない。
無党派層では8%、共和党支持者では4%となる。

ジェミー・レーガンさんは38歳。年収10万ドル(1385万円)で、屋上にプールがあるマンションに住んでいる。

しかし彼女も「生活がどんどん苦しくなっている」と語る。

6月1日から1ヶ月間の家賃が500ドル上がり、2900ドル(40万円)になった。

ジェミーさんは車を売った。駐車料金、保険料、ローンで、月に600ドル(8万3千円)かかるからだ。リモートワークにし、100ドル(1万3850円)浮かせている。家も売りたいと考えているが、出来そうにないためシェアしようと思っている。

「給料ギリギリ、まるで日雇い労働をしているようだわ」
「どうやったら普通の人が生活していけるの?」

年収10万ドル(1385万円)の人間がそう語る。

タイム誌の調査では、年収10万ドルの人々の3割が、自分達を「貧しい」「ぎりぎりの生活」だと捉えている。年収5万ドル(690万円)以下では、8割がそう答える。

「ちょっと待って?」
「この1ドル、一昨日より安くなってない?」

アンナ・ウォーカーさんは、最近よくそんな風に思う。彼女はカリフォルニアでウーバーなどのドライバーとして生計を立てている。かつて午前7時から午後8時まで娘をあずけていたが、今は一緒に車に乗せている。とても預ける余裕などない。

まだ彼女の生活に支障はない。

「でも、車が壊れたら、、、ホームレスだわ」

彼女はそう語る。

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経済は心配ないが、社会は心配だ


P.F.ドラッカーは「経済は心配ないが、社会は心配だ」と語った。

民主党議員らが言うように、経済指標の数値は非常に良い。

賃金は上昇し続けており、失業率も完全雇用に近い3.6%。50年で最も低い数値だ。アメリカのGDPも過去最高である。

アメリカの実質GDP(自国通貨)の推移 https://ecodb.net/country/US/imf_gdp.html

しかし、生活はあまりに厳しい。

経済と社会が乖離し始めた。過激な言葉を使えば「経済成長のために、人間が奴隷にさせられている」とも言える。

マルクスは『資本論』で、「誰も仕立て屋から、仕立て屋の『魂』を引き継がなかった」と述べた。

「『商品』は魂によって作られるものではなく、システムによって作られる非常に機械的なものだ」

「商品を生産するために、『偉大な仕事』など必要ない」
「どんな商品も単純労働の積み重ねにすぎない」

5=1+1+1+1+1。数式と同じように。

「この仮定により、我々は社会を直線的に発展させてゆけることになる」

だが、社会の価値は直線的な経済と同義ではない。

エフェクチュアル vs ビジョナリー


新時代を開く起業理論「エフェクチュエーション」では、直線的ではなく、世界は等方的に発展してゆくと説く。

等方性とは物理の用語で、空間中の分子の動き方を指す。

https://www.youtube.com/watch?v=MpcbfV3fvTc より

これまでの経営学で理想とされてきたビジョナリーと、等方的な性質を持つエフェクチュアルな起業家とを比較してみたい。

・ビジョナリーは、一枚の写真を提示するように明確な未来予想図を描く。

・エフェクチュアルは、未来は予想するものではなく作り出すものだと語る。「未来は作っている途中で変わってくるため、どうなるか分からない」と言う。

・ビジョナリーは、普通の人には見えない秩序を見つけ出す。

・エフェクチュアルは、むしろ秩序立っていないものを好む。「秩序のあるところで起業したら、そもそも資本のある企業に敵わないではないか」と言う。

・ビジョナリーは、強力なリーダーシップを発揮する。

・エフェクチュアルは、なにより対話を重視する。

進む方向があらゆる向きに開かれている。カレー店の店主の話を聞き、学習塾のアイデアを得るといった学び方をする。指示的ではなく、会話的。すなわち等方向的である。

それゆえエフェクチュアルな起業家にとっては、何に注意を払い、何を無視すべきか、決められた基準はない。何が無駄で、何が役に立つかが分からない。

何にどんな価値を見出すかは、彼ら自身に寄るのだ。どんなに価値があるとされているものも、無価値に思えることがある。逆にどんなに価値がないとされるものにも、価値を見出すことがある。

ランクや格差といったものから解放された起業家たちが、社会を等方的に発展させる。

ドラッカー学会理事の八木澤智正氏が、マネジメントについて語った言葉が興味深い。

「マネジメントの原義は『なんとかする』です」
「トラブルにあったり、初めての人に会ったり、見たこともないことに遭遇したとしても」

「なんとかする」

「それがマネジメントなんだと思います」

ソクラテスは対話によって新しいものを生み出す「産婆術」を使ったと言われるが、生まれてくる子供がどんな子供なのかは誰にも分からない。多種多様な育ち方をする子どもを矯正してしまったら、人間が住める世界にはならない。

我らは社会を一方向に進めてきてしまったが、自然な社会は等方向に膨らむ。一次元だった世界は今、三次元へ回帰しつつあるのだ。

お読みいただきまして、誠にありがとうございますm(_ _)m
またぜひ、よろしくお願いいたします❣️

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またいつかお読みいただけましたら、この上ない幸いですm(_ _)m


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Hayato  Matsui『逆転人生』共著者
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