手のひらの歌5
暖冬である。モンシロチョウが庭で、香りの良い春の草花として親しまれている水仙と遊んでいる。ほのかな花の甘い香りは、天然香料として香水に使われている。葉はニラで、球根はタマネギと似ている。 気をつけないといけない。水仙には毒性がある。
モンシロチョウ (紋白蝶)は、鱗翅目シロチョウ科の昆虫である。世界中に分布する典型的なシロチョウで,日本全国にいる。
翅の開張は5cm前後で、春型は小さく,雄は雌より小さい。名のように前翅に黒い紋がある。
北アメリカやオセアニアなどには、ヨーロッパ人の進出や開拓などに伴って侵入して定着した。日本にも縄文時代の終りに,農耕を営む人々によって、アジア大陸から栽培植物とともにもたらされたとする説が有力である。
森林にはすまずに,明るい畑地や荒地を好み,食草も野草よりはキャベツやダイコンの葉を選好する。幼虫は、キャベツの大害虫として著名である。
さなぎで越冬して、年に少なくとも3回,好環境下では7回も発生する。アゲハチョウとともに,理科教材や実験材料としてよく利用される一方,春の季節指標の一つとして初見の記録が行われるが,最近市街地ではスジグロシロチョウが増えてきて混同されることが多くなった。
スイセン (水仙)
スイセンは、ヒガンバナ科の球根植物である。イベリア半島,地中海沿岸,北アフリカに約30種があり,多くの園芸品種が育成されている。
フサザキスイセンは、ギリシア,中国を通じて,古く日本に渡来し,野生化もしている。
球根は鱗茎で,葉は帯状または線形で2~5枚。内・外花被片は3枚ずつで,カップ状の副花冠が発達し,1本のめしべと6本のおしべがある。
花被片は白,黄。スイセン属に特徴的な副花冠は白,黄,赤,桃色。単生または散形状に数花をつける。春に開花するが,早咲きのものは11~3月で,また秋咲きの種もある。
日本に野生化しているフサザキスイセンの1変種ニホンズイセンは,中国より渡来し,室町時代の漢和辞書《下学集》に〈水仙〉の名で初めて現れる。
また,平安時代の色紙にも見られる。古く中国から海流により運ばれたとも,また人が持って来たとも考えられる。
中国では古くシルクロードをへて,唐代以前に伝わったと推定される。
記録に最も古く現れたスイセンは,今から約2000年以前のギリシア人居住者によって作られたと思われるエジプトで発見された花輪のフサザキスイセンと,古代ギリシア時代の詩に現れる紅色または紅覆輪の副花冠のクチベニスイセンである。
スイセン栽培の盛んな国は、イギリス,アイルランド,オランダ,ニュージーランド,オーストラリア,アメリカである。
鱗茎にはグルコマンナンやアルカロイドのリコリンlycorineを含有し,猛毒であるが,薬用にされることがある。
名称の由来
スイセンの属名ナルキッススは,ギリシア神話に語られる美少年ナルキッソスにちなんだものである。
オウィディウスによれば,ナルキッソスは多くの娘に言い寄られたが,それをことごとく拒絶した。そこで復讐(ふくしゆう)の女神ネメシスがナルキッソスを,水に映じた自分の姿に恋するように仕向けたため,彼は自分に見ほれて水死してしまったという。
そのあとに咲いた一輪の花がスイセンで,花をやや下に傾けている姿は,水面をのぞきこむナルキッソスの面影を伝えているという。
なお,この伝説に見えるスイセンは、白い花のクチベニスイセンだといわれ,黄色い花をつけるダフォディル(現在ではスイセン属をさす)には,別の神話があり,それによれば,ナルキッソスの花の冠を着けて眠っていたペルセフォネに,冥界の神ハデスが手を触れたため,スイセンは黄色い花に変わったという。
ちなみに,ダフォディルの名は,ギリシア神話にある死者の国に咲く不凋花(ふちようか)アスフォデロスに由来し,ゆえに古くから墓地に植えられた。
クチベニスイセンの花ことばは〈自己愛〉,ダフォディルは〈報われぬ恋〉である。