分析組織についてのまとめ

こんにちは。@hayata_yamamotoです。

分析組織をつくる時に気をつけた方がいいことってなんだろう、どういう組織があるんだろうということを最近はよく考えています。

主観的な思いや主義主張を述べること自体は簡単にできますが、それは属人的ですし、共感が得られるかも人に依存してきます。同じチームには色々な人がいるものなので、ある程度合意を形成でき、再現性のある方法というものを模索したくなっています。(もちろん、個人の意見は尊重されるべきですが)

そんなこんなで、分析組織を調べていると面白いレポートを見つけたのでまとめます。レポートタイトルは、"Building an Analytics-Driven Organization"です。これはAccentureがまとめたもので、コピーライトを見ると2013年とあるので、今から5年前に出されたもののようです。

今回はセクション2の"Organizing and Governing Analytics Capabilities across the Organization"に焦点を当てます。説明は結構意訳です。

基本的な4つの視点

分析を活かすための要素や組織にはどういうものがあるのか
分析を効率的で、継続的にビジネスに活かしていくために基本的な4つの視点があると紹介されています。それは以下の四つです。

Sponsorship
外部に対しての説明責任を果たせる人で、分析結果を活かすことのメリットを理解していて、熱狂的な人。企業内だと決裁権のある人
Leadership
分析をどのようにビジネス活用していくかを広めていく役割を担う人。
データを活用するような社内文化を醸成したり、分析が社内の意思決定に活用されるようにしていく役割。
Funding
分析にはコストがかかるので、財源確保の方法が決まっていること。
会社によって異なる。
Governance
社内でどれくらい分析需要があって、どれくらいのリソースがあるかの需給関係で効率的に分析組織を統治する必要がある。

最後のGovernanceに関して、チームのデプロイ方法を色々説明してくれています。レポートの説明を受けて自分の解釈を書きます。なお、以降の写真は全てアクセンチュアのレポートからの引用です。

Decentralized

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組織的に、分析チームを配置せずにそれぞれの部門ごとに分析組織をおくやり方。それぞれの部門内での意思決定は早くなりそうだが、分析者間の横断的な繋がりは生まれにくい。特定の問題に対して強い分析者や分析組織を作ることができそう。チームメンバーの一員としての分析者。

Pros
* ドメイン知識を共有できそう
* 意思決定が早くなりそう
* それぞれの部門内での多様性が高まる
Cons
* 横断的な繋がりがなくなる
* 分析者の多様性が減る(規模によるが)
* 分析が属人的になりそう
* 分析内容が特定的
* 組織内の流動性を別施策で高める必要が出てきそう

Functional

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分析者が必要な時に、分析要員として派遣されるような組織体制。通常は、特定のビジネス要件に対して分析業務を行なっている訳ではない。リソースが一つの場所にプールされ、分析者のプロファイルに応じてアサインを決定できそう。傭兵的な感じ。

Pros
* 分析者が同じ場所にプールされる
* 色々な分析テーマに関われる
* ビジネス以外の知識は高まる
Cons
* ビジネスサイドとの情報が非対称になる
* 分析者間の協調、協業が起こりにくい
* 分析以外のコミットメントを求めるなら、適切なインセンティブ設計が必要になりそう
* 単発的なプロジェクトに関わることが増える
* ビジネスサイドとの相互理解には時間がかかりそう

Consulting

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分析チームを別で置いて派遣する仕組み。ぱっと見コンサル会社のビジネス形態と似ているように見えます。先着順で派遣をするらしい。つまり、リソースがないと分析者が派遣されない仕組み。ニーズやリソース管理、アサイン最適化が分析チーム側で行われないという意味で、非中央集権的。

Pros
* 分析者が一つの場所にプールされる
* リクエストすれば、どの部門でも分析組織にアクセスできる
* リクエスト先が明確で、派遣決定までのプロセスも明確
* 分析組織の多様性は高まる
Cons
* リソースが少ないと依頼がたまる
* 分析依頼主、分析者の関係性になる
* プロジェクトに対するコミットメントが薄まる
* 派遣先での分析者の多様性は低い

Centralized

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リソース配分をハンドルする機構が存在する中央集権制。先着順ではなく、優先順位や難易度に応じてメンバーのアサインを管理してくれる。これにより、分析組織のポートフォリオをある程度最適化できる。いわゆる分析部門をおくとこういう感じになりそう。

Pros
* 分析者が同じチームにプールされる(多様性が高まる)
* アサインを優先度などで管理することで、メンバー配置を効率化したり、タスク処理速度をより早くしたりすることができる
* 企業の意向やビジネス意向に協調できる
* 様々なタスクを経験できる
Cons
* 分析者は、結局のところ派遣される立場であり、ビジネス要件に対するドメイン知識が不足する
* 分析者のインセンティブは、分析チームのKPIに左右され、適切にインセンティブを設計しないと、ビジネスKPIへのコミットメントが下がる
* ビジネスチームの多様性は低い
* 分析者とビジネスとの相互理解に時間がかかりそう

Center of Excellence

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この編成はうまい訳が思いつかなかったです。

研究機関でよく使われる形態らしいです。先ほどの中央集権との違いは、分析チームのメンバーを派遣するのではなく、プロジェクトに参画させるところにあるでしょう。派遣された分析者はチームへのコミットメントを求められ、CoEと協調しながらプロジェクトに参加します。

分析者を統括する機構が、タスクの優先順位や難易度などでアサインを効率的に管理しつつ、優秀な人材を適切な場所に配置し、ビジネスサイドでは分析者がプロジェクトに包括的に参加する形態になります。

Pros
* ビジネスチームへのコミットメントが高い
* 分析者が主導権をとって進められる
* アサインが効率化される
* 色々な業務に携われる
Cons
* 分析者の能力が低いとプロジェクト自体に影響が出る
* 中央のマネージャーに高いスキルが求められる
* 分析以外の業務にも関わる必要が出てくる
* 分析チームの多様性が下がる

Federated

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最後は、連邦制です。CoEとCentralizedを使い分けるとても高度な組織体制に見えます。必要性や優先順位に応じて、プロジェクト自体に派遣するかタスクにアサインするかを使い分け、適切なアサイン設計をしながら、全社的な主導権をとっていく必要があります。

Pros
* 色々な業務に関われる
* アサインが効率化されている
* もっとも柔軟な組織体制
Cons
* CoEがポンコツだと働く分析者がひどく振り回される
* CoEの負担が非常に重い
* システム的にワークさせるのが非常に難しい
* 分析者のプロファイルとタスクの優先度などさまざまな情報が見えるようになっている必要がある

まとめ

分析組織のデプロイ方法についてまとめて見ました。
それぞれ会社のフェイズや分析者の人数によって適切な配置方法が異なってきそうです。大事なのは、それぞれの組織メカニズムの良し悪しを理解した上で、現状適切な組織にしなやかに変化していくことではないでしょうか。

「こうであるべき」というものよりかは、「今こういう状況なら、この方が適切だね」を繰り返していく必要がありそうです。
また、色々調べたら共有します。

Reference

https://www.accenture.com/us-en/~/media/Accenture/Conversion-Assets/DotCom/Documents/Global/PDF/Industries_2/Accenture-Building-Analytics-Driven-Organization.pdf
https://www.altexsoft.com/blog/datascience/how-to-structure-data-science-team-key-models-and-roles/

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山本隼汰 | Hayata Yamamoto
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