榛名山のはるなさん 第12話
第12話 はやまるとローレル
「すいませんでしたああぁぁぁぁっっ!!!」
女子3人の前での男2人の本気の土下座はなかなか異様な光景だった。
2人の行動は早かった。
車を降りた瞬間、BRZを見つけるとすぐさま近くに車に走って近づく2人は女子から見れば恐怖の対象でしかなかった。
はるなはその後もBRZで走るのが楽しくなりほぼ全力で車坂峠を攻めていた。
後方を見る事も忘れていた。到着してからバトル中だったのを思い出すぐらいだったのは内緒の話。
シズカもだんだんとこの非常識な現実に慣れてしまったのと、卓球で鍛えた持ち前の動体視力で
自分のとんでもないスピードで後方に流れる視界の中、道にある段差(ギャップ)や落ちているゴミなどを避けるようにはるなに伝えていた。
さすがのはるなもこの短時間で自分を取り巻く環境に順応してしまうシズカには舌を巻いた。
「まさか、あのはるなさんだとは知らずにすみませんでした!友達にも本当すみません!!」
「サツキ、どーする?写真撮る?」
はるなはサツキの方を向く。
「ややや、もう良いってばー!BRちゃんと私達に謝ってくれただけで私は充分だよ。」
「まぁ、サツキがそう言うならいっか。という事で気を付けましょ2人とも。他にも峠に来るのを楽しみにしている人達だっていっぱいいるんだし、ああいうのはもうダメ。マナーを守ってみんなで楽しく走りましょ。」
「うううう、、なんて優しいんだ、、、ありがとうございますぅぅぅぅぅ!!!!」
「じゃ、一件落着って事で!!いやーすごい体験だったわ!はるなアンタすごいね!」
「本当だよ!なんではるなこんなに速いの!?しかも私のBRちゃん乗るの初めてなのに!凄いよ!」
シズカとサツキが一気にはるなに詰め寄る。
「や、別に凄くないから、、、BRZだってぶつけないように、かなり安全マージンとって走ってたし。」
「それでも凄いよ!ドリフトとかってなんかテレビの世界の話だと思ってたもん!てか、、、何ではるなこの2人に名前知られてるの?」
「え!?お2人共はるなさんが有名なの知らないんですか!?」
「ちょ!!ダメダメ!しー!!」
「良いじゃないですかぁ〜、ここまでSNSで車と顔バレしてたら嫌でもそのうち気付きますよ!はるなさんは群馬エリアに彗星の如く現れたんですよ!!そしたら雑誌にもしょっちゅう取り上げられる超有名なサンライズ榛名っていうチームのナンバー1.2に、下りで一気に勝利をもぎ取って今や榛名山最速ですよ!しかもたった2日間で!ネットじゃ漆黒の女神とかシューティングスターとか、、」
「うわあああアーー!!!やめてやめて!!本当やめて!!」
「マジで!?はるなアンタってSNSでそんなに有名なの!?てか、呼ばれ方、、ぷぷぷ。」
「ぷぷぷ、漆黒の女神www死ねるwwwきゃははははは!!!」
「もー何なの!男子って本当すぐ変な名前を人につけるから、、大っ嫌い!!」
「はるなさん!是非とも俺達と一緒に写真撮って欲しいっす!SNSにアップしても良いですか!?」
「やだ!やだやだ!!絶対やだ!」
「そ、そんなぁ、、」
「そーいえば、お2人に勝っちゃったって事は、、、はるな今度は高峰ブラックザバス?だっけ?ともバトルになっちゃうの?」
「いやー、どうかなぁ、、私のギャラン今入院中だし、、まだ今後の予定とかは考えてないかなぁ。」
「てか、ごめん、話変わるんだけどみんなそろそろ帰らない?アタシ、緊張したのもあったせいか、眠気が、、ふわあぁ〜、、」
シズカは緊張の糸が切れたせいもあり、既にフラフラであった。そして何も言わずBRZの後部座席に行くとあっという間に寝てしまった。
「はるな、そろそろ帰ろう。シズカ今日も部活の朝練あったし、明日も朝練も夕方もあるし。」
「あちゃ、遅くまで付き合わせちゃって悪い事したなぁ、、、。今からシズカを家まで送ったりしてると大分遅くなっちゃうなぁ。」
「うーん、今日は2人共あたしの家に泊まりなよ。学校までも私の家からなら近いしシズカもゆっくり眠れるよ。着替えは新品いつも用意してあるし、あたしの貸してあげるよ。」
「流石はお嬢様、、、そりゃお父さんスポーツカー買う時心配するよねぇ。」
「あ、今日の事はダディには内緒だよ!」
サツキが自分の口の前に人差し指を立てる。
「それじゃあ、帰ろっか。あ、えーとヒロシさんとトオルさんだっけ?今日の事は内緒で!じゃないとサツキのBRZが狙われちゃうから。ヘタに走り屋系の車にバトル挑まれても大変だし。」
「え!?じゃあ、、、2人っきりのナイショってやつですか!?」
ヒロシとトオルが前のめりに食いついてくる。
「いや、全然2人きりじゃないし、、それにその食いつきは何?キモいよ、、、」
「うおおぉ、、、あの漆黒のギャランのはるなさんとのナイショ、、くぅー!!!たまらねえ!!」
「ちょっと、、本当やめてその呼び方、、」
「じゃあ何て呼べば言いんすか??」
「え?ふつーに、、」
「榛名山のはるなさん!なんてどう?」
サツキが突然話に入ってきて提案する。
「おおっ!!榛名山最速のはるなさんにはぴったりの呼び名じゃないですか!!」
「はあぁーっ!?やだー!ただのオヤジギャグじゃん!!普通にはるなで良いよ!」
「まあまあ。」
なぜかサツキ、ヒロシ、トオルの三人がニヤニヤしながらはるなをなだめる。
「やだあああああぁぁぁぁぁーーーーーっっっ!!!」
はるなの全力の絶叫が夜の高峰に響き渡った。
そして週末の土曜。
はるなはルンルン気分で軽井沢にあるはやまるのスクラップ屋のバイト先に電車で向かっていた。
気分が良いのははやまるからのメールだった。前回の涼音とのバトル中攻め込みすぎたせいでギャランの片方のライトが割れていたのだ。パーツが届いてるとの知らせがあり、はるなは早く取り付けてあげたい思いでいっぱいだった。
「うー早くギャランに会いたい!よく考えてみたら動くようになるまで組み上げて走り出して1週間近くギャラン触らない期間なんて初めてだなー。」
軽井沢駅を降り、駅近くの『解体屋はやまる』にはるなは飛び込む。
「はやまるさん、おつー!パーツ見せて見せてー!!中古で綺麗なのだったー??」
「おぉ、おはよー。そこのダンボール箱に入ってるだろ?見てみなよ。」
はやまるさんはいつものカーキ色のつなぎを着て、車からパーツを取り外していた。
「おお、何この車ー?なんかカクカクしてて、、おじさんの車みたいだね」
「ひでぇ事言うなぁ、こりゃニッサンのローレルってヤツだよ。これはC32型の5代目のヤツでさ、結構人気あんだぜ?」
「ふーん、、それまた直して売るのー?」
「いや、これは修理で頼まれたんだわ。午後には直る思うからはるなに一回走り見てもらいたんだけどいい?」
「おっけー。その車、どこまで踏みこんでいいの?」
「そうだな、、7000回転までかな。高速道路と、、、峠でチェックしよう。」
「はーい、、、って、、、このギャランのライト本当に中古!?めっちゃ綺麗なんだけど!!やばい、めっちゃテンション上がる!!」
「違うよー、ほぼ新品だよー。」
「え、、、、、?」
まるで漫画のようにはるなの顔から冷や汗がでる。
「さーて借金分頑張って働こー!!」
「また私の借金膨らんじゃうじゃん!!!!はやまるさん私こき使いすぎ!!」
「ぎゃははは!まぁ、良いじゃん!はるながいるとお前狙いの客が多くて儲かるんだよwwwそれに新しいものはいいぞー。ギャラン、ピカピカたぞぉ〜。」
「た、たしかにライトピカピカのギャランは見てみたい、、ゴクリ。」
「ちょろ、、、」
「え?何?デジャヴなんだけど、、。」
「いや、さてライト取り付ける前に今日は3台部品取り車あるから、バラシ頼むわ。」
「はーい。」
はるなはガレージにある1台の車の事故車の部品取りを開始した。
壊れた車からでもまだまだ使えそうなパーツを取ってそれをオークションやお店に来るお客さんに売るためだ。
自動車はとにかくパーツが多い。
いくら自分の車を一から直したといっても、はるなはまだまだ手慣れているわけではない。
多分1台の車をバラすだけで一日が終わるだろう。
はるなとはやまるは黙々と作業を続けていた。
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