今日も良い日
朝、家の外に出ると、植え込みの朝顔が合計12輪も咲いていた。忙しい朝の束の間の時間、夫としばし愛でた。
まだまだ蕾が沢山ついている。楽しみやね、と朝食を摂りながら話した。
今日は公休である。やる事はいっぱいある。
8月のコンクールの服装が黒いブラウスと黒いズボンに決まったので、持っていない黒い半袖ブラウスを買いに近くのショッピングモールまで出かけた。
我が家からモールまではなだらかな登り坂が延々と1キロくらい続く。途中は大きな駅があり、私の勤務先のスーパーもあり、複数の商業施設と行政機関が集まった賑やかな所である。
駐車スペースがないため、この辺りの宅配業者の配達員は大体が離れた所に車を停め、そこから台車に荷物を積んで配達先に向かう。
もう少しで駅というあたりで、登っていく私の向かい側から一人の配達員が、台車に沢山の荷物を積んで坂を降りかけていた。首からタオルを提げている。見るからに暑そうだった。
その時、小学生くらいの男の子が走って私を追い抜いて行き、台車とぶつかりそうになった。
配達員は子供を避けようと、急停止した。慣性の法則に従って荷崩れがおき、荷物が結構広範囲に地面に散乱した。
気の毒な配達員は慌てて荷物を拾って積み始めた。
すると通りかかった人が次々と荷物を拾って配達員の所に集まってきた。
赤ちゃんを抱っこしたお母さん。サンダル履きの若い女性。ワイシャツ姿のサラリーマン風の男性。日傘をさした初老のご婦人。みんな歩くついでに拾ったげよう、といった気軽な感じで荷物を置いていく。
配達員は恐縮して額をゴシゴシタオルでこすり、いちいちお礼とお詫びを言いながら受け取って積み直していた。
いい光景を見せてもらって、気分上々でブラウスを見に行く。
入りたいけど敷居が高いと思っていた店に意を決してエイっと入ると、コンクールにお誂え向きの黒い半袖ブラウスを発見した。ついでに気に入ったデザインのブラウスをもう一着見つけ、いつもは買わない、ちょっと秋を先取りした色目を購入。
そしたら2点まとめ買いという事で、1000円も値引きになった。
おお、またまた良いことがあった。
益々気分が上向く。
その足で夫に頼まれていたお茶の葉を買いに、少し離れたお茶屋さんに向かう。いつも愛想の良い商売熱心なお茶屋さんで、我が家はここでいつも買う事にしている。
いつもの茶葉を買ったら、水出し緑茶のお試しパックを一つくれた。これも美味しいんだよね、ツイてる、と嬉しくなる。
今日は風が強く、折り畳み日傘は役に立たないなあと思いつつ家へと歩いていたら、前を行くご婦人が帽子を飛ばしてしまったのが見えた。
あ、と思った瞬間、向かい側からきた親子連れの子供のほうが走り寄って拾い、ご婦人に帽子を握った腕を黙って突き出した。
「あら、ありがとうねえ。助かったわ」
ご婦人は帽子を受け取り、子供とお母さんに向かってお礼を言った。
子供は大真面目な顔を汗だらけにして、ご婦人の前に突っ立っている。お母さんは赤ちゃんを抱っこしていた。子供の麦わら帽子の頭をなでながら、何か話しかけている。
ご婦人と親子は少しの間話していたようだった。
いい光景を見せてもらって、胸があったかくなった。
家に入る前にふと空を見上げたら、真っ青な空に龍の形をした雲が浮かんでいた。金運アップのお告げかも知れない、と思ったら嬉しくなった。
良い事ばっかり起こるなあ。幸せだなあ。有り難いなあ。
今日も良い日だなあ。