月を探す、3【feat.中上級②】
【前回の反省から修正をかけたこと】
・無駄に声を上げず、精神的に安定した状態で動いたこと
・「遅い」「下手クソ」ではなく「もっと早く」「(相手が)うま」で切り替えを早めたこと
・バックハンド、重心を下げずに打ったこと
・バックハンドスライスで引き込み、打点の調整を行ったこと
・前回に比べ、半面でのやりとりは相手のポジション、打ち方を見ながら配球したこと
・サーブ、ポイントを絞ったものに焦点を当られている内は安定したこと
【今回の反省】
・重心を下げない、戦う意識から前のめりになって、そこから力みに繋がった。その分ゲームでは視野が制限されて、ただ打つだけの一辺倒なテンポになってしまった。
・早いボレーに対する練習ばかりしてきたため、トップスピンの速さに合わせるのに時間がかかった。一球ミスした段階ですぐ修正に移れなかった。
・ゲーム間が異常に短いために切り替えが追いつかず、ミスの修正が間に合わずリスタートして、自分のペースが掴めなかった。全体的に流されている感が強かった。
・何より最初の30分で4/5削られるのは全体通して痛い。中上級は試合に出る人が集まるクラスで、だから一日4、5ゲームやることを想定している。技術に加えて基礎体力必須。
【収穫】
・根に怒りを持つことで適度な緊張感によるパフォーマンス向上が見込める。場合によっては一時的に排他する。味方ありきでもテニスは基本個人技。何より成果を重視すること。以後、他の何を奪われても生殺与奪の権利だけは奪われないこと。そのためにターゲットを絞ることも視野に入れる。
今回ボレストでななコがストロークをやることはなかった。そこには前回私が不注意からボディにボールを食らったことが影響している可能性がある。だとしたら鬼を始め、ななコとこそ打ちに来た人種に正面から申し訳ない。
ななコは私のリターンの時、本来の前衛のポジションではなく、ベースラインまで下がった。強力な前衛を相手にした時、味方のリターンが高い確率で前衛にかかると思った時、「それ」は発動する。状況に応じて皆が皆柔軟に動いた。全てはどんな状況でも勝つため。
〈いい。打ってこう〉
ななコが口にしたそれは、いつか私自身がひここに向けて言ったもの。強気なプレーは味方を鼓舞する。それは何より自分自身がテニスを楽しむため。
デュースからの一本勝負。ななコはリターンを迷わず「(私のいる)アドサイド」と言った。私に発言権はなかった。押し付けられたんじゃない。私には仕留める力がないから、後ろしか請け負うことができなかったに過ぎない。
完膚なきまでに叩きのめされて、けれどやけに心は静か。
ギリギリの競った戦いなら悔しがることはできても、こうも力量差があると、そんな感情さえ起こらない。
先に書いた通り、前回の方がまだ冷静だった。身体の健康は心の健康に直結するとかどうとか。前回を5点とすると3点と言ったところか。及第点は7。チャンスは残り一回。
ブロックボレーと緩急。ななコは全体に対して分母のでかい課題を提示すると、さらっと今日のコマを終えた。分母のでかい課題は、けれど私以外全員きちんとクリアしていて、私自身、周りに比べてよくアドバイスを受ける方だと思うが、こうして底辺をならす形で受けるのは初めてだった。
遠いな。
夜空を見上げる。
仰げば尊しって言葉が浮かんだけど、聞いたことあるだけでどんな意味かは知らない。どうでもいい。
コートを離れることでやっと戻ってくる感覚たち。
自分の中にあるものでさえ、こんなにも簡単に奪われてしまうものなんだと知る。
恐怖と、屈辱と、怒り。
義務でもないのに背負うもの。誰も強制なんてしない。望みもしない。
だからこそ、全て自分の思い一つ。
唇を噛み締める。
天を仰ぐ。喉の奥が熱い。
それでも私は、月を探さずにはいられない。