変わり種
昨日の朝、ゴミ捨てに行くついでにウチの花壇の朝顔を何気なく見ると、中に一輪、非常に変わった形の朝顔を見つけた。
花弁が六つに分かれている。朝顔というよりも鉄線のような花だ。色も薄い紫で、中に濃い紫の筋が入っているから、本当に鉄線が咲いているのだと錯覚してしまったくらいである。
「ねえ、変わった朝顔が咲いてる!突然変異かなあ」
帰って早速夫に報告すると、
「へえ。写真撮っとこうっと」
と面白そうに言って、スマホのレンズを向けて一枚撮ってから出勤していった。
夫は帰宅後、
「おい、あの朝顔、珍しいもんやっちゅうことがわかったぞ」
と言って、収集ホヤホヤの付け焼き刃的知識を、得意げに披露してくれた。
出どころは全部Google大先生に決まってるんだけど、興味を持って調べただけ、褒めてあげることにした。
夫によると、あの変な朝顔はその名もずばり、『変化朝顔』といい、熱心に育成している愛好家もいるらしい。植物園なんかでも変化朝顔の研究・種の保存をしているところもあるようだ、と聞いて驚いた。
花の形も多種多様で、ウチに咲いたような花弁が六つに分かれたものや、ぐしゃっと握りつぶしたような形のもの、フリルが沢山はいったような形のものなど、どれも「え?これって朝顔?」と訊きたくなるような花ばかりである。
何の原因でこんな花になるのかは分からないが、やはり突然変異によるものらしい。
比較的単純な形のものは種がちゃんと出来る。これを『正木』という。かなり変わった形のものになると、種が出来ない。これを『出物』というらしい。『正木』には朝顔の面影?があるが、『出物』は『アンタは一体何者や?』と訊きたくなるような花が多い。
古くは江戸時代からこの変化朝顔を咲かせることに熱中する人もいたらしく、中にはこの花を求めすぎるあまり、没産してしまう!人もいたらしい。
娯楽があまりない時代だったから、そこまで熱中する人もいたのかも知れない。
夏の花壇の涼し気な彩りに、と思って植えたにもかかわらず、今年の朝顔は夏の間心配になるくらい、全く咲かなかった。
昨年の朝顔は百均で買った種の所為か、葉ばかり元気で花が殆ど咲かなかったのを反省し、今年はキチンとした種苗店で購入したものを植えたのであるが、どうやら種の値段の所為ではなく、気温の所為で花が咲かないらしい、と気付いたのは、八月も終盤に入った頃だった。
沢山咲き出したのは九月も中旬になってからである。
加賀の千代女も今年の夏だったら、手桶に巻き付いた蔓をぶっちぎって井戸の水を汲んでも後悔しなかったんじゃなかろうか。
もう朝顔なんてとっくに終わっていても良い頃になって、こんな面白いものが見られるなんて、植えた頃には想像もしなかった。
そういえば先々月の終わりには、植えた記憶のないアマリリスがいきなり顔を出し、あっという間に濃いピンク色の花を花壇の片隅に咲かせて、驚くことになった。どうやら前の住人が植えた球根が残っていたらしい。
昨年も、その前も咲かなかった花である。なぜ思い出したように今年咲いたのか、全然分からない。水とか、気温とか、何か条件が急に良くなったのだろうか。植物とは不思議なものだ。
この花壇との付き合いも四年目になる。
いままで色んな花を植えた。おかげで花の種類や特性もほんの少し、覚えた。今は朝顔の他に、日日草とペンタスの可愛らしい花々が目を楽しませてくれている。
通りに面しているので、手入れをしていると近所の方から
「綺麗ですね」
と声をかけられることも多い。
面倒なこともあるけれど、毎朝精一杯咲いている美しい花々を目にするのは、やっぱり嬉しく気持ちが上がる。
思わぬ変わり種にお目にかかったのは、これからやってくる幸運のお知らせだ、と思っておくことにしよう。
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昨日の記事のコメント欄でお祝いの言葉を下さった皆様へ
この場をお借りしてお礼申し上げます。
ありがとうございました。