甘くないポン菓子
子供の頃、冬の遊び場は近所の田圃であった。稲刈りが済み、ゴツゴツとした稲の切り株が並ぶ田圃で、凧揚げや鬼ごっこをよくしたものだ。農家の足跡の形に固まった粘土質の地面は走りづらく、よく転んだりもしたが、アスファルトやコンクリートと違ってあまり痛くない。ただ、足跡は結構深いところもあり、なかなか全力疾走は出来ない。
稲刈りの後、最近は藁を粉砕して田に直接撒いてしまうようだが、昔は稲穂のついた藁を地面から機械で刈り取り、それを干してから脱穀する、という順番だったようだ。(私自身は農家の子ではないので、間違っているかもしれない。)
脱穀した後の米の殻(籾殻)はよく田圃に山積みにしてあった。そこに短い煙突が差してあり、じわじわと燃えるようにしてあった。独特の香ばしい匂いがした。
時折、この籾殻の中に脱穀に失敗した稲穂が混じっていることがあった。それを見つけて拾い出し、じわじわ焼けている籾殻の上に置く。すると、やがて軽く弾けて天然のポン菓子が出来る。アツアツを友達と一緒に剥きながら食べる。勿論、味などついていないが、とても香ばしい。
米粒一つはとても小さくて、腹を満たすようなものではなかったし、そんなに沢山の稲穂が落ちている訳ではないが、自分達で見つけて調理?して、その場で友達と食べる、というのはとても嬉しくてワクワクしたものだった。
今はそんな遊びも存在しないのかもしれないが、あの冬の光景は私にとって未来に残しておきたい懐かしい風景の一つである。