『ちょかちょか』しよか
昨日、夫は早朝から友人とツーリングに出かけて、夕飯前に帰ってきた。
友人と言っても自分よりひとまわり以上若い、まだ小学生のお子さんがいる人である。単身赴任で休日はNetflixをみているか、ゲームをしているか、寝ているかの何れかだと彼がボヤいていたので、夫が自分の方から誘ったのだと言う。
「いつまでも"ちょかちょか"してんなあ、アンタは」
としみじみ呆れて私が言うと夫は、
「そやねん。オレ"ちょかちょかジジイ"やねん。エエやろ」
と言ってニヤニヤした。
因みに"ちょかちょかする"は落ち着きなく、ガサガサと動き回る様を意味する、関西弁である。ちょかちょかする人(主に子供)の事を"ちょか"と言ったりする。
"年甲斐もなく"という言葉がある。
年齢相応の思慮分別がなく、愚かで浅はかな様、の事を指すのだと思われる。
この言葉を使うと、我が夫は『年甲斐もなく、朝から夕方まで若い子と遊んできた』おっさんであると言う事になる。
ある意味正解である。
でも、こういう時の夫はとてもイキイキしている。体調も良さそうだ。
今回も前の晩は嬉しくてなかなか寝付けず、朝は4:00に目覚めてしまったと言うから笑えた。
まるで、遠足の前の晩の小学生である。
一緒に行った友人も同様だったそうだ。似た者同志に違いない。
かく言う私だって、自分の子供と同じか下手すればもっと若い子達と一緒に、楽器を演奏する事にいそしんでいるのだから、『ちょかちょかおばさん』なのだろう。
そう言えば、かつて同じ楽団にいた友人が、やれコンクールだ、やれ定期演奏会だ、と忙しく動き回っている自分をみたご夫君に、
「お前、ええ加減落ち着けよ」
と言われた、と言っていた。友人は、
「まだイヤ」
と返事したそうだ。
うむ、潔い。ご夫君も諦めがついただろう。
考えてみれば、『年甲斐もない事をしている』時は自分にとってとても心地よい事が多い。
『童心に返る』という感じなのかも知れない。
純粋無垢で、真っ直ぐな子供のような心で物事を楽しむ、それは人間の本来そう在りたい姿なのだと思う。
『年甲斐』という言葉に、年齢相応で在りなさい、という教訓めいた意味が含まれているのだろう。だから『年甲斐もなく』と言われると、なんだか先生に怒られているような気分にさせられる。すいませ~ん、と頭をかきたいような感じを受ける。
でも在りたい自分でいられて、公序良俗違反にも、警察のお世話にもならずに済んでいるなら、何歳になっても『年甲斐もなく』『童心に返って』『ちょかちょかする』のも良いかもね。
と、ヘルメットのお手入れに余念のない夫を横目に見ながら、思っている、平和な休日の朝である。