乱読行【ネアンデルタール人は私たちと交配した】
異世界ものもすっかり流行りを超えて定着の域に達しているが、バカバカしく出オチ感のある作品の数々。
呆れながらもついつい手に取ってしまう。
多くは読んではみるもののその場限り。ネットにしろ漫画喫茶にしろある程度読んだら満足してしまう。奇抜な設定による意外な面白みが一巡すると満足してしまう。物語が途中でも次に手が伸びないジャンルだと思う。
そんな中、ふいに手にした『異種族レビュアーズ』でちょっとした衝撃を受けてしまう。詳しくはここでは言及しないが、ある種の新しい世界が開けてしまった。手塚治虫先生が残した私の中の萌芽を大きく育ってしまったようだ。その後、私は異世界ものの中でも特殊な異種族性交モノを読み漁るようになってしまった。
そんな中、出会ったのがこの作品である。
ネアンデルタール人は私たちと交配した スヴァンテ・ペーボ著
もちろん前段はほぼ嘘である。
さて昨年、ノーベル賞を受賞したスヴァンテ・ペーボ先生の業績を紹介したこの書と出会ったのはもちろん昨年、ノーベル賞を受賞された時のことである。ネアンデルタール人が現生人類と交配していたというペーボ先生の発見についてはニュース等で知ってはいたものの、それがどういったものかは詳しくは知っていなかった。
興味深いし、ノーベル賞受賞で話題だからと購入。当然のように一年ほど積読化で熟成させる。
今年もノーベル賞の季節が来たので『ヤバイ、時事性がなくなる』と慌てて本を開くも読了したのは11月に入ってからだった。
この作品はペーボ先生がいかにDNA研究に至りネアンデルタール人が現生人類と混血していたことを突き止めるまでの物語を、ペーボ先生のユーモアにあふれる軽妙な語り口でつづったものである。
エジプト学に憧れるも、退屈な学問だと気付き方向転換して医学の道に入り、DNA研究にいたる。
研究に関して詳細が解説されている訳ではないが、とにかく古代のDNA研究は現代のDNAの混入だらけだと書き綴られている。全ての苦労はこの混入する様々なDNAの中から対象のDNAを選別することだと終始していた。
ミイラのDNAの複製、誤り。マンモスなどの古生物のmtDNA。様々な研究を重ね、ネアンデルタール人のmtDNAの解読に成功し多地域進化説と単一起源説の論争に決着を付けたかと思いきや、核DNAの解読でネアンデルタール人と現生人類の混血の証拠を突き止め、改めて多地域進化的要素を発見する。
30年にわたる研究とともにペーボの人生が語られるが、まあまあ先進的で、バイセクシャルでNTR(ネトラレ)でNTL(ネトリ)で、自身も婚外子で疎遠の父に命を救われる。なかなかのアグレッシブである。
とにかく本書はDNAの混入と戦う痛快な物語である。
以下有料ですか、無価値な内容となってます。
前段の唯一の事実は手塚先生が僕の中のケモナーの萌芽を残したことである。