ココがおかしいよ。アナトミートレイン
初めまして。「北海道若手治療家コミュニティ」の、ハナダです。
■学生時代にアナトレ第2版を図書室で読破
■就職直後に第3版を購入し読破
■アナトレをベースに数年間施術
■約2万円する筋膜セミナー参加
↓
□あらゆる勉強の末アナトレ懐疑派になる
という臨床歴、勉強歴をもって「アナトミートレイン・『逆』ガチ勢」を自称しています。
「逆」なんで、
反論材料を蓄えることに本気度を持って学んでいるということです。
今回はその一部をお伝えできればと思います。
「その程度のキャリアでガチ勢を名乗るな!」...と思う方には、ごめんなさいとしか言えないっす(汗)。キャリアは長さじゃなく、濃密な時間のことだと思っているので、悪しからず。
■理論の立て方に問題がある
例えば、「夏にアイスがバカ売れする」という現象があったとします。
それを分析すれば、「気温の上昇とともに販売数が増え、気温の低下とともに売れなくなっていく」という事実が見つかります。
そして「暑さの影響で、涼を求めてアイスを買う人が増えるから売れる」という理論が立ち上がります。
このように、正しい可能性が高い理論を構築するには、「現象→分析→事実→理論」という順序が大切です。
■「解剖学の再解釈」としての主張
しかし、アナトレは
まず理論ありきで、そこに臨床を当てはめることで形成されてきた「学術的な新発想」です。
理論が先行し、その理論に合う現象を抜き出して体系化されています。先程の「正しい可能性が高い理論を構築する方法」とは逆の手順がみられます。アナトミートレイン第3版の序章にはこう記載があります。
分かりやすくいえば、
「治療法ではなく、治療法を生み出すための、新しい体の見方を作りましたよ。」ということです。
「解剖学の再解釈」ともいえるこの成り立ちからみても、その普遍的な正確性には疑問が残るわけです。
※といっても、世の中の多くの治療テクニックは現象をベースにしていないことが多いのですが..
■正確な理論と、使える理論のどちらが大事か
こうした理論が、「全身の関連性を支持する理屈」を求める業界全体の動きと親和性が高いことは想像がつきます。その結果、会社の育成プログラムの中で若手に学ばせるケースが増えた、というのが実態だと思います。
本来であればこういった新しい治療理論は、EBMの観点から見ても鵜呑みにせず、慎重にその正誤を判断されるべきです。
このことは、本文中にも
とあり、エビデンスに欠ける理論先行型の考え方であることは著者も認識しています。
さらにアナトレには、
え、そんなこと許されるんですか? という目を疑うような記載があります。
第3章からは各ラインの解説や手技の説明が始まりますが、これはいわゆる「ハウツー」です。実用性のあるハウツーばかりを求めずに、正確な理論かどうかをちゃんと読んで判断する力が問われます。
■あくまで「提唱」の域を出ない
この書籍は、序章から理論までの前半部分は「あくまで新しい考え方だから、正しいかどうかは分からないけど、応用できるかもしれないよ」というニュアンスの文章が繰り返される構成になっています。
序論や理論部分を読まずにラインから読んだ人、職場でライン部分だけを習った人はここが認識から抜けている可能性があります。
あまりに断言する主張が少ないのでは?という指摘に対しては...
と、「乞うご期待!」と言わんばかりのまとめ方で済まされています。
アナトミートレインを支持する論文「システマティック・レビュー」が存在することも勉強の過程で知っていますが、アナトミートレイン単体をエビデンスとして治療を提供したり、スタッフ教育をすることは立ち止まって考えるべきかとハナダは思います。
■アナトミートレインの実態像
ですから、この本は「学問的な読み物」とハナダは考えています。「治療法の教材」としてはオススメいたしません。
で、治療効果はどうだったのか?というと、
僕自身の実体験として、「特にありがたみを感じなかった」というのが感想です。
腓腹筋に介入して、脊柱起立筋が触診上緩んだ(≠痛みが取れた)経験はあまりありません。足底をいじった直後に、エコーモニター下や筋硬度計などではっきりと脊柱起立筋が緩む様子が、映像などで出回っているのも確認したことがありません。
(僕のところまで映像が届いていないだけかもしれませんが、少なくともアナトレを推し進めている方はそんな映像を見たから重用しているのだろうと信じています。)
こればかりは、手技を扱う人物、患者との相性の問題は避けられないので、「アナトミートレインは、僕がやっても効果が出ないから嘘だ!」とは言いません。しかし、アナトレを学んで自分なりに実践したことは、「特定のテクニックや理論に視野を狭めてしまう」ことから離れて俯瞰的な見方をする、そのきっかけになったのは事実です。
俯瞰的な見方をするとはどういうことか?というと、
「筋膜がすべての痛みの原因」というのは違う
し、「介入はアナトミートレインで考えるのが基本」も違うということです。
アナトミートレインや筋膜以外の機序(交絡因子)で変化が出た可能性も、もっとよく考えられるべきです。
体を「筋膜」だけで語る、「歪み」だけで語る、「量子力学」だけで語る。そんな偏った『レンズ』を通して生身の身体を見るのはミスリードを招きます。
僕がこの記事で伝えたいのは、
●本はちゃんとよく読みましょう。
●すごそうな理屈やテクニックを見つけても、視野が狭くならないようにしましょう。
ということです。
俯瞰的に物事を捉えて、高いリテラシーで情報を選別するには、そういった考え方が備わった人に近づくことが一番手っ取り早いと思います。
ぜひ視界と、世界を広げてください。
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