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イスタンブールのシャイで明るい店員さん
イスタンブール空港に着いたのは、 羽田空港から約13時間経過した現地時間の朝5時。なぜか保安エリアにつながっていない出口に通された。乗り継ぎの時間は2時間ほどしかないのに、保安検査をここでも受けなくてはならない。しかも、PCをカバンから出すように促される。
私の旅行は、バックパックが中心だ。旅行の際には南京錠をかけている。開けるのに手間取ってバタバタしてしまう。「早く開いてくれ…」と内心思う。やっとこさ、無事に開けられた。PCをバックパックから出す。続いて、身の回り品を次々とトレイにおいていく。最後にパスポートをおいてゲートを通る。
「広いって言うか、デカいな」と私は思う。保安エリアはとても広く、搭乗口は A から G まである。多分 A から F まで徒歩で移動するのは20-30分コースなのではないか。迷ってしまう可能性はないが、間に合わない可能性は全然ある。私の搭乗口はB。急いで向かう。
搭乗口付近に着く。20分くらい歩くことになってしまった。ついた頃にはちょうど、フライトの疲れと、歩き疲れが重なって少し休みたくなってきた。近くのイタリアンカフェのお店を覗き込む。24時間営業していてありがたい。すかさず、お店の人に声をかけられる。少し小柄な、金髪の女性店員である。
「アメリカーノをもらえますか?」と伝える。「ソフトとハードどっちがいい?」と聞かれる。言ってる意味がわからなかったので、私は「それって何が違うの?」と聞き返す。何か色々言ってるけど、どうやらエスプレッソの濃さを聞きたかったらしい。「ダブルで」と私は答える。
支払いを終えてレジ横で待っていると、突然先ほどの店員さんが歌い始めた。「よくわからない、よく知らない歌だが好きなんだろうか」と私は思う。
歌っている方に目を向けると彼女とバッチリ目が合ってしまった。多分、私は疲れた表情で彼女をみてしまったのだろう。「こいつ何してんねん」と無言で言っていたに違いない。彼女が恥ずかしくなったのか、他の店員の後ろに隠れ始める。
「アメリカーノどうぞ」と別の店員さんが渡してくれる。「彼女、シャイなの」とその子は私に教えてくれる。「この曲知ってる?」とまた歌い出す彼女。「ごめん、よく知らない」と答える私。「有名なんだけどなぁ」と彼女は言う。
席に座ってアメリカーノを飲む。疲れが解けていくような気がした。搭乗時刻が迫るに連れて、お店に人がなだれ込んでいくのをゆっくりみている。「ぼんやりするのも悪くないものだ」と思う。流れていく人たちをただただみている。
しばらくすると、人が落ち着いて先ほどの彼女が近くにやってきた。フードを補充するらしい。私の席の近くにはディスプレイが合ってそこにフードが並んでいるのだ。パンやクッキー、など今の私は到底食べられなさそうなものばかりが並んでいる。
「楽しんでる?」と彼女に聞かれる。「ありがとう、楽しんでるよ。君は楽しそうだね」と私は答える。「そうよ、だってもう8時間も働いてるんだもの」と彼女は答える。トルコにも深夜営業があるなんて思いもせず、私は驚いてしまった。
搭乗が迫ってきた。ここ、イスタンブールからパリ(シャルルドゴール国際空港)までは約3時間ほど。羽田・沖縄よりは少し遠いが、羽田・台湾よりは近いくらいの距離感である。休日にふらっと行ける範囲だろう。実際に、多くのフランス語が飛び交っていた。
彼女に一言伝えていこうかと思ったが、レジはごった返していた。別の店員さんに「ありがとう」とだけ伝えて私も席を立つ。お手洗いを済ませ、搭乗レーンに並ぶ。パスポートをチェックされ、順番に搭乗ゲートに流されていく。またいつか出会うことがあれば、その時にお礼を言おうと思った。
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