心強い味方
連休中は
「今日の夕飯は何が良い?」
と夫に聞くことが多い。飽きのこないように毎晩のメニューを考えるのは、料理が苦手な私にとってはあまり愉快な作業ではないからである。だから
「なんでもええわ」
と言う答えが一番困る。何か無理にでも捻りだして欲しい。自分に出来ないことを夫に丸投げしている気がするが、夫の意思を尊重するという名目の下、その問題は棚に上げられている。
夫は色々言ってくれるが、よくリクエストしてくれるメニューの中に
「鶏の唐揚げ」
がある。
これは子供も大好物で、本当によく作ってきた。
主婦としては揚げ物は後始末が面倒なので、なるべくしたくない。が、安くてボリュームがあって、味付けにはずれがなく、もれなく男連中は喜ぶに決まっている唐揚げ様は、カレーに次ぐ素晴らしいメニューである。
人にリクエストを要求していながら、「それは○○だからイヤ」という勝手に私が却下する確率が非常に低いメニューでもある。
子供が小中学生の頃は、お母さん達と夕飯のメニューについて話すことも多かった。誰に聞いてもどの家庭でも、唐揚げは間違いなく大歓迎されていた。
男の子三人のお母さんなんかだと、唐揚げは「キロ単位」で作る、と言っていた。我が家は一人っ子なので、食べ盛りでもそこまで作ったことはないが、彼女たちが言うには
「延々と揚げ続けねばならず、立っているのがしんどい」
という事であった。想像したくない感じの辛さである。
マンガ家の西原理恵子さんが、息子さんの友達を大勢家に呼んで、唐揚げパーティーをしたら家じゅう油っぽくなってしまった、と面白おかしく描いておられたことがあったが、冗談ではなく本当だったんだろうと思う。
複数名の食べ盛り男子の為の唐揚げなんて、屋台並みの大変さだったろう。
ウチの実家の父も唐揚げが大好きである。父が退職して間もない頃、毎日作る昼食のメニューに頭を悩ませていた母は、
「お父さんは取り敢えず、唐揚げ置いておけば機嫌が良い」
と言っていた。父自身も、
「肉では鶏が一番好きだ。毎日唐揚げでも良い」
と明言していたので、ウチの実家の昼食にはよく唐揚げが登場していたらしい。
我が家も近いうちに同じことになるような気がする。
我が家の唐揚げは二度揚げする。
まず醤油とショウガで下味をつけ、小麦粉を袋に入れてまぶす。一度目は中温くらいで、一分三十秒揚げる。四分置いて余熱で徐々に熱を中まで通す。その後高温で約四十秒揚げて、油をきれば出来上がりである。
私は火の通りが悪くなるのを恐れて小さく切ろうとするのだが、夫も子供も大きいのが良い、と言ってきかない。食べ応えを重視すれば確かにその方が美味しいのだろうが、私の作る唐揚げはどうしても市販品より小さめになる。家族にはこの点は不評だ。
もうちょっと工夫の仕方があるのかもしれない。またおいおい調べてみるとしよう。
以前住んでいた家の近所に小さな中華料理店があったのだが、そこは何故かどのメニューにも唐揚げが一つ、絶対ついてくるので有名だった。しかもデカい、大人のゲンコツくらいの大きさの唐揚げである。
なのに、「唐揚げセット」というメニューも別に存在する。写真を見ると、殆どお盆の上の六割くらいの面積がそのデカい唐揚げで占められている。見ただけでお腹がいっぱいになりそうである。
ジューシーでボリュームがあり、この店の唐揚げは大人気だった。しかし、あの大きさの唐揚げにどうやって火を中まで通すんだろう、と私はいつも疑問に思っていた。ちゃんと通っていたから不思議である。
鍋の大きさが違うのか、火力が違うのか、油が違うのか。未だに謎のままである。
女の子はそんなに「唐揚げ唐揚げ」と言わないようだが、男性は年齢を問わず大体唐揚げが好きなようだ。「唐揚げ嫌い」と言っている男の人を、少なくとも私の周囲では見たことがない。
取り敢えず味が簡単に決まり、誰にも好評で、ボリュームが出て安い。昨今は鶏肉もそうそう安いとは言えなくなってきているけれど、困った時はついつい頼ってしまう、私にとって心強いメニューである。
※本日よりアイコン変更しました。
noterでイラストレーターである のだかおり 様に描いていただいた、私です。大好きなシマエナガを抱っこしています。
「みんなのフォトギャラリー」で出会ったあたたかい絵柄にすっかり魅了されてしまいました。ご本人にお目にかかりたくなり、銀座伊東屋さんで開催中の「はんコレ!」におしかけて、描いて頂きました。末長くよろしくお願い申し上げます。
のだ様、お忙しいところ、無理なお願いを聞いて頂きありがとうございました。