アラジンに登場するランプの魔人ジーニーの正体🌈
1992年に公開されたディズニー映画『アラジン』。2019年には実写版も公開され、今尚、高い人気を誇る作品です。
この物語の原作は、『アラジンと魔法のランプ』。
イスラム世界の説話集『千夜一夜物語』に収録されている物語です。
この千夜一夜物語、タイトルは聞いたことはあるけれど詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか?
今回は、千夜一夜物語を紐解きながら、アラジンに登場するランプの魔人『ジーニー』の正体に迫ります。
千夜一夜物語の起源は、サーサーン朝時代(226~651年)につくられた、ペルシャ・インド・ギリシャなど各国の民話を集めた書物『ハザール・アフサーナ(千の物語)』。
その後、アラビア語に翻訳され、9世紀には、千夜一夜物語の原型となる写本『アルフ・ライラ・ワ・ライラ(千一夜)』が完成します。
この写本に収録されていた物語の数は282夜で、結末はありませんでした。
そして、1704年に、ルイ14世に仕えていた東洋学者アントワーヌ・ガランが、このアラビア語の写本からフランス語に翻訳して出版したのが『アラビアン・ナイト(千夜一夜物語)』です。
その中で紹介された物語の一つに『アラジンと魔法のランプ』があります。
出版されて以降、千一夜(1001夜)の物語を集めるべく、多くのヨーロッパ人によって次々と話が追加されました。
アラジンと魔法のランプの他に、有名な物語として、『シンドバッドの冒険』『アリババと40人の盗賊』『空飛ぶ絨毯』などがあります。
追加された物語はほとんどが、アラビア語の写本には載っていないもの。アラジンと魔法のランプも、アラビア語の写本には載っていない物語です。
ジーニーの正体を語る上で欠かせないのが、アラジンと魔法のランプに登場する、魔法のランプを擦ると現れる魔神『ジン』。
ジンは、アラブの世界でこのように言われています。
「人にあらざる存在」
「人のように思考力を持つとみなされる存在」
「精霊や妖怪、魔人などの超自然的な生き物の総称」
ジンは、霊的な存在として、常に砂漠にいる精霊であると言い伝えられてきました。
アラブにも霊能者はいますが、彼らによると、
「ジンとは、風を吹かせ、砂嵐を起こし、人間と動物の両方の姿に変身できる、人を誘惑する精霊である」
これは、アラブの遊牧民の間では当たり前に知られている話だそうです。
アラブの遊牧民は、これまで長い間、ジンに親しみ、ジンに苦しめられてきました。
なぜ、精霊と呼ばれているジンが、人を苦しめる存在とされているのでしょうか?
アラブの世界では、元々精霊であったはずのジンが、砂漠地帯の苦しみから魔神に変貌したのではないかと考えられています。
「ランプに閉じ込められた=砂漠に閉じ込められた」
イスラム教のコーランでは、
「泥(土と水)から人を、灼熱(火と風)からからジンを、光から天使を造った」
とされています。
ジンは元々、イスラム教における魔神たちの総称だったんです。
ちなみに、魔神にも性別はあります。ジンは複数形の言葉で、単数形にすると、男性は『ジニー』、女性は『ジンニヤー』となります。
魔神には、五つの階層があり、全てに名前があります。
・魔霊:マリード(女性名はマリーダ)
・鬼神:イフリート(女性名はイフリータ)
・悪魔:シャイターン
・妖霊:ジン
・悪霊:ジャーン
上から順に階層の強さを表しています。
総称でもあるジンですが、階級では低級の魔神になります。
人の前に実体として現れる際、まず、渦巻く煙や雲のような気体として現れ、そこから徐々に人・蛇・ジャッカルなどの形に変わっていきます。
基本的にどんな姿になることもでき、それぞれ、性格も、信仰も異なるそうです。
このあたりは、人間に近いものを感じますね。
ジーニーのキャラクターにも強く表れているのではないでしょうか。
ジンは、このように人にあらざる存在としての歴史とともに語り継がれ、千夜一夜物語に登場し、ディズニー作品で魔人ジーニーへと姿を変え、広く世に知れ渡ることになったんです。
こういった背景を踏まえたうえで、映画を観ると、また違った見方ができるかもしれませんね😌
最後まで読んでいただきありがとうございました🌈