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いざ、尋常に【後編】



 そこで導入したのが分析ツールアナリティクス。教えてくれるのは来訪人数、ページビュー数、加えてイベント発生数、率、平均滞在時間などなど。例えるならお店にお客さんが来て、商品を手に取ってみて、ふーんって帰るまでの動向が、よりリアルに分かるようになった感じ。今までは自分で店内うろついててもお客さんとしてカウントされてたけど、それもちゃんと弾いてくれる。

 あと個人的に怖くもあったのが、直近30分以内の来訪者のGPSを拾えるところ。例えば今日12時半くらいに見てみたら、丁度お昼休みだったんでしょうね、昨日投稿した記事から読み始めて、反応して帰ってくれた人が京都と東京に一人ずつ。
 ここ1週間ほど毎日決まった時間に投稿しているのだが、このサイトで個人を検索にかけることが困難なため、その人達が自ら読みに「来て」くれていることがはっきりと分かる(一度でも反応をつけると履歴から追える)そもそもここで出会うこと自体、新着タイムラインが流れてしまうまでだから、たぶん新着5分以内くらいじゃないと無理。


 そんな『ポケモンGO!』案件だが、だからこそここからの動き方が重要になる訳で、最初「初めまして、私はこんな人間です」と何も考えず『スペードの3』感想文を転写したのだが、新しい機能を導入したこと自体に満足してしまっていた私に言ったKPの一言がこれだ。


「は? いちまん字? 誰が読むの?」


 言いながらブラウザバックの仕草をするのは確かに最もだ。加えて悪いのはウキウキがままうっかり口を滑らせてしまった自分だ。分析を生業とする男は「まずは読者数を増やす」というミッションに対して「A4一枚」と口にした。
 私自身400字小説というやつを覗いてみて面白いと思った。なるほどと思った。これならフォローして毎日見たいと思った。(実際最近フォローしてる。興味があればどうぞ)

 けれどA4用紙一枚。最大800字。言われた時、出来の悪い答案用紙を返却されたような気分になった。


 それから一人でも多くの人に読んでもらうために、過去にこちらに投稿した記事1000字容量のものを上げ続けているのだが(ん? 前提1000字だったっけ?)一方で引っかかっていることがある。
「そこ」では一人何度でも反応できるようになっており、感情の揺れ幅を数で表現することができる。例えるなら拍手。一記事に対して、一度に限らず何度も押してくれる人もいる。
「いちまん字?」と言われた『スペードの3』感想文。パラパラと反応がつく中、一つの記事に6つの反応を残していった人がいた。1000字の記事一つには、3人が2つづつ反応を残している。

 あくまでミッションは「まずは読者数を増やすこと」

 初回、6つの反応を残したその人は、1000字の作品にたびたび3つの反応を残していく。都合よく解釈すれば「物足りないけどこれで我慢してる」可能性。
 じゃあ私がミッションを達成したと自分で思えるようになるまで、その人は変わらずここに来ているだろうかと思った時、王道を外れる言い訳ができた気がした。


「正しくないこと」感情に従って許されるのは子供の特権。


 1000字ならきっと母数は増える。けれどそれは誰にでも書ける。
 勿論少ない文字数に伝えたいことをおさめることが難しいのは分かる。興味を持たせてあえて引く初めてのデートみたいな、始めから語りに入るような重い女よりそっちの方が遥かにいいのも分かってる。一方で、10,000字だって必ずしもできないことではなく、ただ誰もやらないだけのことだとしても、
 役割分担「正しい」と「正しくない」、「大人」と「子供」。繰り返す。

 私は、旦那との関係を「共に仕事をするか共に生活するか」悩む程度には仕事に重きを置いていた。我はある。意地もある。当然プライドも。
 奮い立つ火。中でゴロリと動いたもの。




 勝負だ。




 2週間畑を耕した後、800字と10,000字、同作品で両方出した時、どちらがより評価を受けるか。基準は数。一人が何度反応しようと、総数で比較する。勿論記事はこちらにも投稿する。
 800字が勝れば男の勝ち。10,000字が勝れば私の勝ち。
 一体何年越しになるだろう。再び勝手に勝負を始める。

 これからこの世界とどう折り合いをつけていくか。
 KPにとってどうでもいいことでも、私にとっては大きな問題なのだ。

 


 いざ、尋常に。

 





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