手のひらの歌3
水神への道を歩く。夜が明けて、食事前の早朝である。水神様とむきあってつぶやく。関西の勤め先を定年退職して、南九州のこの地へ、生活の場をかえた。二十年前である。それ以来の日課である。
「今日も一日、わが身と家族の、健康と安全をお守りくだい」
竹のホウキを手に、周囲をはいて清めていく。水神様は、植物にとって豊かな収穫をもたらしてくれる。人間にとっても、多産を約束してくれる。母なる神である。
自然崇拝(しぜんすうはい)とは、自然物や自然現象を対象とする崇拝である。もしくはそれらを人格化して、神格化する信仰の総称である。
「自然への崇拝」ではなく、「自然」という概念ができる以前の、崇拝形態である。自然崇拝は世界各地に見られて、また各地の神話にも、自然物や現象を擬人化して、神格化した神が登場することから、古くは普遍的であったと思われる。
万物に宿る霊魂や、精霊を崇拝対象とするアニミズムとも関係が深く、その原初的な形とも捉えられる。
しかし、自然崇拝では精霊でなく自然物や現象そのものを崇拝対象とする(自然と超自然的存在を区別しない)場合も多い。
また。しばしば特定の自然物や現象だけを尊重する点で区別される。
「トーテミズム」
未開社会において、特定の氏族、や部族が、自然現象や自然物や動植物と、超自然的関係で結ばれることをトーテムと呼ぶ。
「日本神話」
日本神話では、自然物や自然現象を擬人化、神格化して、人格神として崇拝している。日本書紀には、大山祇神などが山の神として登場する。
比叡山・松尾山の大山咋神、白山の白山比咩神など、特定の山に結びついた山の神もある。草の神である草祖草野姫(くさのおやかやのひめ。草祖は草の祖神の意味)も、日本神話において現れる。
「マナイズム(呪力崇拝)とアニミズムとの混合」
自然崇拝は非人格的な超常現象、超自然的な呪力を崇拝するマナイズム(呪力崇拝)、動植物やその他の事物に人格的な霊魂が宿るとするアニミズムと重複、混交するのが一般的である。
「対象」
対象としては、天空、大地、山、海、太陽、月、星(星辰崇拝)、雷、雨、風などの気象、樹木、森林 (神奈備)、動物(特に熊、狼などの猛獣)、水、火、岩石などが代表的である。
これらのうち、共通の属性を持つ複数のものを、一体として神格化する崇拝(例えば天空と雷など)もある。
神道では、巨木、巨石(磐座)、山などを御神体とする神社も多く、これらへの自然崇拝を色濃く残している。
ユーラシアの多くの牧畜民族では、天空(テングリ)崇拝が重視され、シャーマニズムとも結び付いている。また、中国の「天」観念との関係も指摘される。
太陽崇拝が多くの民族で重視される一方で、月崇拝を重視する民族もある。火は、人工物としての側面も強く、いろいろな宗教の儀式に取り入れられている。巨石崇拝も、人工物(巨石記念物)への崇拝に転化しうる。