榛名山のはるなさん 第14話

第14話 メイク&バトル

軽井沢インターから入り、群馬方面へ向かう。
古い車だが、オーナーはこの車を普段からも乗っていて大切にしており、ETCなどの設備もしっかりしていた。

「ステアリング軽いですね、、もしかして入れてます?」

「うん、パワステ入ってる。オーナーさんがどうしても運転しづらそうだったからサービスで付けてあげたんだ。」

「サービス!?はやまるさん気前良すぎですよ!」

「いや、このオーナーさんはね、、、いや、この車は、元はオーナーのお父さんが乗ってた車でね。それを譲り受けて大事に乗っているんだ。この車じゃなきゃ絶対嫌だ!って聞かなくてね。お得意様だし、今後とも付き合うからプレゼントしてあげたんだ。」

「しかもこれ、、、、電気式?」

「そう、よく分かったね。丸ごと増設してみた。」

「涼音さん、この人本当にお人好しなんですよ!全く!技術はあるのにお客さんと全然コミュ二ケーション取らないから!私が凄ーく頑張ってるおかげで成り立ってるんですからね!」

「ぎゃははは!!なんか面倒だし不得意でさー!!それにしても言うねぇ〜はるな!このこの!可愛いヤツめ。」
はやまるは、後部座席の運転席と助手席の間から顔を出しているはるなの頭をものすごい勢いでクシャクシャにし始める。
「きゃああああああああ!!!本当それやめてって言ったじゃん!もおおおー!!本当サイテーオヤジ!!」

涼音が運転しながら2人をチラ見する。
「いいなぁ~、、、私もそれやられたいなぁ~、、、」

「「え?」」
あまりにも突然のお願いにはるなとはやまるが固まる。

「い、いや涼音さんは芸能人だしさ!女の私から見ても羨ましいくらい髪もサラサラで綺麗だからダメだよ!てかこんなオヤジが涼音さんに触ったらセクハラだから!!」

「そ、そうそう!」

「何でですか!私だってもっとはやまる、、じゃなくて2人と仲良くなりたいもん!!それに芸能人関係ないもん!グシャグシャやってほしいもん!」

何故か本気で涙目になっている涼音。
「あれ、、この人こんなキャラだっけ、、、?」

「わわ、分かった!涼音ちゃんもはるなとバトった仲だしみんな仲間だ!クシャクシャしてあげよう!」

「本当ですか!?あ!丁度サービスエリアだ!寄りますね!」

「えぇ〜、、、そこまでやられたいんだ、、、」

サービスエリアに素速く駐車し頭を左横に傾ける涼音。

「早く早く!はやまるさん!クシャクシャーっと!さぁ!」

「えぇ〜、こんな楽しみにされるとやりづらいなぁ、、、じゃあ。」
はやまるは遠慮がちに頭を涼音の頭をクシャクシャに、、というより撫でるように触る。

「きゃああああ!!!無理無理むりー!!!恥ずいっ!恥ずすぎる!!」

「涼音さんって、、こんなに可愛くて、運転は天才入ってるのに、、実は頭悪いのかな、、」

はるなはドン引きしていた。車のちょっとした状態すら直感で掴むが、人の気持ちにははやまると同じくらい鈍感なはるなであった。
その後も走り続けていく中で、このローレルはものすごく乗りやすく作り込まれていることに気が付いた。走りだけのカリカリのチューニングではなく、街乗りも考えてセッティングされていた。
「どう?乗りやすい?」

「この時代の車とは思えないくらい作り込まれていますね、、エンジンはモアパワーって言うよりかなりバランス型で整えてるし、、古い足回りのシステムだけど踏ん張りも効くのにしなやか、、ブレーキもしっかりと効くし、、かなりかけてる車ですよね、これ。」

「流石は涼音ちゃん。そう、この車はね、ただの30年前の車じゃない。オーナーの人生そのものをかけてるからこそこの時代まで輝けるんだよ。だからこそその当時以上の、、いや、今現在の車と並べても遜色ないと思う。だからこそ、、」

「時間とお金を失った分、失う物も大きい、、でしょ?」

「おい、はるな。僕の美味しいとこ取らないでよ」

「私にも何か言わせてよー。」

「でもはやまるさん、得た物だってあるんじゃないですか?」
「そう。ただそれは本当に少ないと思う。自分と分かる人にしか分からないっていう世界の話だけどね。」

「さーて、それじゃ今日の目的地は東京の首都高でC1の外回り内回り頑張ろー!」

「え!?そっちまで行くの!?」

「ぎゃははは!!良いドライバー2人もいるから大丈夫じゃん?んで夜は群馬エリアの妙義山行こう!ま、ちゃんと適宜ドライバーも車もクールダウンしながら行くからさー。」

「はるなちゃーん、、はやまるさんって。」

「うん、意外と人使い荒い、、、意外とってか、もはや見たまんまかな、、、」

サービスエリアにこまめに寄りつつ3人は首都高を走って車の動きなどをチェックしていた。そんなに高速巡航していないとはいえ、エンジンは元気そのものだった。夜になり妙義山に着き車のクールダウンをした頃には丁度、走り屋達がいる時間になっていた。

「ふー、何か久々に首都高乗ったけど峠とは違った楽しさがあるね!」
涼音が炭酸ジュースをストローで飲むという何だかよく分からない飲み方をしていた。

「私はほとんど首都高乗ったことなかったから怖かったなぁ、、合流の仕方とかコーナーの作りが本当凄すぎ、、走りやすく整えた道じゃなくて、東京の地形に合わせた道の凄さを知ったよ、、、てか、涼音さん何でストローで飲むの?」

「え?あぁ、これ癖なんだ。テレビとかモデルの仕事してると、ペットボトルにそのまま口つけてリップ落ちるの嫌だからさ。」

「芸能人ってやっぱ大変なんだね、、、」

「てか、はるなちゃんだって可愛いんだからモデルとかどう?はるなちゃんと一緒に仕事出来たら楽しそうだなぁ。」

「いや、私の顔じゃメイクでも誤魔化しきれんわwww」

「いやいやいや!!はるなちゃん言いすぎ!!はるなちゃんウチの事務所に本当紹介したいぐらいだもん。」

「いや〜、、そこまで褒めてくれるのは嬉しいけど、、私は華やかな世界の中で、人前でなんかやるキャラじゃないんですよね、、それに今は車の、、ううん、、、ギャランと自分で走り続けていたいんだ。私のやってることなんて狭い世界だし、、きっと誰にも認められないけれど、好きなものって理屈で割り切れなくて。」

「そっか、、、、でも、何となく分かってた。だからはるなちゃんは速いんだね。」

女子同士で会話をしてる間、はやまるはずっと外でボンネットを開けエンジンをいじっていた。普通エンジンを止めたばかりのエンジンルームなど熱いし、火傷などの危険もある。普通は整備しないが、はやまるは違った。

気になった箇所は気になった瞬間に整備する。

それがはやまるの信念だ。

モアアアアァァァァァァァァ!!!
妙義山の下から猛スピードで上がってくる1台の車。ヒルクライムだというのにとてつもないスピードで上がってくるライトが見える。そして独特なマフラーからのエキゾースト。

「これは、、、ロータリーサウンドだね。音からしてかなりアクセル踏んでる時間も長い、、速いね。」

はるな達が休んでいる自販機の近くに停めようとする1台の黒いRX-7、型はFD。
リアウイングが取り払われたそこには、ド派手な黒いGTウイングが付いている。
見る人間が見れば分かるだろう。ただ見た目だけチューンされたRX-7ではない事を。
運転席と助手席が同時に開く。降りてきたのは、、、

「くううううううううぅぅぅぅぅぅぅうつつつつっっっ!!!!やっぱりタムラ氏のアクセルワークには舌鼓を打ってしまうでござるうううううううううう!!!!」

「ぎゃああああああああん!!!!ナイトウ氏ぃ〜それをいうなら『舌を巻く』でござろう!?」
「のおおおおお!!そうでござった拙者とした事が何たる不覚!!むむ、ここは2人でマックスコーヒーブレイクタイムと洒落込もうぞ!!!!っとむむう!!何と何とこれは綺麗な立ち姿のローレル!!しかもC32型!!!タムラ氏歴戦の勇者でござるなこの車は!!」

はやまるがエンジンルームから2人に顔を向けると嬉しそうな笑顔で2人に話しかける。
「あらら、お2人さんこんばんは〜。このローレルの良さ分かります?嬉しいなぁ。」

「ふふふ、ナイトウ氏!!!戦士たるもの多くを口で語るべからず!!真の実力とは、、コブシとコブシをぶつけ合ってこそであろう!!よって、我がRX-7とローレルの一騎打ちを相手方に申し込もうぞ!!!」

「「ううううううぅぅぅぅ、高まるでござるぞおおおおおおおお!!!」」

2人の声が妙義山に響く、、、

「やばい、、、来るんじゃなかった。」
はるなは後部座席に隠れながら3人のやりとりを見て、大きなため息をつく。妙義山に来たことを早くも後悔し始めていた。


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