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#2 「キャッシュレスは誰がトクするの?データ活用であきないを加速!」

第2回 「キャッシュレスは誰がトクするの?データ活用であきないを加速!」のデデデータ!!“あきない”データの話の台本・書き起こしをベースに、テキストのみで楽しめるようにnote用に再構成したものです。podcastで興味を持った方により、理解していただくために一部、リファレンス多めにしています。

私の暮らしとキャッシュレスへの興味

ここ最近、キャッシュレス決済という言葉を街中で頻繁に耳にする。店に入ると「現金お断り」と書かれた張り紙がちらほらあり、逆に「PayPay大歓迎」とか「クレジットカードOK!」と貼っている店もある。いったい何が起こっているのか。誰が得をして、誰が少しだけ辛い思いをするのか。私なりに考え込んでいる。

一筋縄ではいかない現実もある。店側の負担が大きいという話もよく耳にするし、高齢者にとってはスマホ操作がおっくうという声も根強い。どこまで本当なのか。どこまで時間がかかるのか。世界を俯瞰すれば、中国などではQRコード決済が日常の光景になっている。日本もそうなるのか。それとも、どこか別の方向へ進むのか。


キャッシュレスが広がった理由──メリットか、それとも時代の要請か

消費者の約40%が日常的にキャッシュレスを使っているというデータがある。店側にとっては決済手数料や端末コストが悩みのタネだが、それでも導入せざるを得ない空気が醸成されつつあるように感じる。「現金オンリーでやってきたからうちは変えない」という店主の声も聞く。しかし「カードが使えないなら行かない」という客も増えている印象がある。

誰が得をしているのか。実際のところ、消費者は便利かもしれない。現金を持ち歩く必要がないし、ポイント還元もある。事業者も、高額決済が発生しやすいクレジットカードなら単価アップを見込めるし、QRコード決済なら紙のレシートだけよりも細かい購入履歴を管理しやすい。さらに、決済事業者にとっては、利用者が増えれば増えるほど大きな経済圏を作れるという魅力がある。ソフトバンクやKDDI、楽天など、多数のサービスと連動させることで収益を拡大できるのだ。


ここで浮かぶ疑問がある。なぜクレジットカード決済は3~10%前後の加盟店手数料を課すのか。

答えは信用取引という仕組みにある。カード会社が顧客に立て替え払いをする分、リスクと事務処理が発生する。その対価として手数料を徴収する。これが世の常識だとすれば、手数料ゼロはほぼ不可能に近い。


ではQRコードなら安くなるのか。
確かに2~3%程度という話を聞く。しかし、その背景には通信事業やECなど他分野で利益を回収するビジネスモデルがあり、決済単体での儲けは小さくても構わないと考えている企業が多い。そこに「QRコード戦国時代」の様相を感じる。

人間が暮らしの中で「本当に必要な時間」を再認識すると、あまりムダな部分に労力を割かなくなると私は考えている。ここにDXの基本理念があると。
現金を数えたり、レジ締めの際に釣り銭をチェックしたり、振り込み用紙を送ったりといったアナログな作業は意外と時間を奪う。キャッシュレスに移行することで得られる省力化や自動化は、実は生活の質向上にも寄与するのではないかと感じるのだ。

「お金のやり取りをもっとスムーズにする」という発想が、人間がより大切なことに時間を費やす世界を作るかもしれない。これはあくまで私の仮説だが、意外とバカにできないと思っている。

単価アップという魔法──なぜ消費者はキャッシュレスで多く買うのか

キャッシュレスの普及が叫ばれる大きな要因の一つが「顧客の購買単価アップ」というロジック。クレジットカードを使うと心理的にお金を払う感覚が薄れるため、結果として高額商品に手を伸ばしやすいという説がある。

QRコード決済も同様だ。端末にタッチしたり、アプリを開いたりするだけで済むため、「手持ちの現金が足りるか」という心配が先に立たない。
現金を使うときは財布の中身を確認し、いくら残っているかを逐一意識する。その結果、「これ以上は使えない」と早めにリミッターがかかる。しかしQRコード決済は銀行口座やクレジットカードと紐づいており、残高を超えているか否かの感覚がやや希薄になる。そのせいで、あとで利用明細を見て驚くこともあるが、店舗側からすれば売り上げが上がるメリットが大きい。


内閣府やクレジットカード会社の調査によれば、支払い方法をキャッシュレスにすることで客単価が10%~13%増える事例が報告されている。楽天ペイのキャンペーン下では1.9倍に跳ね上がったケースもあるというから驚きだ。
この理屈を考えると、店舗が加盟店手数料を支払ってでもキャッシュレスを導入する理由がわかる。仮に手数料5%を負担しても、平均客単価が10%アップするのであれば、採算はとれる。

もちろん周りの店がすべて同じようにキャッシュレス化していれば、相対的な差別化にはならないかもしれない。それでも、導入していない店が「現金しかダメなんですか?」と敬遠される可能性を考慮すれば、やらない手はないと考えるだろう。

DXへの入り口──レジデータと顧客分析がもたらす未来

私が最も面白いと感じるのは、キャッシュレス導入がDXへの入り口になる点だ。

店舗がキャッシュレス決済を取り入れると、売上や顧客履歴などのデータを簡単に記録できる。以前は、現金とレシートを付き合わせる作業が主流だったが、これは非常に面倒だった。キャッシュレスならデータが自動で蓄積されるので、月間推移や客数の変化、時間帯別の売り上げが見える化する。


なぜそれが大事か。レジ締めの正確さを上げるだけでなく、在庫管理や仕入れの計画、価格設定の見直しにまで役立つからだ。たとえば「週末の夜だけ高価なワインがよく出る」なら、ワインの仕入れを強化し、平日に売れ残らないよう発注数を調整する。これまでは経験や勘でやっていたが、データに基づいて意思決定ができるようになると、かなりのコスト削減や売り上げ向上が期待できる。

さらに、大手企業やプラットフォーマー(楽天やリクルートなど)は、キャッシュレス決済に加えて、予約システムや会計ソフトなどを一括提供している。Airペイや楽天ペイを導入すると、顧客管理や予約管理がスムーズにできるようになる。こうしたエコシステムを活用すれば、中小店舗でもクラウドベースの強力な分析ツールを使え、同時に従来アナログだった業務を大幅に効率化できる。ここにDXの本質があると感じる。キャッシュレス導入は単なる支払い手段のデジタル化ではなく、経営全体のアップデートへの第一歩なのだ。

自社アプリやポイント活用──顧客体験はどこまで拡張できるのか

次のステップとして、店舗が自社アプリやポイントカードを導入し、顧客データと決済データを連携させる動きがある。ユニクロPayやMUJI Payのような事例がわかりやすい。アプリで支払いをすると、同時にポイントが付与されたり、キャンペーン情報を直接配信できたりする。レコメンド機能を実装すれば「あなたにオススメの商品はこちら」という提案が可能になる。顧客はレジで二度手間が減るし、店舗はより詳細な購買データを得られる。両者にメリットがある構図だ。

一方で、自社アプリ開発には多大なコストがかかる。月に数十万円から数百万円という予算が必要で、中小店舗がぽんと導入できるものではない。それでもクラウドサービスの進化によって、簡易的なアプリを安価に作れるプラットフォームが増えてきたのも事実。今は少し敷居が高いかもしれないが、いずれカフェや小売店が自前のQRコード決済とポイントシステムを持ち、独自キャンペーンを打ちやすくなる時代が来るかもしれない。そう考えるとワクワクする。

ただ、こうした取り組みが進むにつれ、顧客情報の取り扱い方が問われる。個人情報保護の問題やサイバーセキュリティのリスクが高まるため、店舗側にはそれなりの覚悟が必要。利便性とプライバシーのバランスをどう保つか、どこまでデータを可視化し、分析するか。ここにも大きな問いが潜んでいる。

普及の限界と頭打ち──本当に全員がキャッシュレスを受け入れるのか

日本国内のキャッシュレス比率は、現時点で40%前後と言われる。50%まではいきそうだが、そこから先がどうなるかは未知数だと考える。高齢者にはスマホ決済を難しく感じる層がいるし、通信環境が整っていない地域もある。「現金しか使えない店には行かない」という若い世代が増える一方で、「カード払いは苦手」という層も依然として存在する。

もし世界が完全にキャッシュレス化した場合、現金の管理にかかるコストは下がるかもしれないし、現金を扱わない店は強気の経営ができるかもしれない。しかし誰もがスマホ決済に移行するシナリオが実現するには、時間と世代交代、そして技術的な進歩が必要だろう。折り合いのつけ方を間違えると、取り残される人が出てくる危険性がある。デジタル格差という問題が存在する以上、キャッシュレスを推進する立場の人間は、そのあたりを丁寧に設計しなければならない。

まとめ──キャッシュレスは手段であり、DXへの入り口

以上、私が考えているキャッシュレスの動向とデータ活用の可能性をまとめた。キャッシュレスはあくまで手段にすぎない。支払方法を現金から置き換えるだけでは、ビジネスが根本的に変わるわけではない。しかしキャッシュレス導入によって得られるデータが、店舗運営や顧客サービスの在り方を大きく変革するきっかけになる。売上分析や在庫管理を高度化し、顧客行動を読み解き、新たな接客体験を生み出す。これはまさにDXの入り口だと感じる。

私自身も、データ活用や効率化の手法を駆使している。店の立場からすれば、時間と手間を奪うアナログ作業を削り、より本質的なサービスや商品に注力できるようになる。それこそがキャッシュレスの最大の効能ではないか、と考える。小さな商店でも大きなチェーンでも、やるべきことを明確にし、一歩ずつデジタルへ踏み出してほしい。

最後に、キャッシュレスが普及すると、今まで隠れていた課題や顧客ニーズが白日の下にさらされる可能性がある。あらゆるやり取りがデータとして残るからだ。嬉しい反面、怖い部分もある。しかし、この変化をプラスに活かせば、新しい事業モデルやサービス形態が生まれ、利用者にも事業者にもメリットが波及するだろう。私はそう信じている。


エピソード:第2回「キャッシュレスは誰がトクするの?データ活用であきないを加速!」

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専門用語解説

加盟店手数料

クレジットカードやQRコード決済などを導入した店舗が、決済を取り扱う会社に支払う手数料。取引金額の数%が一般的で、主に信用取引を管理するためのコストが含まれる。

QRコード決済

スマートフォンのカメラなどでQRコードを読み取り、支払いが完了する仕組み。カードリーダーが不要なため、導入コストが比較的低く抑えられる。

POSレジデータ

Point of Sale(販売時点情報管理)の略。レジを通過した売上情報や商品データを集約する仕組みで、在庫管理や顧客分析などに活用される。

キーワード

#キャッシュレス   #加盟店手数料 #QRコード決済 #データ活用 #POSレジ   #PayPay #クレジットカード

参考URLと概要

経済産業省プレスリリース(2023年4月6日)

URL:https://www.meti.go.jp/press/2023/04/20230406002/20230406002.html

2022年のキャッシュレス決済比率や金額、今後の普及目標などが公表されている。経済産業省がキャッシュレス推進に取り組む方針が記載されている

METI 「キャッシュレスを活用したデータ活用支援に関する報告書」

URL: https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/cashless/cashless_sub/cashless_data_utilization_report.pdf

キャッシュレス決済導入後のデータ分析がどのように企業を変革するのか、具体的な事例や効果をまとめている。

UNIQLO PayやMUJI Payなどに関するコラム

URL: https://www.watch.impress.co.jp/docs/series/suzukij/1303226.html

小売業が自社決済を導入する背景や、独自アプリに決済機能を組み込むメリット・課題が解説されている。

インフキュリオン社の自社Pay関連コラム

URL: https://infcurion.com/walletstation/column/20230601/

自社アプリを活用した「組み込み型金融」や「自社Pay」の導入事例を取り上げ、金融サービスを自社の顧客体験に統合する動きを紹介している。

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