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【ネコ乱】写真描写課題

2024/12/12
菅浩江のネコ乱入〜創作講座と雑学などなど
『写真課題講評〜言葉のイメージ戦略〜』
提出したものと、講評後、指摘を加味し、修正したバージョンをアップします。
 雪山ででかい雪男?氷男?の怪物と出会った!さてどうする!?

注意点
・突然の神視点
 →「浅黒い彼等は明らかに雪慣れしているとは思えない軽装備で、遭難したのは明らかだった」
・くどい表現
 →「牙がてらてらと唾液で光っていた。爪は長々と尖っており、血飛沫が滴って見えた。」
・謎のねじくれた描写
 →「振りかぶった筋繊維が発達した長い腕が雪塊を破壊した。」
この辺りを注意して書き直しました!

1.提出バージョン

 深々と雪が鳴くような静けさに、地を踏む重い音が響いた。木々が軋む。驚いた鶴が鈍色の空を裂くように飛んでいく。
 ふたりは咄嗟に岩場に隠れた。雪片が目の中に入って、彼女は一瞬目を瞑った。目を開いた時には、僅か数メートル先に山小屋ほどの大きさの生き物がいた。悲鳴を上げそうになる彼女の口を彼は右手で塞いだ。浅黒い彼等は明らかに雪慣れしているとは思えない軽装備で、遭難したのは明らかだった。ふたりは漏れ出る白い吐息を押し殺した。
 男鹿のような太い角、細かい氷柱を身体中に生やしたような生き物だった。白目が黒く、牙がてらてらと唾液で光っていた。爪は長々と尖っており、血飛沫が滴って見えた。  彼女は寒さと怯えでぶるぶると震えている。
 雪山から出てきた巨大な生き物が何者なのかふたりは知らない。ただ、目の前の生き物が友好的とは思えなかった。歩くたびに枝から雪の塊が落ちる。雪兎が数匹、雪原を転げながら走り去った。低い呻き声がふたりにどんどん近づいてくる。風を薙ぐ音。振りかぶった筋繊維が発達した長い腕が雪塊を破壊した。飛び散った固い雪が彼女の頬を掠める。彼女の呼吸が乱れた。興奮したように頬が紅潮する。彼ははくはくと口を開く彼女の肩を掴んだ。
「よく見ろ。あいつ、多分目が見えてないぞ」 
 彼は顎で示した。彼女は生き物を睨むように見詰めた。確かに動きが緩慢で、何かを探し回っている割に何も無い虚を切り裂くような動きをしている。彼女はこれなら何とかなるかも、と赤くなった鼻を擦った。

修正前

2.講評後修正バージョン

 雪山の静けさに、地を踏む重い音が響いた。木々が軋む。驚いた鶴が鈍色の空を裂くように飛んでいった。
 ふたりは咄嗟に岩場に隠れた。ちらちらと降る雪片が目の中に入って、女の方は一瞬目を瞑る。
「ひっ!」
 目を開いた時には、わずか数メートル先に山小屋ほどの大きさの生き物がいた。悲鳴を上げそうになる彼女の口を男の方が右手で塞いだ。しぃ、と静かにするよう片手で示す。彼は黒い薄いジャケットしか着ておらず、寒さで震えている。ふたりは漏れ出る白い吐息を押し殺した。
 細かい氷柱を身体中に生やしたような生き物だった。男鹿のような太い角、巨木のような胴。目全体が黒く、瞳孔が爛々と黄色に光っており、大きくあけた口に生える牙がてらてらと光っていた。足は短いが腕が異様に長かった、ら爪は尖っており、血飛沫が滴っていた。
 彼女は寒さだけではなく怯えもあいまってぶるぶると全身わ震わせた。
 雪山から出てきた巨大な生き物が何者なのかふたりは知らない。ただ、友好的とは思えなかった。
 木々をかき分けて生き物は歩きまわる。足音が響く。歩くたびに枝から雪の塊が落ちた。雪兎が数匹、雪原を転げながら走り去る。低い呻き声がふたりにどんどん近づいてきた。
 風を薙ぐ音。
 筋繊維が発達した長い長い腕が枝を薙ぎ払う。衝撃で雪塊が破裂した。飛び散った固い雪が彼女の頬を掠める。彼女の呼吸が乱れ、興奮したように頬が紅潮する。だが、男の方は、彼女の肩を掴み落ち着かせた。
「よく見ろ。あいつ、多分目が見えてないぞ」
 彼は顎で示す。彼の真っ直ぐな目に見詰められ、束の間、彼女は落ち着きを取り戻した。改めて生き物を睨むように見詰める。言われてみれば、確かに動きが緩慢だ。何かを探すように虚空を切り裂くような動きを繰り返しているようにも見えた。
 生唾を飲み込む。
 これなら倒すにしても、やり過ごすにしても、何とかなるかもしれない! 
 彼女は赤くなった鼻を擦った。

以上

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