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難儀な木

我が家の植え込みは今、春真っ盛りと言った感じである。水仙、チューリップ、フリージア、ムスカリが全部花をつけていて、目にする度に嬉しくなってしまう。
アリッサムは小さな白い花を次々咲かせている。ネモフィラは間引きをしなかったせいで、もしゃもしゃに生い茂ってしまいえらいことになっているが、青い花がいっぱい咲いていてとても綺麗である。近所の方にも
「良いわねえ。これ、なんていうお花?」
と思わぬお声がけを頂いて会話が弾むこともあり、ちょっとした交流もできて嬉しい。
近所の親子が
「お母さん、ねーお花いっぱい、きれいだねー」
「そうねー、きれいねー」
なんて会話するのが聞こえてきたりして、ほのぼのさせてもらうこともある。

植え込みには元々植わっていた植物もある。実はフリージアと水仙、ムスカリは私が植えたものではない。でも綺麗に毎年咲いてくれる。水をやるだけで特に手入れもしないのに、丈夫なものだと思う。
植わっていたのは花だけではない。何本かの木もある。このうち、とても扱いの難儀な木がある。
ヒイラギだ。

この家を借りる時家の外観写真を見せてもらったら、このヒイラギがかなり生い茂って電線にかかりそうになっていたので、
「あの…これってこのままですか?」
と聞いたら不動産屋さんは
「はいはい、ちゃんと伐採させてもらいますから大丈夫ですよ」
と答えてくれた。
入居の際は確かにバッサリと切り倒されていた。何故か家に木を植えたいという願望のある夫は残念がったが、私は胸をなでおろした。

が、この木の生命力の強さと言ったら、半端ではない。
入居してしばらく経った頃、ようやく色々落ち着いたので、ほったらかしの植え込みを手入れしようと思って見てみると、切り株からにょきにょき枝が出てきていた。こりゃいかん、と切りにかかるが、生えてから時間が経った枝は固いし、葉のチクチクは軍手の上からでも飛び上がるほど痛い。始末するのに一苦労した。
めげずに一生懸命虎刈りにしたが、暫くするとすぐまた生えてくる。雑草並みの強さだ。
まだ冬の寒い時期はさすがにそうそう伸びないので、ヒイラギも私もお互いに小休止と言ったところである。が、ここのところ温かくなり、急にコイツの緑が濃くなってきた。早く切らないと、とんでもなく固く切りにくくなってしまう。油断できない。今日は頑張ってだいぶ散髪した。ちょっとさっぱりと、見やすくなった。

不動産屋さんによると誰が植えたというのではなく、おそらく鳥が実を運んできたのだろう、ということだった。ご丁寧に二本ある。鳥め、なんでこの植え込みに二つも実を運んできたのか。
他の木にはアブラムシがついたりするのに、この木にはつかない。病害虫には強い木らしい。他の木より伸びるスピードが早いように思うが、調べると決して成長の早い木ではないようだ。ウチの環境が最適なのだろうか。
兎に角、この強さには降参しそうになる。

昨年の夏には朝顔を沢山植えていたのだが、ツルがこのヒイラギに絡まってしまうと切りにくく、とても厄介だった。結局絡まっている枝は放置するしかなく、朝顔のツル同様伸びたいだけ伸びていたのだが、秋になって朝顔の株を撤収する時に一緒に切った。これが固くて痛くて大変だった。
もうこりごりだ。今年はちゃんとヒイラギに絡まらないよう、気を付けてやらねばと思っている。

子供の頃はヒイラギの葉を見ると、クリスマスケーキなどの装飾を思い出しワクワクしたものだが、今の私は模造品でもヒイラギの葉を見ると嫌になる。魔除けになるとか、防犯に役立つとか言うらしいけれど、それなら一本で十分だ。
これからますます伸びるようになってくるだろう。休みの日は『ヒイラギ刈り』に一定の時間を割くことになる。
しばらくの間、この攻防は続きそうだ。やれやれである。